「心の理論」はどう加齢変化するのか?(4)

2016/11/29 19:27 に Megumi Tabuchi が投稿   [ 2016/11/29 20:14 に更新しました ]

心の理論の加齢変化シリーズ、今回はトレーニングをすることで「心の理論」の課題成績は改善するのか、という介入研究を紹介します。


Lecce, Bottiroli,Bianco, Rosi, & Cavallini (2015)は、「65歳以上になると認知機能の低下により(少なくとも認知的な側面において)「心の理論」が低下していく、という先行研究を受けて、トレーニングによって改善するものであるのかを調べました。高齢者大学や地域の施設に通う高齢者72名を対象に、以下の3つの群に分けて介入(トレーニング)を行いました。対象者は12人ずつのチームで、4人のトレーナーがついて、週に190分間トレーニングを行いました。

 

★「心の理論」トレーニング群

 「心の理論」の有名なテストであるStrange Stories task (前回の記事でも出てきたWhite, Hill, Happe, & Frith (2009)の課題)を参考に、6つのストーリー(裏の裏をかく話や、皮肉の話)を用意。ストーリーを読ませた後、登場人物の気持ちを正確に把握できているかについての質問をし、それについてトレーナーや他の参加者とディスカッションさせる。トレーナーは正しい答えが導かれるようフィードバックを繰り返し行う。その後、「Language exercises」として、ストーリーの中で出てきた「考える」「思う」といった目に見えない行動の動詞について再学習する(同じ意味になる動詞を選択する課題)。

★物理的会話トレーニング群

Strange Stories taskcontrol storiesとして扱われているものを参考に、6つのストーリーを用意。「心の理論」トレーニング群と同様に、事実を確認してそれに関するディスカッションを繰り返す。その後、「Language exercises」。

★社会的接触群

 他2つの群と同じ時間、「健康的に老いるには」や,「サクセスフルエイジングについて」といったテーマでトレーナーと対象者でディスカッションする。


 そしてトレーニング後、「Strange Stories task10個の「心の理論」ストーリーと、4つの統制ストーリー)」、語彙テストMetarepresentational verbs task、記憶能力テストMetamemory questionnaireを行いまいた。その結果、「心の理論」トレーニング群で、Strange Stories taskの中の「心の理論」ストーリー課題・語彙テスト・記憶能力テストの成績が他の群よりも良い、という結果になりました(Figure1)

 

 似たような課題を練習すると成績があがる、というのは、たしかに確認されたようです。全体的な認知資源が少なくなり、目に見えない部分を予想するというのが困難になってくる中で、いかに他人の「心」を正確に予測できるかのトレーニングは重要かもしれません。ここでのトレーニングが日常的にどの程度効果があるかは分かりませんが、こうしたトレーニングは認知機能訓練にもなるのではないかと思います。

(文献)

Lecce, S., Bottiroli, S., Bianco, F., Rosi, A., & Cavallini, E. (2015) Training older adults on Theory of Mind (ToM): transfer onmetamemory. Archives of Gerontology and Geriatrics,  60(1), 217-26. doi: 10.1016/j.archger.2014.10.001.

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