Petty & Cacioppo 特集② 関与度が中心ルートか周辺ルートの決定要因

2016/07/13 19:21 に Saki Nakamura が投稿   [ 2016/07/13 19:23 に更新しました ]
Petty & Cacioppo の特集の第2弾として,今回は1981年にJournal of Personality and Social Psychology に掲載された,Petty, Cacioppo, & Goldman (1981) の態度変容プロセスには中心ルートと周辺ルートの2つがあることを示した論文について紹介します。この論文は,特に自己との関与度が2つのルートの決定要因になることを示しています。

中心ルートと周辺ルート
1981年に出版されたPetty & Cacioppo のAttitudes and persuasion: Classic and contemporary approaches という書籍では,当時から過去35年にさかのぼった態度変容プロセスに注目した研究のレビューが書かれており,説得には2つの異なるルートがあることを彼らは提案しています。1つは中心ルート ( central route ) といい,問題に関連する論拠について入念に考えた結果として態度を変容させるルートです。このルートはメッセージの論拠に対する理解力,知識,記憶力が重視されてます。

もう1つのルートは,周辺ルート ( peripheral route ) といい,態度対象が持つポジティブ,あるいはネガティブな「手がかり」によって態度を変容させるルートです。このルートは,食べ物や痛みといった一次的な手がかりや,情報源の信頼性,魅力,権力などの二次的な手がかりが付随する主張の立場との関連が重視されています。これらの手がかりは,説得の際にあれこれと問題に関連することを考えることを必要とせずに,態度を形づくり,説得内容を受け入れることを可能にしてしまいします。

中心ルートと周辺ルートをそれぞれ支持する文献は数多く見いだされています。これらの研究によると今後の有用な研究の展開として,それぞれの説得のルートの結果が異なることを証明し,支持されるルートを決定する変数を示すことだと述べています。前者については,例えば,Cialdini, Petty, & Cacioppo (1981) は,中心ルートを経た態度変容は,長期にわたって維持され,説得後の行動までを予測する一方で,周辺ルートを経た態度変容は維持されにくく,行動を予測しにくいと結論づけています。そこで,この研究では後者の,それぞれのルートがとられる状況を検討することを目的とします。


関与度の高低によってどちらのルートをたどるかが異なる?
この研究では,自身と説得的メッセージの関与度に注目し,自身との関連が強い説得的メッセージの時には,問題に関連することをあれこれ考える(中心ルートを通る)一方で,自身との関連が小さいメッセージの時には周辺的な特徴によって態度を変容させると予測し,以下のような実験手続きで検証しました。

Missouri大学の大学生144名は,無作為に2 ( 関与度:高/低 ) × 2 ( 論拠の質:強/弱 ) × 2 ( 情報源の専門性:高/低 ) の条件のうち1つに割り当てられました。参加者はヘッドフォンを装着し,卒業試験の導入を主張するテープを聞き,それからその題材に関する態度を答えました。

メッセージの関与度,情報源の専門性,論拠の質は以下のように操作されました。
関与度の操作:関与度が高い条件では卒業試験が来年に実施される(参加者もその変更の影響を受ける)という設定で,低い条件では10年以内に実施される(参加者はその影響を受けない)という設定でした。
情報源の専門性の操作:専門性が高い条件では,プリンストン大学の教育学の教授が議長をした,より高い水準の教育におけるカーネーギー委員会による報告書だと参加者は知らされ,専門性が低い条件では地元の高校の授業によって提案された報告書だと参加者は知らされました。
論拠の質の操作:論拠の質が強い条件では,試験の導入を支持する証拠(たとえば,統計やデータなど)が含まれたメッセージが提示され,論拠の質が弱い条件では,引用符や個人的な意見,その意見を支持する例を多用したメッセージ(たとえば「私の友達はこれに同意しています」など)を提示しました。

その結果がFigure 1です。関与度が高い時には,論拠の質が強いほうが説得に対して好ましい態度を表明していました。一方で,関与度が低い時には,情報源の専門性が高いときのほうが,説得に対して好ましい態度を表明していました。この結果は,関与度が高い時には論拠の質に基づいて態度変容(中心ルート)がなされ,一方で関与度が低い時には情報源の専門性といった,周辺的な手がかりに基づいて態度が変容される(周辺ルート)という予測を支持する結果でした。
 
※態度得点は標準化されたものです。

なぜ自分との関与が説得の2つのルートを決定づけるのか?
この研究の結果は,関与度が中心ルートと周辺ルートのいずれの経路をたどるのか決定づけるということを示しています。では,なぜそうなるのでしょうか?著者らは,考察で2つの理由を挙げています。1つは,自己に関連した問題のほうが,より筋の通っていて,間違いのない意見を形成しようとする動機が強いからだという説明です。もう1つは,自分に関することのほうがスキーマやフレームワークがより活性され,説得の論拠について判断がしやすくなっているからだ,という説明です。今後の展望として,説得の2つのルートの決定づけるものとして,関与度以外の要因を明らかにすることを挙げています。ここから研究が展開されていき,2つのルートを決定づけるものとして「精査可能性」という考えがでてきたのかもしれないですね。

【引用文献】
(中村早希)
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