悲観性は親子で似るけど楽観性は親子で似ない?

2017/02/15 6:50 に Megumi Tabuchi が投稿   [ 2017/02/15 6:51 に更新しました ]
制御焦点傾向以外に,行動方略が親子で似る,あるいは似ないという議論がないか…と探していたところ,「楽観性」というヒントをいただいたのでちょっと調べてみました。本日は,楽観性の発達について論じているレビュー(の,特に親子相互作用のところ)をご紹介します
(書誌情報)
Gillham, J. & Reivich, K. (2004) Cultivating Optimism in Childhood and Adolescence. The Annals of the American Academy of Political and Social Science, 591, 146-163.

楽観主義(楽観性)とは,物事に対してポジティブな結果が起こることを期待,予想する傾向を指します。希望(hope)と同じような心理的影響を持つとされる (Snyder, 2000)ので,ほぼ同義として扱われている研究も多いです。こうした「未来に対するポジティブな期待」の根底には,「自分はよい結果を導き出せる,結果をポジティブな方向にコントロールできる」という,自信や信念があります。なので,自分自身の行動が問題解決において効果的であると期待する「セルフエフィカシー」(Bandura, 1997)とも強く関連しています。(繰り返しになりますが)「セルフエフィカシー」が高い人も,楽観性が高い人も,これから起こること,未来の事象に対して,「自分でだいたいはコントロールできるだろう,基本的に問題は解決できるだろう,目標は達成できるだろう」という信念があるのです。なので,「ポジティブな結果(=利得)への接近行動」という,促進的行動の前提にある思考といえるのかもしれません。

 対して,悲観主義(悲観性)とは,将来に対してネガティブな予想や不安を抱く傾向で,抑うつ症状や情緒不安定傾向と関連が深いとされています(Hammen, Adrian, & Hiroto, 1988)。病的な悲観主義の背景には,虐待などのネガティブな幼児期のイベントがあるとされています。

では,親子の相互作用の中で,どのように楽観性あるいは悲観主義が形成されていくのでしょうか。未来に対する希望や期待の志向性には,モデリング(模倣学習)が重要な役割の一つとされてきました。例えば養育者が自分自身の未来や人生に対してネガティブな予想ばかりしていると,子どもも悲観的になると考えられてきました。しかし,こうした親子の類似性は,楽観性と悲観性では一貫した結果が得られていません。先行研究によれば,親が悲観的な思考スタイルを持っていると子どもも悲観的になるという,悲観性の側面においては親子で類似するという結果が報告されているにもかかわらず,楽観主義では親子で類似しないとされているのです(e.g. Joiner & Wagner, 1995)。これは,楽観性が親のモデリングで形成されるという考え方とは矛盾する結果です。

では子どもの楽観性の発達に親のどういう側面が関連しているのかというと,「子どもの行動」に親がどう反応するのかが関わっていると考えられています。子どもは,自分が外界に対して働きかけた行動に対して親がどう反応するか,そのフィードバックで,行動方略や思考パターンを学習していきます(これは制御焦点も同じ)。先行研究によれば,親が自分自身の人生での出来事についてあれこれ楽観的な思考スタイルを持っていても子どもにその影響は無く,親が子どもの出来事について楽観的に反応していれば子どもはより楽観的になる(Garber & Flynn, 2001),とされています。また,子どもは何の苦労も困難もなくすーっと生きていくと楽観主義的になるわけではなく,むしろ「困難を上手く解決できた」という経験によって,「問題が自分で解決できたので,次(未来)もきっとうまくいくに違いない」というコントロール感が楽観主義を促進する(Snyder, 2000)とされています。このとき,試練が「頑張れば乗り越えられるぐらいの,ちょうどいいもの」であることや,子どもに「成功した!」と思わせる親の反応が大切です。なので,悲観的な人には認知行動療法が効果的,というお話になるようです。

つまりまとめると,

・悲観主義は,親が悲観的だと子どもも悲観的になる。親子で類似する。

・楽観主義は,親子で類似するとは限らない。親が「子どもの行動」に対してポジティブに反応すれば子どもは楽観的になる。「親子の類似性」よりも,子ども自身のコーピングスキルがより重要で,幼少期の成功経験の積み重ねが,未来に対するコントロール感=楽観性の発達につながる。

…ということになります。これは,制御焦点傾向の予防的な側面は親子で類似し,促進的な側面は類似しない,という結果と共通する部分があるかもしれません。

Comments