Petty & Cacioppo 特集④ 論拠の“質”と“数”は区別しよう

2016/07/27 19:09 に Saki Nakamura が投稿   [ 2016/07/27 22:10 に更新しました ]
Petty & Cacioppo の特集の第4弾です。第3弾はこちらに載せています。

今回は1984年にJournal of Personality and Social Psychologyに掲載された,Petty, & Cacioppo (1984) について紹介します。これまでの特集でも論拠の操作を行っていたと思いますが,論拠の数を操作してしまうと,これが周辺的手がかりとして受け取られる可能性があるということを示しています。

論拠の数が多いと説得力がある?
これまでの社会心理学の知見によると,メッセージ中の論拠の数が多いことが説得の効果を高めると言われています。なぜなら,メッセージについてあれこれ考える材料が増えるからです。つまり,問題に関連した適切な論拠は,問題に関連する好ましい思考を増やし,その結果,説得の効果が高まるということです。

しかし,著者らは説得メッセージについてあれこれ考えていない場合でも,論拠の数の多さが説得の効果を持つことを提案しています。つまり,メッセージについて考える動機づけが低い場合には,「数が多いほうが正しい」という単純かつ理にかなった意思決定の法則に従い,論拠を精査することなしに態度変容が引き起こされるかもしれないということです。

この研究の目的は,メッセージ中の論拠の数の説得の効果が,問題に関連した思考によるものと,単純な手がかりとして受け取られることの2つがあることの実験的証拠を提供することです。ここでは,Petty & Cacioppo (1981) の説得における中心ルートと周辺ルートによって説明を試みます(中心ルート・周辺ルートについてはPetty & Cacioppo 特集②を参照)。もし,論拠の数による説得の効果が,説得内容についてよく考える場合(中心ルート)と,あまり考えない場合(周辺ルート)の両方で生じるのであれば,中心ルートを通る場合には「論拠の質」に基づいた態度変容がなされ,周辺ルートを通る場合には「論拠の数」に基づいた態度変容が生じると予測されます。

予備研究については説明を省略します。

方法
大学生168名は,無作為に2 ( 関与度:高/低 ) × 2 ( 論拠の質:強/弱 ) × 2 ( 論拠の数:3 / 9 ) の条件のうち1つに割り当てられ,大学の教育方針の変更(卒業試験の導入)についての説得的メッセージを読みました。メッセージの関与度は,卒業試験の導入が「来年から」or「10年後」に始まるかと教示することで操作されました。論拠の質は,予備調査の結果をもとに強いものと弱いものを選定しました。この際に,「理解するのが難しかった」などの説得力以外の項目が同程度になるようにしました。説得的メッセージを読んだ後,参加者は,卒業試験の導入について「良い―悪い」「有益な―害のある」「賢い―愚かな」「好ましい―好ましくない」について9件法で回答しました。そのあと,思考リスト課題を行いました。

結果
その結果がFigure 1です。関与度が小さい時には,論拠の質ではなく論拠の数が影響していて,関与度が大きい時には,論拠の数ではなく,論拠の質が受け手の態度変容に影響していました。さらに,この研究の主目的からは離れますが,関与度が高い条件において,論拠の数の多さは,その質が強い時には説得の効果を高めるものの,質が弱い時には,むしろ説得の効果が小さくなることが示されました(Figure 2)。以上のことから,論拠の数は周辺的手がかりとしても作用することが示され,さらに関与度が高い場合には,その質によって結果が左右されるということが明らかになりました。



【引用文献】

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