NEWスリーパー効果 ―信頼できる源泉からの論拠の弱い説得における遅延の効果―

2017/02/08 17:42 に Saki Nakamura が投稿   [ 2017/02/08 22:29 に更新しました ]

スリーパー効果は,信頼性の低いメッセージによる説得が,時間の経過によって,説得直後よりも,好ましく受け入れられている現象のことを言います。これは,時間が経つことによって,メッセージの論拠による説得の効果とメッセージの発信源による説得の効果が切り離されることによって,メッセージの論拠そのものの説得の効果がみられるためだと説明されます。今回,紹介するAlbarracínらの2017年の研究では,信頼性の高い源泉からの弱論拠のメッセージでも,時間が経過することによって,説得直後よりも説得の効果が大きくなることを発見しました。この背景には「注意の焦点」が大きく関わっているとのことです。

Albarracínら(2017)の研究では,参加者に架空の学内の政治団体の政策を読んでもらい,その直後と45分後に,どの程度その政党へ投票するつもりかを答えさせています。参加者は信頼できる人物(政治学や法学を専門し,卒業後も政治の道に進む大学生)による論拠の弱い政策が書かれたメッセージ(例「使われなかった経費を学生組織の宴会などで活用する」)か,信頼できない人物(パートタイム学生で,あまり大学に来ていない学生)による論拠の強い政策が書かれたメッセージ(例「学業専念ための金銭的サポートを提供するように大学機関と交渉する」)のいずれかを読み,その政党への投票意図を尋ねました。その後に,注意の操作として,政党に関する質問か政策の論拠に関する質問に加え,政党もしくは政策についてどのようなことが書かれていたかを参加者に思い出させました。そして,遅延の手続きとして,45分間フィラー課題を参加者に行わせた後,再度,政党への投票意図に関する質問を行いました。

その結果,信頼できない人物における論拠の強いメッセージを受けた時だけでなく,信頼できる人物による論拠の弱い政策が書かれたメッセージを読んだ場合においても,スリーパー効果が生じていることがわかりました。Table 1の態度変容量(遅延手続きの後から政策を読んだ直後の投票意図の得点の差)に注目すると,信頼できる人物による論拠の弱い政策が書かれたメッセージを読んだ場合において,源泉(政党)に焦点が絞られていた時のほうが論拠に絞られていた時よりも,正の方向に態度変容していることがわかります。一方で,信頼できない人物による論拠の強いメッセージを読んだ場合には,論拠に焦点が絞られたときのほうが正の方向に態度が変容していることがわかります。この傾向は,題材と遅延の間隔を変えた場合でも再現されました。

この研究をまとめると,説得を受け入れるかどうかを判断する際に,源泉か論拠のいずれに注意が向いているかによって,時間が経過したときの説得の効果が異なるということです。注意が源泉に向けられているのであれば,時間がたった時に源泉の属性の好ましさの影響のみが残り,反対に注意が論拠に向けられているのであれば,論拠の強さの影響のみが残るということです。説得者の見かけに影響されないようにするためには,論拠に注意を向けるということが必要かもしれません。
(中村早希)

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