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東アジア人とヨーロッパ系アメリカ人で視線の処理が異なる?

2017/09/10 18:29 に Risako Shirai が投稿

Cohen, A. S., Sasaki, J. Y., German, T. C., & Kim, H. S. (2017). Automatic Mechanisms for Social Attention Are Culturally Penetrable. Cognitive Science, 41(1), 242–258. https://doi.org/10.1111/cogs.12329

文化によって社会的注意のメカニズムは影響を受けるのだろうか?これまで,文化心理学や進化心理学の観点から,ある特定の文化が社会的な注意のメカニズムの仕様を変える可能性が報告されてきた。例えば,相互依存的な東アジアの文化ではより注意の焦点が広くなり,そうでない西洋文化では注意の焦点が狭くなるという。本研究では文化による違いが共同注意のメカニズムに異なる影響を与えるのかに焦点を当てた。共同注意は他者の視線移動に伴い,見ている側の注意が自動的に視線方向に誘導されることをいう。本研究はこのような他者の視線の手がかりの効果を複数−視線手がかり課題を用いて検討した。この課題では,複数の顔が背景にあるその前景に参加者が注視すべき顔刺激が呈示される。その後,参加者が注視している顔刺激の視線が移動し,同時に背景の顔刺激の視線も移動した。参加者の課題は,顔刺激の視線が移動した後,画面の左右いずれかに呈示される光点の位置に視線を向けることであった。その結果,注意の焦点を狭く顔に向けるヨーロッパ系アメリカ人は,背景の複数の顔の視線から影響を受けず,前景にいる人物の視線移動により影響を受けた。一方,東アジア人にとっては,視線の方向が背景にいる人達とマッチしているか否かが重要であり,前景と背景の人物の視線方向が不一致であると前景の人物の視線に誘導される効果が小さくなった。これらの結果は,何に注意を向けることが重要視されてきた文化であるかが社会的注意の根本にあるメカニズム形成に影響を与えてきたことを示唆している。

栄養バランスと意思決定の関連:糖分が少ない(orタンパク質多め)だと,都合のいい人になってしまう!?

2017/09/07 2:01 に Saki Nakamura が投稿   [ 2017/09/07 2:10 に更新しました ]

Strang, S., Hoeber, C., Uhl, O., Koletzko, B., Münte, T. F., Lehnert, H., … Park, S. Q. (2017). Impact of nutrition on social decision making. Proceedings of the National Academy of Sciences, 114(25), 6510–6514. https://doi.org/10.1073/pnas.1620245114

食物摂取は生命を維持するために必要で,そこで摂取された栄養は,身体を作ったり,動かしたりするために使われる。それだけではなく,食べ物から摂取した栄養は,脳が活動(社会的な意思決定といった高度な認知プロエスを含む)するためにも使われる。主要栄養素には脂質,タンパク質,炭水化物などがあるが,特に,大きな中性アミノ酸(LNAAs)は,脳の神経伝達物質の機構を調節するよう作用する。具体的には,LNAAsは血中チロシンレベルと関連してドーパミン前駆物質を調整し,炭水化物から得られる血中トリプトファンレベルはセロトニンの前駆物質に関連するようにして,脳内の神経伝達物質を調整する。しかし,社会的な意思決定との関連を見た研究は,おもに炭水化物から得られるグルコースとの関連に注目したものばかりで,それ以外の栄養素については十分に議論されていない。そこで本研究では,主要栄養素組成物(食事に含まれる「炭水化物/タンパク質の比」に注目)と社会的な意思決定との因果関連について検討する。
※最後通牒ゲームはペアでお金を分配するゲームで,1人は分配金額を決定することができ,もう1人は分配金額を決めることはできず,ただ相手の決めた金額のみを受け取ることができる。ただし,分配される側は「拒否権」を持っており,自分に分配された金額が0になるが,相手の分配金額も0にできるという権利がある。この研究では,不当な金銭の分配に対して,どれだけ拒否権を使うかを指標としてみている。

研究1
被験者にその日の朝食をリストアップさせて,1回きりの最後通牒ゲームを行った。その結果,高・炭水化物/タンパク質の食事をとった人は,低・炭水化物/タンパク質の食事の人よりも,拒否権を使う人が多かった(Fig. 1A)。

研究2
朝食を自己申告ではなく,実際に炭水化物とタンパク質の摂取量をコントロールしたものを食べさして,11:00~13:00の間に最後通牒ゲームを実施。その結果,不公平な分配を提示された時に,高・炭水化物/タンパク質の食事をとった人は,低・炭水化物/タンパク質の食事の人よりも拒否権を使う人が多く,実験1を再現する結果が得られた(Fig. 1B)。さらに,研究2では,被験者は15分おきに血液が採取され,そこで得られた,LNAAsに対する血漿のトリプトファンレベル(炭水化物由来)と血漿チロシンレベル(タンパク質由来),そしてグルコース(炭水化物由来)の量が,最後通牒ゲームにおける意思決定との関連を検討した。その結果,血漿チロシンレベルが高いほど拒否権を使う人が少なくなるという,負の相関関係がみられた。


2つの研究で一貫して,低・炭水化物/タンパク質の朝食を食べた場合には,高・炭水化物/タンパク質の朝食の場合と比較して,不公平な分配をする人に対して,自分の報酬を0にしてでも相手の報酬も0にするという拒否権を使う人が少ないことが明らかになった(悪く言えば,不公平な分配をそのまま受け入れるという,分配者にとって都合のいい人となってしまうような判断をする人が多い)。
バランスの取れた食事には,単に身体にとって必要な栄養素を得るという以上に,社会的な意思決定を調整する役割もあることを示唆する。

コメント:糖質制限しすぎるのも,不公平をそのままにしてしまうという点で,あまりよくないかもしれませんね。

やっぱり同調は起こる―パーソナリティ特性との関連から

2017/09/06 17:42 に Asako Miura が投稿

Kosloff, S., Irish, S., Perreault, L., Anderson, G., & Nottbohm, A. (2017). Assessing relationships between conformity and meta-traits in an Asch-like paradigm. Social Influence, 1-11. Ahead of Print. doi: 10.1080/15534510.2017.1371639

Aschの同調実験パラダイムを使って,よりマイルドな場面+パーソナリティのメタ特性との関連を検討.同調傾向とパーソナリティ特性の関連は古来検討されてはきたが,それぞれてんでばらばらなものとの対応が見られているだけだし,現在主流のものを使った研究はほとんどないとのこと.
測定されたパーソナリティ特性はNEO big five の Stability(安定性)とPlasticity(可塑性)で,Stability=誠実性+調和性+神経症傾向(逆),Plasticity=開放性+外向性をさす.

仮説「同調傾向は安定性とは正,可塑性とは負の関連をもつ」

手続き 同調傾向と統制欲求の関連を検討したBurger(1987)に準じる(※BurgerはMilgramの服従実験の追試をしたことでも著名)
(1)実験条件(サクラ3名+真の参加者)と(2)統制条件(真の参加者のみ)のいずれかにランダム割り当て.実験条件は実験室実験.面白くないマンガをプロジェクタで壁に投影して,まず順番にユーモア評定(1-100)を口頭でさせる(public evaluation)×10種類.参加者は当然最後.サクラの評点は平均して高くなる+適当にばらつくよう調整する.その後,もう一度同じマンガを投影して,「さっきと同じ答えにする必要はなく,もう一度よく考えて,評価して下さい」と指示して評価を筆記させる(private evaluation).統制条件はWeb調査.

結果
口頭評価(平均 66.29)も筆記評価(平均 66.05)も実験条件において統制条件(平均 32.27)よりユーモア評価が高い.つまり同調が生じている.
安定性は同調の正の関連がある.これは可塑性をコントロールしても残る.可塑性はそもそも同調と関連がなく,その傾向は安定性をコントロールしても変わらない.
安定性には条件間で有意差があり,実験条件の方が有意に高かったので,そのことが結果に影響しているかどうかを検証したが,すごく安定性の高い参加者を除外して分析をしても傾向は変わらなかったので,パーソナリティの条件間差によるアーティファクトではないと判断.
神経症傾向(逆転)が実験条件で同調と正の関連があり,統制条件ではなく,条件間で得点差があったことについても検証.これも上記と同様の方法で検証し,アーティファクトではないと判断.

コメント
publicとprivateは順序固定のようだが,もし入れ替えたら,特にprivateの方の同調傾向は弱くなるだろうか?
統制条件はWeb調査だが,実験室実験にすべきではなかったか?(著者も言及しているが,パーソナリティ特性に条件間で差があった点を調整しても大丈夫なんだからいいやろ,と言っている.そういうことではなくて,実験状況が違うことそのものが影響しないかな…)

※Social Influenceという雑誌はオープンアクセスだが投稿料がかからない(カラー印刷は有料).IFは1.0と低すぎはせず,Aims and Scopeがすこぶる広い.ちょっと注目したい.

ヒーローは右上を見つめている

2017/08/05 5:25 に Sayo Kaneuchi が投稿   [ 2017/08/07 1:05 に更新しました ]

Frimer, J.A., & Sinclair, L. (2016). Moral Heroes Look Up and to the Right. Personality and Social Psychology Bulletin, 42, 400-410.

要約
道徳的英雄(moral hero)の肖像画は、観察者から見てある程度右上方向を見つめているように描かれることが多い。なぜならイデオロギー的考えを持った支持者はそうしたイメージを自分たちのリーダーとして選び、宣伝するからだ。実験①では、道徳的英雄(例;マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)の肖像画の視線の方向は、統計的予測よりも、そして著名人(例;エルヴィス・プレスリー)の肖像画よりも右上を向いている傾向があることが明らかになった。実験②と③では、参加者にイデオロギー的に動機づけられた支持者のロールプレイをしてもらい、主張を推進するようなリーダーのイメージを選ぶよう教示した。参加者は右上を向いているバージョンを優先して選んだ。実験④では、右上を向いたポーズが何故最も英雄的に見えるのかという問いに対して、「方向」を思いやり、誇り、未来志向といった個人的美徳に結び付ける概念的メタファーが一つの解答を与えることを見出した。支持者は彼らのリーダーを道徳的英雄として描くことによって社会的目標の前進に積極的役割を果たす。

概念メタファー理論
方向にはメタファー的意味があり、肖像画の人物の性格を推測させる。西洋文化圏では、垂直および地平線の広がりがメタファーとして深く浸透している。地平線方向は非対称的で、右側が優れており、左側は劣っている。この隠喩的バイアスは「righteous(正義)」やラテン語で左を意味する「sinister(不吉な)」といった単語、さらにはrightという語そのものが含んでいる「正しい」「適切な」といった意味によって証明されている。右は未来の隠喩でもある。人は過去から未来への時間の流れを表す時に、左から右へ矢印を描く。一方、垂直方向は、uplifting(高揚させる)やtop-notch(一流の)といった単語から、高い価値を与えられていることがわかる。ただし、ただ上を向いているだけだと、傲慢、冷酷、軽蔑といった概念も喚起する。

実験①
最も一般的と思われる道徳的英雄と有名人を選定(158人のアメリカ人に聞いた。結果、最も一般的な道徳的英雄はマーティン・ルーサー・キング・ジュニア (全候補の12.9%)、マザー・テレサ (6.7%)、 ネルソン・マンデラ (6.5%)、 マハトマ・ガンジー (5.2%)、 ジョン・F・ケネディ (4.1%)だった。最も一般的な有名人はブラッド・ピット (3.8%)、マリリン・モンロー(3.6%)、 エルビス・プレスリー(3.6%)、マイケル・ジャクソン(3.0%)、チャーリー・チャップリン(1.7%)だった。
Google画像検索で出てくる最初の120枚の画像について、3人の研究者が視線と頭の向きを判定。その結果、モラルヒーローは有名人よりも明らかに右上を向いていた。

実験②
モラルヒーローは支持者がそれを選び、宣伝するために右上を向く、という仮説を検証するため、次のような実験を行った。
方法…社会運動または仕事の応募にふさわしい写真を選ばせる。
結果…社会運動にふさわしい写真として多く選ばれたのは右上を向いているものだった

実験③
実験②と同様に写真を選ばせた。ただし、今回は被写体に野球帽をかぶらせ、画像の反転処理によって非対称性をなくした。また、以下の3種類の個人特性も測定した。
・過去未来矢印選択(過去から未来への時間経過を表す場合、矢印の向きとしてふさわしいのは↑↓←→のどれだと思うか)
・利き手
・政治的イデオロギー(右左)
結果…参加者の64%が右上向きの写真を選んだ。ただし、選択した矢印の向きによって、選ぶ写真の傾向も異なっていた。利き手とイデオロギーは効果がなかった。

実験④
見ている方向が本当に人を英雄的にするのかを検証するために、実験②で用いた画像で、英雄感と印象を評定させた。
結果…右を見つめていることと上を見つめていることは独立して被写体をより道徳的英雄らしく、温かく、有能で、未来志向かつ誇り高く見せていた。また、上を向いていることは被写体をより魅力的に見せた。


※大遅刻の投稿になってしまいました、すみません(´・ω・`)スョボン

「厚切りフレンチフライのほうが望ましい」と思っている人は,そうでない人よりも厚切りフレンチフライを食べに行こうとする。

2017/08/04 2:38 に Saki Nakamura が投稿   [ 2017/08/05 8:58 に更新しました ]

DeMarree, K. G., Clark, C. J., Wheeler, S. C., Briñol, P., & Petty, R. E. (2017). On the pursuit of desired attitudes: Wanting a different attitude affects information processing and behavior. Journal of Experimental Social Psychology, 70, 129-142.

記事タイトルからは「何の研究だ…」と思われるかもしれませんが,「態度」に関する研究です。

最近の研究では,人々は,実際の態度(actual attitude)に加えて,しばしば望ましい態度(desired attitude)を持つということが言われています。タイトルの例でいえば,「厚切りフレンチフライ」という1つの態度対象に対して,自分自身が心から望む態度と,メタ的な要素を持つ望ましい態度を持っているということになります。実際の態度と望ましい態度は,しばしば一致しないこともあります。
これまでに,「実際の態度」が行動を予測することを示した知見は山のようにありますが,「望ましい態度」も行動に影響するのでしょうか?この研究では,望ましい態度が行動,情報探索,新しい情報の処理に影響するのかを検討し,そして「望ましくあるべき」という方向ににコミットしようとするかどうかの個人差が,望ましい態度と行動への影響を調整するのかを検討しました。

研究1:行動意図との関連を検討。世界的なファーストフードチェーンのマクドナルドに対する実際の態度と望ましい態度を測定し,行動意図の指標として「次月にマクドナルドにどのくらい行くつもりか」測定しました。
研究2:情報探索時におけるバイアスとの関連を検討。さまざまな態度対象(たとえば,黒人,ヒラリークリントン,など)への実際の態度と望ましい態度を測定し,それらについて書かれたポジティブな記事とネガティブな記事についてそれぞれどれだけ読みたいかを尋ね,どれだけポジティブな情報をネガティブな情報よりも収集しようとするのか,そのバイアスの程度を測定しました。
研究3:情報処理におけるバイアスとの関連を検討。死刑に対して,実際の態度と望ましい態度を測定し,情報処理のバイアスの指標として,それに関する肯定的な研究知見と否定的な研究知見の両方を読み,どの程度死刑に意味があるのかを測定しました。
研究4:行動との関連を検討。実際にコーヒーを試飲させ,それに対する実際の態度と望ましい態度を測定しました。さらに,行動指標として,どれだけミルクや砂糖を入れたか,どのくらい飲んだかを測定しました。

4つの研究を通して,望ましい態度も行動意図(研究1),情報探索(研究2),情報処理(研究3),行動(研究4)を予測することが明らかになりました。特に,研究3と4では,「望ましくあるべき」という方向にコミットしようとするかどうかという個人差を測定しており,よりそうであるべきだと回答した人ほど,望ましい態度が情報処理のバイアスや行動を予測していました。


研究3のコーヒーの消費量の結果。
High Commitmentで,望ましい態度がポジティブな場合にコーヒーの消費量が増えている。
一方で,Low Commitmentの人は,コーヒーの消費量に望ましい態度がポジティブかネガティブかが関係しない。

…ということで,実際の態度はそこまででなくても「モスやケンタみたいな厚切りタイプのフレンチフライは望ましい」というように望ましい方向にコミットメントしようとする人は,厚切りタイプのフレンチフライを食べようとする,という記事のタイトルにつながります。

表情を認識の発達変化〜表情を理解するためにはどれくらいの情報量が必要なのか?〜

2017/07/31 3:34 に 西村友佳 が投稿

Ewing, L., Karmiloff-Smith, A., Farrah, E. K., & Smith, M. L. (2017). Developmental changes in the critical information used for facial expression processing. Cognition, 166, 56-66.




表情の認識能力は幼少期から青年期にかけて発達する。この研究では、子供(6〜9歳児と10〜13歳児)と大人で表情認識過程に質的な違いがあるのかを明らかにした。
実験では、顔のパーツが部分的にわかるような表情刺激が用いられ、顔刺激を覗き穴を通して見るような状況が作られた。表情判断の手がかりとなるような部分がどれくらいわかるようになっているか(覗き穴の数)はランダムで、刺激から得られる情報量が表情判断にどのように影響するかが検討された。実験参加者は顔刺激の表情が「恐れ」「悲しみ」「幸せ」「怒り」のどれに該当するかを回答した。
実験の結果は上図(Fig.1)に示されている。Fig.1の左側のグラフは正答率、右側のグラフはどれくらいの情報量があれば各表情の判断ができるか(縦軸の値が大きいことは多くの情報量が必要であることを示す)を表している。まず、左側のグラフから、表情判断は年齢を重ねるごとに正確になること、そして「幸せ」の判断の正答率が最も高いことがわかった。さらに、右側のグラフから、大人が最も少ない情報量で表情を判断できること、そしてどの年齢においても「幸せ」の判断が最も少ない情報量で可能であることが明らかになった。この結果から、表情判断には経験が大きな役割を果たしていることが示唆された。

人に対する好き嫌いは,「あたたかさ」と「有能さ」をどのぐらい重視するかによる

2017/07/28 2:15 に Megumi Tabuchi が投稿

Aquino, A., Haddock, G., Maio, G. R., Wolf, L. J., & Alparone, F. R (2016). The Role of Affective and Cognitive Individual Differences in SocialPerception. Personality and Social Psychology Bulletin, 42(6), 798–810.

3つの研究によって,他者に対する社会的知覚のプロセスと,感情的・認知的欲求の関係を明らかにした。

【研究1】では,個人の感情欲求・認知欲求と,他者の性格特性に対する評価の関係を調べたところ,感情欲求が高い人は他者の「温かさ・冷たさ」の性格特性を重視するするのに対し,認知欲求が高い人は,「有能・非有能」の性格特性を重視していた。
【研究2】では,感情欲求の違いが,「温かい・冷たい」性格特性を持つ他者に対する好き嫌いを予測しており,認知欲求の違いは,「有能・非有能」の性格特性を持つ他者に対する好き嫌いを予測していた。さらに,感情欲求と認知欲求の影響は,個人が持つ態度の基本的な部分である,構造ベースやメタベースとは独立していた。【研究3】では,「温かさ・冷たさ」の性格特性に対するポジティブ・ネガティブ評価の違いが,「認知欲求・感情欲求」から「対象となる他者の好き嫌い」の間を媒介していた。社会的認知のプロセスにおいて,感情・認知欲求の個人差がいかに影響しているかについて議論した。

*感情欲求・認知欲求の個人差については,「個人がどの程度感情・認知面に接近・回避した行動を日常的にとっているか」を問う尺度を用いていましたが,そこで測定されるものと,「個人の一般的な事象に対して活性化させる感情・認知的態度」との違いがいまひとつ分かりませんでした。

大震災を経験すると人は向社会的になる

2017/07/27 1:14 に Asako Miura が投稿

Oishi, S., Yagi, A., Komiya, A., Kohlbacher, F., Kusumi, T., & Ishii, K. (2017). Does a Major Earthquake Change Job Preferences and Human Values?. European Journal of Personality, 31, 258-265.

大きな自然災害を経験することが人の価値観を変え,そのことが職業選好も変えるのか?を日本データで検証した研究
自然災害は多くの犠牲者を出す脅威である.こうした脅威は人々をより防衛的に,保守的に,集団主義的(内集団ひいき)にさせるが,同様に他者の重要性を自覚させ,秩序や同調を重んじ,その結果として向社会的な行動を増やす可能性がある.

研究1
阪神大震災(1995年1月17日)を経験した関西5市(神戸,明石,西宮,高槻,京都)と関東4市(町田,千葉,川崎,藤沢)で,震災をまたいだ12年間(1989年度~2000年度;阪神大震災は1994年度)の向社会的職業の志願者数と競争率のデータを収集.
市レベルでデータが取れる向社会的職業として,幼稚園教員,ソーシャルワーカー,消防士をピックアップ.
関東でも関西でも,1994年以降,志願者は多くなり,競争率も高くなっているが,その急激さは関西の方が大きい.

研究2
2012年12月にWeb調査(a large national surveyと書いてあるけど,私もデータをとった楠見科研の衆議院選挙の時の調査だから…)で東北・首都圏・関西の1500名に震災経験の有無・価値観・職業を調査.
大震災を一度も経験したことがない協力者(39/597)よりも経験したことがある協力者(90/903)において向社会的職業に就いている人が多い.性年齢等デモグラの影響は特になし.
大震災を経験した協力者は自己志向や達成に価値を置く程度が未経験者より低く,同調により高い価値を置いていた.

いずれももやっとしたデータだし,ごく小さな差しかないが,個人レベルの差はごくわずかでも,向社会的職業を目指す人が増えればそれに対応する制度が整えられ,また人材配置も進むなど,じわじわと社会的影響は広がっていくだろう.今後の社会構造の変化を注視することが重要だ.

過去の経験のポジネガの重みづけと新生活での関係形成の関連を検討

2017/07/24 1:08 に Saki Nakamura が投稿   [ 2017/07/24 22:00 に更新しました ]

Rocklage, M. D., Pietri, E. S., & Fazio, R. H. (2017). The weighting of positive vs. negative valence and its impact on the formation of social relationships. Journal of Experimental Social Psychology, 73, 65-75.

環境が変わると,そこからまた新たな人間関係を構築しなければならない。この時,自ら積極的に話しかけて友人を作るかどうかといった意思決定が生じる。一般的に,意思決定をする際には,過去の類似した経験を引き合いに出す。ただ,たいていの場合,働きかけて良い結果が得られた場合とそうでない場合の両方の経験があり,そのどちらをより重みづけるかというジレンマに直面する。本研究では,態度の一般化の理論をベースに,新たに交友関係を築かなければならない大学1年生を対象にし,その関係形成への影響に注目した検討を行った。特に,態度の一般化する際に,ポジネガの重みづけの個人差を行動で測定できると考え,またその行動で測定した重みづけ傾向が判断や行動に関連することを説明する。具体的には,BeanFestというゲームで行動指標をとる。この指標におけるポジティブの重みづけが大きければ,新たな交友関係を築こうすると予測した。

BeanFestとは,Fazio, Eiser, & Shook (2004)が開発したゲームである。このゲームでは架空の豆が提示されるのだが,その形と斑点の数に応じて100種類(10×10)あり,それぞれの豆には-10点から+10点まで点数が割り当てられている。参加者は,できる限り高得点が得られるように,提示された豆に対し「接近」か「回避」を選択する。BeanFestには学習フェーズとテストフェーズに分かれており,学習フェーズでは,そのうち36種類出てきて,選択すると獲得点数がフィードバックされた。テストフェーズでは,その豆の得点をフィードバックはしないものの,学習フェーズで出てきた豆の形と斑点の類似度によって得点が割り当てられていると教示され,出てきた豆に対して接近か回避かを選択した。よりポジティブに重みづけていれば,テストフェーズでも「接近」をより選択し,ネガティブに重みづけていれば「回避」を選択するという予測のもと,このゲームの成績から個人の重みづけバイアスの程度を算出した。

研究1では,大学1年生の入学すぐの時点におけるBeanFest課題によって算出した個人の重みづけバイアスが,2か月後の友人の数を予測するかどうかを検討した。その結果がFig 1である。予測通り,個人の重みづけのバイアスがポジティブであるほど,2か月後における大学で新たにできた友人の数が多いことが明らかになった。さらに,研究2では,ネガティブに重みづけをしている個人を対象に,重みづけを再調整する手続き(ここでは,BeanFestのテスト試行中に正解不正解のフィードバックを導入しただけ)による介入の効果を検討した。その結果,介入によって,拒否感受性を低下させ(Fig 2),さらに,2週間後の友人の数が増えたことが明らかになった。

顔が赤い男性は健康的で魅力的に見える

2017/07/10 2:33 に 西村友佳 が投稿

Thorstenson, C. A., Pazda, A. D., Elliot, A., J., & Perrett, D., I. (2017). Facial redness increases men's perceived healthiness and attractiveness. Perception, 46(6), 650-664.

 

これまで、男性は赤い口紅や赤い服を着ているといった「赤い」女性をより魅力的だと感じることが示されてきた。では、女性は「赤い」男性を魅力的だと感じるのだろうか。この研究では男性の顔色に注目し、女性にとって顔が赤い男性は魅力的なのかを検討する。顔の赤みは健康であることを示すことから、女性は赤い顔の男性を魅力的だと判断すると予測される。

実験1と2では、赤みの異なる男性顔(Figure1)が2つ同時に呈示され、女性参加者がどちらの男性顔の方が魅力的かを判断した。また実験3と4では、女性参加者は呈示された男性顔の魅力の評価だけでなく健康的かどうかや誠実性、知性などをを評価した。
その結果、赤みのある男性顔の方が魅力的だと判断された。また、それは健康さを媒介していることが明らかとなった。健康さ以外の項目(誠実性や知性)は魅力の高さを媒介する変数とならなかったことから、健康に見えるかどうかが重要であることが明らかとなった。

一般に、男性の顔は女性よりも赤い。性的二形要因は魅力となることから、赤い顔の男性はより魅力的だと判断されたのであろう。また、血色の良い顔色からうかがえる健康さは繁殖能力の高さを示しており、魅力的であるという判断に繋がったことが考えられる。

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