Dark Futureを想像できるほうが長生き?

2017/03/01 7:10 に Megumi Tabuchi が投稿   [ 2017/03/01 7:12 に更新しました ]
 悲観性が親子で類似する一方、楽観性が親子で類似しない、というお話(→コチラ)を報告しましたが、それはなぜなのでしょう?様々な背景があるとは思いますが、「悪い結果を予測する、悪い結果に敏感である」ことが生存にとって重要であるため、そちらが世代間で伝達される、という理由も一つあるのではないかと思います。「悪い結果を予測しておく」ことを怠ると最悪死んでしまいますが、「良い結果を予測しておく」ことを怠っても生存には直接的には関係ないからです。では、実際、悲観的なほうが長生きするのでしょうか??今日は、「5年後の自分の状態を悲観的に考えているほうが長生きする」という研究をご紹介します。


Lang, F. R., Weiss,D., Gerstorf, D., & Wagner, G. G. (2013)は,自分の将来を予測して期待や不安を抱く能力は人間に特殊な能力であり,人生を通して環境への適応や健康変化に対応するために必要な能力だとしています。そして、自分の将来や現在の状況について楽観的でポジティブであることがよかれとされている中で,Dark Futureを予想することが必ずしも悪ではないのでは?という観点から、「5年後の生活満足度と寿命」の関連を検討しています。German Socio-Economic Panel (SOEP; N=10,000, 年齢1896)というドイツの社会経済パネル調査のデータを用いて,対象者が予想する「5年後の自分の生活満足度」と10年後の身体能力低下や寿命との関連を調べました。使用した項目は,「5年後の生活満足度」(“How do you think you will feel in 5 years?”の1項目に対して10件法(全く満足していない~とても満足)で回答)で、この得点から「現在の生活満足度」得点を差し引いた得点を分析に用いています。ちなみに「5年後の生活満足度」得点は「将来を考えたとき、どの程度楽観的でいられますか?」という楽観主義尺度得点と中程度(.40前後)の関連性なので、この得点がそのまま楽観性というわけではないようです。
 分析の結果,全般的に,若者は5年後の自分の生活満足度は今よりもよくなっていると予想した一方で,高齢者は5年後の生活満足度は今よりも低くなっているだろうと予測していました。そして,5年後の自分の生活満足度を低く見積もっている人ほど,その後10年間の身体的衰弱の危険性や死亡確率が低いという結果でした(年齢・性別・教育・経済・主観的健康を統制してもこの関連性は残りました)

つまり,加齢に伴って自分の将来についての満足度評価は低下していくのですが,さりとてそれは別に悪いことではなく,逆にちゃんと見積もれるほうが,寿命が長い,という結果で,ポジティブになったほうがいいよ!楽観的なほうがいいよ!という研究が多い中で興味深い研究です。


Lang, F. R., Weiss, D., Gerstorf, D., & Wagner, G. G. (2013). Forecasting Life Satisfaction across Adulthood: Benefits of Seeing a DarkFuture? Psychology and Aging, 28(1), 249-261.

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