お金で幸せが買える?

2016/06/08 19:59 に Saki Nakamura が投稿   [ 2016/06/09 7:32 に更新しました ]
今年4月,世界で最も貧しい大統領と呼ばれるウルグアイの前大統領のホセ・ムヒカ氏の来日が話題になりました(参考ページリンク)。「本当の貧しさは,たくさん欲しがる人のことだ。」「幸せは物を買うことではない。幸せは人間のように命のあるものからしかもらえないんだ。」という数々のムヒカ氏の言葉は多くの人に感銘を与えました。今回はお金と幸せの関係について調べた論文のいくつかを紹介します。



貧しい国では豊かさと幸せは関連するが,豊かな国ではその関連が小さくなる
Diener & Biswas-Diener (2002) では,国家の豊かさと主観的幸福感の関連についてまとめてあります。これによると,全体でみると国家の豊かさと主観的幸福感の間には小さな正の相関があると言います。ただし,豊かさと主観的幸福感の関連性は,貧しい国になると大きくなるといいます。さらに,この論文では日本を例にして,GDPの成長率と主観的幸福感の推移も見ています。Diener & Biswas-Diener (2002) のFigure 2は,1958年から1987年にかけて,日本のGDPは著しく増加しているものの,人生満足度は横ばいであることを示しています。これらのことから,お金は基本的な欲求を満たすという点においては幸福感をもたらすのではないかと,結論付けています。


お金持ちは人生に満足しているものの,幸せを感じていない
Diener & Biswas-Diener (2002) では,お金と主観的幸福感との関連を見ていたが,Kahneman & Deaton (2010) では,幸福の種類を感情的well-beingと人生評価の2つ側面に分類して,1000名のアメリカ人を対象に調査を行いました。その結果,収入は人生評価の側面において正の関連があることが示されました。しかし,感情的well-beingは年収75,000$(約800万)以下の人しか正の関連がありませんでした(Kahneman & Deaton (2010) のFigure 1)。この結果から,著者らはお金持ちは人生満足度を買うことができても,幸せを買えないと結論付けています。


※Ladderが人生満足度の指標で,それ以外は感情的well-beingの指標として扱っている。

自分の性格と一致した物や経験であれば,お金で幸せを買える
Matz, Gladstone, & Stillwell (2016) の論文では,どういうものを買えば幸せだと感じるのかについて以下のような研究を行っています。研究1では,銀行取引のデータを使って,消費者の性格特性に合致する商品やサービスの購入と人生満足度との関連を検討しています。その結果,自分の性格と合致した商品やサービスの購入と人生満足度に正の関連がありました。研究2では,参加者に商品券をバー(外向的な人が好む)もしくは本屋(内向的な人が好む)で使わせて,その前後のポジティブ感情を回答させる実験を行いました。その結果,内向的な人は,本屋で商品券を使った場合には,バーで使った場合よりも,ポジティブ感情の上昇得点が高いことが示されました(Matz, Gladstone, & Stillwell (2016) のFigure 2)。これらの結果は,お金で幸せは買えるが,自分の性格に合った物や経験を買うことに限定されていることを示しています。

さて,これらの研究を振り返ってみて,あなたはお金で幸せを買えると思いますでしょうか?お金と幸せの関連が見出されているものの,それはある条件下でのみ再現されているように思えます。「お金で幸せが買えるのか?」という問いに対する答えは,研究においてもその決着はまだついていないようです。
(中村早希)

引用文献
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