矛盾している方が説得力が大きいこともある

2016/12/21 19:17 に Saki Nakamura が投稿   [ 2016/12/21 22:15 に更新しました ]


常識的に考えると,内容に一貫性のあるメッセージのほうが矛盾したメッセージよりも説得力があると考えられます。実際に説得研究の多くが一貫性のあるメッセージのほうが説得力が大きいことを示しています。しかし,Reich and Tormala (2013) は,場合によっては,メッセージ内容に矛盾がある方が説得力が大きくなると主張しています。彼らは,メッセージが肯定的なものとみなされるか,否定的なものとみなされるかによって,矛盾効果が生じるかどうかが決まると考えました。そこで,Reich and Tormala (2013) では,メッセージが肯定的なものとみなされるかどうかを決定づけるものとして,(1)メッセージが強いこと,(2)1つの源泉からのメッセージであること,(3)源泉の信頼性が高いことの3つの要因に注目し,この時に矛盾効果が生じるかを以下の5つの実験で検討しています。

実験1
そもそも矛盾効果が存在するかを確認するために,参加者に友人から「ほくろを取らなくても大丈夫だよ」と言われた数日後に,その友人が「ほくろをとるべきだ」というシナリオを読ませ,友人のアドバイスに対する態度について尋ねました。その結果,「ほくろを取らなくても大丈夫」と言っていた友人が「ほくろをとるべきだ」といった場合のほうが,どちらか一方のみのアドバイスしか聞いていない時よりも,友人の意見に対して肯定的な態度を持っていることが明らかになりました。



実験2
矛盾効果が論拠の強いメッセージで生じるかどうかを確認するために,メッセージの一貫性の操作に加え,論拠の質の強弱を操作して実験を行いました。具体的には,新たに大学に導入されるプログラムについて,「新プロラムは良くない」と主張した友人が,その1週間後に会った時には「新プログラムは良い」と主張するというシナリオか,2回とも友人が「新プログラムは良い」と主張するシナリオを読ませ,新プログラムに対する態度を測定しました。この時,友人の主張の強弱が操作されていました。実験の結果,論拠が強いメッセージの時に矛盾効果が生じていることが明らかになりました。

実験3
源泉が1つであるときに矛盾効果が生じるかを確認するために,研究2と同じシナリオを用いて,同じ人物もしくは1回目と2回目で別の人物が主張するという操作を加えて実験を行いました。その結果,2回とも同一人物で論拠が強いメッセージの場合に,矛盾するメッセージのほうが,一貫したメッセージよりも肯定的な態度が形成されていることがわかりました。

実験4
信頼性が高い源泉の時に矛盾効果が生じるかを検討するために,説得者が信頼できる人物であるかどうかを操作したメッセージを読むという手続きを加えて,研究2・3と同様の実験を行いました。その結果,信頼できる人物の時には,論拠が強いときに矛盾効果が生じていたが,信頼できない人物の時には論拠が弱いときに矛盾効果が生じていました。

実験5
さらに,実験5では実際に矛盾するメッセージを読んで,それに応じた行動をとるかを検討しています。具体的には,「人を信じれないと思ったこと」もしくは「人を信じることができると思ったこと」を書くことによって信頼性を操作した後に,前の実験参加者が書いたと教示されたチョコレートの試食コメントを読んで,おすすめされたチョコレートを選ぶかどうかを測定しています。一貫した条件では,ターゲットのチョコレートだけを1回お勧めされ,矛盾した条件では1回目はターゲットとは別のチョコレートをお勧めされた後に,2回目でターゲットのチョコレートをお勧めされました。その結果,事前に「人を信じることができると思ったこと」を書き出した参加者は,矛盾した条件の時のほうが,ターゲットのチョコレートを選択する人が多いことが示されました。

「信頼できる人が意見を変えるというのには,よほどの理由があるだろう」ということでしょうか。
(中村早希)
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