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過去の経験のポジネガの重みづけと新生活での関係形成の関連を検討

2017/07/24 1:08 に Saki Nakamura が投稿   [ 2017/07/24 22:00 に更新しました ]

Rocklage, M. D., Pietri, E. S., & Fazio, R. H. (2017). The weighting of positive vs. negative valence and its impact on the formation of social relationships. Journal of Experimental Social Psychology, 73, 65-75.

環境が変わると,そこからまた新たな人間関係を構築しなければならない。この時,自ら積極的に話しかけて友人を作るかどうかといった意思決定が生じる。一般的に,意思決定をする際には,過去の類似した経験を引き合いに出す。ただ,たいていの場合,働きかけて良い結果が得られた場合とそうでない場合の両方の経験があり,そのどちらをより重みづけるかというジレンマに直面する。本研究では,態度の一般化の理論をベースに,新たに交友関係を築かなければならない大学1年生を対象にし,その関係形成への影響に注目した検討を行った。特に,態度の一般化する際に,ポジネガの重みづけの個人差を行動で測定できると考え,またその行動で測定した重みづけ傾向が判断や行動に関連することを説明する。具体的には,BeanFestというゲームで行動指標をとる。この指標におけるポジティブの重みづけが大きければ,新たな交友関係を築こうすると予測した。

BeanFestとは,Fazio, Eiser, & Shook (2004)が開発したゲームである。このゲームでは架空の豆が提示されるのだが,その形と斑点の数に応じて100種類(10×10)あり,それぞれの豆には-10点から+10点まで点数が割り当てられている。参加者は,できる限り高得点が得られるように,提示された豆に対し「接近」か「回避」を選択する。BeanFestには学習フェーズとテストフェーズに分かれており,学習フェーズでは,そのうち36種類出てきて,選択すると獲得点数がフィードバックされた。テストフェーズでは,その豆の得点をフィードバックはしないものの,学習フェーズで出てきた豆の形と斑点の類似度によって得点が割り当てられていると教示され,出てきた豆に対して接近か回避かを選択した。よりポジティブに重みづけていれば,テストフェーズでも「接近」をより選択し,ネガティブに重みづけていれば「回避」を選択するという予測のもと,このゲームの成績から個人の重みづけバイアスの程度を算出した。

研究1では,大学1年生の入学すぐの時点におけるBeanFest課題によって算出した個人の重みづけバイアスが,2か月後の友人の数を予測するかどうかを検討した。その結果がFig 1である。予測通り,個人の重みづけのバイアスがポジティブであるほど,2か月後における大学で新たにできた友人の数が多いことが明らかになった。さらに,研究2では,ネガティブに重みづけをしている個人を対象に,重みづけを再調整する手続き(ここでは,BeanFestのテスト試行中に正解不正解のフィードバックを導入しただけ)による介入の効果を検討した。その結果,介入によって,拒否感受性を低下させ(Fig 2),さらに,2週間後の友人の数が増えたことが明らかになった。

顔が赤い男性は健康的で魅力的に見える

2017/07/10 2:33 に 西村友佳 が投稿

Thorstenson, C. A., Pazda, A. D., Elliot, A., J., & Perrett, D., I. (2017). Facial redness increases men's perceived healthiness and attractiveness. Perception, 46(6), 650-664.

 

これまで、男性は赤い口紅や赤い服を着ているといった「赤い」女性をより魅力的だと感じることが示されてきた。では、女性は「赤い」男性を魅力的だと感じるのだろうか。この研究では男性の顔色に注目し、女性にとって顔が赤い男性は魅力的なのかを検討する。顔の赤みは健康であることを示すことから、女性は赤い顔の男性を魅力的だと判断すると予測される。

実験1と2では、赤みの異なる男性顔(Figure1)が2つ同時に呈示され、女性参加者がどちらの男性顔の方が魅力的かを判断した。また実験3と4では、女性参加者は呈示された男性顔の魅力の評価だけでなく健康的かどうかや誠実性、知性などをを評価した。
その結果、赤みのある男性顔の方が魅力的だと判断された。また、それは健康さを媒介していることが明らかとなった。健康さ以外の項目(誠実性や知性)は魅力の高さを媒介する変数とならなかったことから、健康に見えるかどうかが重要であることが明らかとなった。

一般に、男性の顔は女性よりも赤い。性的二形要因は魅力となることから、赤い顔の男性はより魅力的だと判断されたのであろう。また、血色の良い顔色からうかがえる健康さは繁殖能力の高さを示しており、魅力的であるという判断に繋がったことが考えられる。

頭を怪我すると思春期に非行に走りやすくなる?

2017/07/06 6:52 に Sayo Kaneuchi が投稿

Schwartz, J. A., Connolly, E. J., & Brauer, J. R. (2017). Head Injuries and Changes in Delinquency from Adolescence to Emerging Adulthood: The Importance of Self-control as a Mediating Influence. Journal of Research in Crime and Delinquency.

この研究は人生の初期に負った頭部外傷がその後の自己制御の変化や非行に関連があるのかを検討している。


【現在の研究における疑問点】

 第一に、これまでの研究は頭部外傷と自己制御、そして大人の反社会的行動の間の連合を検討しているが、重要な発達段階である思春期における連合を検討したものは少なかった。
 第二に、これまで注目されてこなかった、自己制御に生じる変化が最終的に非行行為の変化を引き起こすのかについて検討した。

 第三に、頭部外傷と自己制御の変化、およびそれに伴う非行行動の変化に回路的つながり(pathway linking)があるのかを検討した。

 

【手続き】

データ;Pathways to Desistanceのデータを分析した。7年間にわたる調査データだった。アリゾナ州マリコパ郡とペンシルベニア州フィラデルフィアの1354人の少年犯罪者のデータで構成されていた。犯行当時の年齢は14から17歳で、全員が裁判にかけられていた。Baseline interviews20002003年に行われた。その後、参加者は10回にわたって面接を受けた(最初の6回は半年ごと、残り4回は年1回)。この研究では、Baseline interviewから数えて1年ごとのデータを引用した(12か月目~84か月目)。

 

【測度】

頭部外傷…意識を失うような、または病院での治療が必要になるような頭のケガを負ったことがあるか尋ねた。面接のたびに聞いた。(0 = no, 1 = yes

自己制御Weinberger Adjustment Inventory (WAI)によって測定。WAIは、総合的な社会的感情発達の査定を行うもので、3つの下位尺度(衝動コントロール、攻撃の制御、他人への思いやり)を含む。例えば、「頭に思い浮かんだことをよく考えないまま口に出す」「私を怒らせるような人は気をつけた方がいい」といった項目に対して、自分の過去6か月間の行動がどれほど当てはまるかを5段階(1 = false, 5 = true)で評価する。

非行3種類の尺度で測定。1つ目はself-reported offending(自己報告式非行;SRO)で、それぞれの非行を一定期間中(6か月または1年以内)に何回行ったかを答える。2つ目は攻撃的犯罪行為尺度(aggressive offending subscale)で、「喧嘩をした」「誰かを病院送りにした」「誰かに性行為を強要した」といった、(SROに比べて)より攻撃的な項目が含まれる。3つ目は所得犯罪行為尺度(income offending subscale)で、「万引き」「何かを盗むために建物に押し入った」「クレジットカードや小切手を不正に使用した」といった、より金融的な項目が含まれる。

その他の共変量…面接2回目から8回目までの頭部外傷、面接1回目の時の自己制御、サイコパシー尺度、暴力への曝露経験、知能、socioeconomic status (SES;社会経済的状態。両親の学歴や職業的地位)、逮捕経験、人口統計学的変数(年齢、性別、人種)

 

【分析計画】

Latent growth curve modeling (LGCM) とは構造方程式モデリングにおいて用いられる統計的分析手法で、成長曲線を予測するために使われる。一定期間にわたる成長を予測する、縦断的な分析手法である。時間やその他の尺度の機能としての従属変数の反復測定を表す。そうした長期的データは同じ被験者が同じ検査方法で長期にわたって繰り返し観察されるという特徴を共有している。

 

【結果】

 まず、スピアマンの順位相関係数を求めた。これは、2変数間に単調増加関係ないし単調減少関係がどの程度明確に存在するかを表す速度である。データの大きさの順位に基づいて算出される。今回これをまず求めたのは、2から8回目までの自己制御と各非行尺度における安定性の度合いを査定するためであった。自己制御には中程度の安定性があった。それに比べると非行に関しては、安定性は低かった。

ロジスティック回帰モデルが面接1時点での頭部外傷と面接2~8での非行との基本的な連合を表現すると推定された。面接1時点で頭部外傷の経験ありと答えた若者は、その後のいつの時点においても攻撃と非行の度合いが高いことが分かる。ただし、経済的非行については、有意だった時期が限られていた。

無条件LGCMによれば、非行が始まる可能性と変化の割合に有意な個人差があることが分かった。

パス分析によって、次のことが明らかになった。初期の頭部外傷は短期間の自己制御の低下に関連している。頭部外傷は攻撃的非行および一般的非行の高いことにも関連している。さらに、初期の頭部外傷は長期の攻撃的非行の変化と負の連合があった。つまり 頭部外傷経験のある若者はその他の若者よりも攻撃的非行を思いとどまるのが早かった。頭部外傷は長期の自己制御の変化、長期の経済的非行の変化とは連合していなかった。

 短期間の自己制御の変化は頭部外傷と長期の攻撃的非行との連合を有意に調整していた。これは初期の頭部外傷と長期の攻撃的非行との連合が思春期における短期間の自己制御の変化によって部分的に調整されているが、頭部外傷で苦しんだ人はそうでない人よりも速く非行を思い止まっていることを意味している。


【考察】

・頭部外傷によって前頭葉が害されている?

・暴力や攻撃的行動を起こしやすい性質のある人は、頭を怪我しやすい状況にいやすいのでは。

 

まとめると、今回の研究で、非行は環境、生物、発達それぞれの影響が複雑に絡み合って形成されるということの一つの証拠が示された。環境的影響である頭部外傷が測定されていない生物学的過程を通して作用し、自己制御を変化させ、最終的に長期的な行動パターンを形作る。

スパイシーフード嗜好と攻撃性

2017/07/06 2:14 に Asako Miura が投稿

Batra, R. K., Ghoshal, T., & Raghunathan, R. (2017). You are what you eat: An empirical investigation of the relationship between spicy food and aggressive cognition. Journal of Experimental Social Psychology, 71, 42-48.

よく「何を食べているかでどんなやつか分かる」と言われる.食べ物にはその人の特徴があらわれるということだ.ということは,スパイシーな食べ物を食べると攻撃性が増すのではないか.しかしこれを実証した研究はないので,してみた.

研究1
自己報告によるスパイシーフードを食べる習慣と特性的な攻撃性について尋ね,関連性を検討した.共変量の影響を加味しても,有意な正の相関があった.

研究2
3つの互いに無関連な研究と称して,(1)トルティーヤチップス(プレーン/ハバネロソース2滴投下)を食べて味を評価する,(2)単語完成課題で攻撃的な単語(例えばH_T→HITなど)を作る数,(3)なんとなく攻撃的な行動をする主人公の登場するヴィネットを読んでその攻撃の意図性を評定させる,をすると,スパイシーなチップスを食べた群で,攻撃的な単語を作る数も攻撃性の意図評定も高い.

研究3
食べなくても画像を見ただけで/単語に接しただけで実験2と同様の効果が生じるかどうかを検討.生じた+画像の方が効果が大きかった.ちなみにスパイシーじゃない食べ物画像2つのうち1つは素うどんでした.

類は友を呼ぶ:行動ベースのパーソナリティ評価方法はカップル、友人間のパーソナリティの類似性を明らかにした

2017/07/05 0:58 に 浦勇希 が投稿

Wu Youyou, David Stillwell, H. Andrew Schwartz, and Michal Kosinski (2017) Birds of a Feather Do Flock Together: Behavior-Based Personality-Assessment Method Reveals Personality Similarity Among Couples and Friends.  Psychological Science.
28(3) 276–
284
 

アブストラクト
友達や配偶者は性格、年齢、教育レベル、人種、宗教、態度、知性にわたり似ている傾向がある。しかし驚くべきことに、最も基本的な心理学の構造の一つであるパーソナリティの類似性に関する証拠はほとんど見つかっていない。私たちはこの証拠の欠如は、パーソナリティ研究において自己評価や仲間からの評価をする質問紙をする際に、絶対的評価ではなく、顕著な比較グループと比較して個人が人格判断を行う(参照グループ効果)傾向(つまり相対評価)によるものだと主張する。
私たちはこの参照グループ効果を避けるため、行動ベースのパーソナリティ尺度を2つ用いた。多くのサンプルに基づいた結果では、恋人関係と友達関係間での類似性についての証拠が得られた。

調査の概要
Facebook上で質問紙を取ることのできるアプリケーションがあり、今回はその機能を利用した。
Facebookのプロフィールで記事ではなく、ものやグループに「いいね」を少なくとも20個以上している人をサンプル1、500ワード以上の投稿をしている人をサンプル2、実際のカップルや友達のペアをサンプル3として協力してもらう。全ての人がBIG‐FIVEの尺度に回答をしてもらっている。
サンプル1からはいいねという行動をベースとしており、サンプル2からは実際の投稿という行動をベースとしている。
サンプル1、のいいね、サンプル2の単語やフレーズの内、頻度の高いものを絞り込み、これらの行動ベース尺度とサンプル3に回答してもらったBIG-FIVEの結果の相関を見た(いずれも有意で相関関係があった)。

そしてサンプル3のペア同士の相関を見た結果が下の図である。

また、この相関の強さを確かめるため、年齢とIQという他の変数の相関を見た結果、IQ≦パーソナリティ<年齢となった。

ネタかぶりしてすみませんでした。。。

単純な形状から引き出される生き物らしさによって空間的記憶の成績が向上する

2017/07/01 21:06 に Risako Shirai が投稿

van Buren, B., & Scholl, B. J. (2017). Minds in motion in memory: Enhanced spatial memory driven by the perceived animacy of simple shapes. Cognition, 163, 87–92.

https://doi.org/10.1016/j.cognition.2017.02.006

 単純な形状をしたものでさえ,ある特定の動き方をすると目標志向的に見えたり生き物らしく見えたりする。これまで,このような生き物らしい知覚を引き出す手がかりに関して様々なことが明らかになってきたが,知覚や認知以外の側面に関する結果はいまだ少ない。そこで本研究は,生き物らしく知覚される単純な形状が記憶に与える影響を検討した。生き物らしさの操作のために,‘wolfpack effect’を用いた。これは,ある特定のターゲットに対して常に矢羽の先端を向けているダーツは,ランダムな動きをしているにもかかわらずターゲットを追跡をしているように見えるという効果である(ダーツの形状だけでなく,赤い目のついた刺激の種類もある)。参加者は‘matching game’と呼ばれるゲームを行い,その中で同じ動きをしているパネルを選択しクリックする課題を行った。4つの実験を通して,生き物らしい動きが含まれたパネルの場所はそうでないパネルの場所よりもよく記憶されていることが明らかとなった。生き物らしい対象を検出し,その位置を覚えておくことは生存の維持にとって重要である。この観点と一致して,本研究は生き物らしさの知覚が視覚的記憶に影響を与えることを示し,生き物らしさはより深く特異的に記憶に組み込まれる可能性を示した。



自閉症スペクトラムの人やその傾向のある個人は,決定が文脈に左右されにくい

2017/06/29 16:19 に Asako Miura が投稿

Farmer, G., Baron-Cohen, S., & Skylark, W. (in press). People with autism spectrum conditions make more consistent decisions. Psychological Science.

自閉症スペクトラム(ASC)の人々は,多くの知覚/認知課題において文脈刺激に対する感受性の減少を呈する.本研究では,成人参加者が,より望ましくない第3の選択肢(デコイ=囮)と共に示された2つの選択肢のうちどちらを選択するかを検証することで,こうした知見が意思決定場面にも適用できるかどうかを検討する.参加者の選好傾向はデコイに応じて変わることが多いが,この傾向はASCだと減少する.このことは,彼らの選択は一般の人々よりも一貫的かつ慣習的であることを示している.一般的な母集団から抽出した人々のASC傾向(疾病ではなくそれっぽい,ということ)の違いで比較した結果は,その患者と統制群との比較で見られたものをやや弱化したものとなった.文脈感受性の低下は"noisy responding"(多分,回答に至るまでにあれこれ考えてしまいウルサイ感じになること)のせいではなく,ASC群は意思決定に時間はかかっていたが,そのことが選択の一貫性を強める影響をもつわけではなかった.こうした結果は自閉的な認知の特徴を,新しい領域に対する文脈非感受性として拡張的に理解することにつながるし,そのことは社会経済行動の理解にとって実践的な含意を持つだろう.

意思決定が状況に応じて変わる,というのを検証する典型的な実験パラダイムを利用して「自閉症スペクトラムだとその傾向が弱い」ことを示した研究.実験パラダイムはこんなの.ある商品について2つの属性を示し,選択を求める際に,

状況1
A 容量32GBで寿命20ヶ月のUSBメモリ
容量16GBで寿命36ヶ月のUSBメモリ
C 容量28GBで寿命16ヶ月のUSBメモリ←これがデコイ.Aよりどちらの属性もちょい劣るので,相対的にAの優位性が際立つ

状況2
A 容量32GBで寿命20ヶ月のUSBメモリ
容量16GBで寿命36ヶ月のUSBメモリ
C 容量12GBで寿命32ヶ月のUSBメモリ←これがデコイ.Bよりどちらの属性もちょい劣るので,相対的にBの優位性が際立つ

だと,一般人は状況1だとAを,状況2ではBを選びやすくなる(つまり状況に応じて判断が変わる)傾向が結構あるが,文脈刺激に対する感受性が低い自閉症スペクトラムの人やその傾向の高い人は,どちらでも同じものを選ぶ傾向が強い,ということである.

ドットの数の順応は実際の数というよりも知覚された数に影響を及ぼす

2017/06/29 3:35 に 西村友佳 が投稿   [ 2017/06/29 3:37 に更新しました ]

Fornaciai, M., Cicchini, G. M., & Burr, D. C. (2016). Adaptation to number operates on perceived rather than physical numerosity. Cognition, 151, 63-67.

例えば、そこにたくさんボールが転がっていたとする。さて、ボールはいくつあるだろうか?きっと大体何個あるかパッと見ただけでわかるはずである。このように、人は場面にあるアイテムのおおよその数を素早く推定することができる。

上図の曲線は対象(ドット)の個数を推定した結果である。上図から、ドットが線で結ばれている場合(緑)、線で結ばれていない場合(赤)と比べてドットの個数が少なく見積もられることがわかる。さらに近年、数の推定には順応の影響を受けやすいことがわかってきた。上図から、ドットが線で結ばれていない場合は順応の効果が見られない(濃い赤と薄い赤)が、ドットが線で結ばれていると、順応の効果が見られることがわかる(濃い緑と薄い緑)。

しかし、順応は数を推定する(数の知覚)メカニズムに直接聞いているのか、それとも関連するメカニズム(例えばドットの配置のキメの密度に対する適合など)を経由しているのかどうかはわかっていない。この研究では、順応が何に効いているのかを調べている。

【手続き】
1. ドットの数推定(Baseline)
2. 順応
3. ドットの数推定(Post-Adaptation)

【ドットの数推定方法】
1. 注視点の呈示
2. 注視点のどちらか一方に標準刺激、もう一方に比較刺激を150 ms呈示する。標準刺激と比較刺激を比べて、どちらの方がドットの数が多いかを回答する。
→ 主観的等価点を求める。
呈示されるドットには3条件あった(下図a)。左側はドットの数が20個ある。右側は20個のドットが線で結ばれた10個のペアが呈示されている。中央は線で結ばれたドットが呈示された時にドットの数がいくつに見えたか、被験者の推定された数だけドットが呈示されている。

【ドットに対する順応】
1. 注視点の呈示
2. 注視点のどちらか一方(左右片側)に20個のドットが20秒呈示される。
→ ドットの数を推定する際の標準刺激はこの順応場面でドットが呈示された位置と同じ位置に呈示される。

実験の結果、線で繋がれていないドットが20個呈示されている場合、ドットの数に順応してもしていなくても正確にドットの数を見積もることができた(下図左側)。この結果はこれまでの研究結果と一致する(上図赤線)。また、ドットが線で結ばれると、ドットの数は少なく見積もられ、先にドットの数に順応しているとより少なく見積もられた(下図右側)。この結果もこれまでの研究結果と一致する(上図緑線)。さらに、線で結ばれたドットが呈示された時にドットの数がいくつに見えたかを被験者が推定した数だけドットを呈示すると、ドットを線で結んだ時と同様の傾向を示した(下図中央)。この結果から、ドットの数への順応は場面全体の物理的なドットの数に対する反応する段階ではなく、ドットの数を推定するメカニズムそのものに影響していることが明らかとなった。

「独りよがり」の非対称性 ―聖人ではないが、ヨコシマでもない?―

2017/06/29 3:32 に Sayo Kaneuchi が投稿   [ 2017/06/29 3:36 に更新しました ]

Klein, N., & Epley, N. (2017). Less Evil Than You:Bounded Self-Righteousness in Character Inferences, Emotional Reactions, and Behavioral Extremes. Personality and Social Psychology Bulletin, 0146167217711918.


最近の研究から、「独りよがり」は道徳的な行動の評価よりも非道徳的な行動の評価においてより確実に現れることが示された。この「独りよがり」における非対称性が持つ4つの影響と、それを説明するメカニズムを検討した。人は、自分自身の非倫理的な行動からは、他人の非倫理的な行動からよりもネガティブな性格推論を行いにくいこと(実験①)、 非倫理的な行動の後は他人よりも気分が悪くなると思っていること(実験②)、そして他人に比べて極端な非倫理的行動をとることはできないと思っていること(実験③)を発見した。人は自分自身の評価の基盤を自分の道徳的意図に置く。皮肉的な動機の原因を彼ら自身の行動に帰する傾向がある人達は、「独りよがり」の非対称性がより小さかった(実験④)。「独りよがり」は「汝よりも清らかな(聖人ぶった)」という感情よりも「汝よりも邪悪ではない」という感情として特徴づけられると言える。
 「独りよがり(自分を聖人と見なすこと)」の非対称性…自分は他の人よりも非倫理的な行動をすることは少ないと思っている一方で、必ずしも他の人よりも倫理的な行動を取るわけではない。

 

【実験1】

 自分のことを他人よりも「邪悪」でないと考えているならば、他人の非倫理的な行動に比べて自分の非倫理的な行動からは、性格推論を行いにくいだろう。反対に、倫理的行動に基づく性格推論においては、自己と他者の差異は現れない。

 

方法

Actorは、他の参加者とペアにされ、抽選で10ドル手に入れるチャンスがあると言われた。 Actorは、10ドルは全てのtargetにランダムに割り当てられること、このお金のうちいくらかを自分のものにできるチャンスがあることを教示された。Actorは次に、彼らの役割はtargetからいくらか取り上げることだと教示された。そうすれば、実験者は残りをtargetに「運ぶ」ことができる。つまり、targetは金額を選ぶことはできないが、特定の額がランダムに割り当てられる。actorにはさらに、「彼ら(actorが誰か」を表現する5つの言葉をあげさせて、それらの言葉を使って彼ら自身を説明する様を録画した。 そしてActortarget10ドルから1ドル(気前のいい、道徳的行動)取るか、または9ドル(利己的、反道徳的行動)取るかを選ばされた。Actorは自分の行動がどれくらい利己的または寛大かを評価した。さらにActorは次の方法で自分自身の性格を評価した。1. 彼らの行動が、彼ら自身がどういう人物かということに影響を与えるかどうか、2. 自由に金額を決められたとしたら、実験者の指示と同じ割合の配分をしたか。
targetも、抽選で10ドル手に入ることを知らされたが、同時にactorがいくらか持っていくことも知らされた。actorはそれを指示されて行ったという点を強調するために、actorは選択権なく、特定の額を取り上げるよう教示されていると伝えられた。Targetactorの取り分を伝えれ、彼らの自己表現のビデオを見た。 最後に、targetactorと同じ尺度を評価した。targetには、実験者がもし教示していなかったら、actorはどのように行動したかを推測するように言った。

 

結果

targetは利己的な行動がactorの実際の性格を反映していると、actorよりも判断した。 しかし、寛容な行動からの推測では、targetactorに差はなかった。

この結果は「独りよがり」の非対称性を含む。人は、自分の明らかな利己的行動は他人の同じ利己的行動に比べて割り引く傾向があるが、自分の寛容な行動についてはあまり主張しない。

 

【実験2】

 参加者は、非道徳的な行動をイメージした後、他人よりも気分が悪く感じると予測するだろう。しかし道徳的行動のあと、気分が良くなるとは必ずしも思わない。

 

方法

6ドル渡されて、それを他の人に分ける。

self条件…彼ら自身の意志で、1ドル(利己的)、3ドル(公平)、5ドル(寛大)のうちどれかの額を与える。この行動がどのくらい良いものか(100点満点)、この行動のあとどのように感じるか、金の受け取り手はどのように感じるかを評価した。other条件では、上述の分配ができる他人を思い浮かべて、その行動がどれくらい良いものか、この行動のあと、その人や受け取り手はどのように感じるかを評価した。


結果

 利己的行動の後は他人よりも気分が悪くなると思っているが、公平な行動の後に気分が良くなるわけではない。寛大な行動の後では、他人に比べて気分が悪くなるだろうと予測しているのが面白い。道徳的行動と非道徳的行動との間にここでも差があった。

 

【実験3】

もし人が他人より「邪悪」ではないが必ずしも道徳的なわけではないと考えているとしたら、自分の最も利己的な瞬間においては他人より非倫理的な行動はしないが、もっとも寛容な瞬間において他人より倫理的だとは限らないと予測するだろう。

 

方法

6ドル受け取って他者に配分する。self条件では、まず、参加者は自分が最も利己的、公平。寛容な瞬間を考える。次に、自分がそれぞれの場合において6ドルをどのように分配するかを予想してもらう。average other条件では、参加者は同じ判断を平均的な他者に関してやってもらう。extreme other条件では、自分の知っている中で最も利己的・公平・寛容な人物のイニシャルを挙げてもらい、その人達がよくやる行動を簡単に書いてもらう。そして、6ドルをその人達が見知らぬ他人に対してどのように配分するかを予測させる。

 

結果

自分が知っている最も利己的な人や、平均的な人が最もわがままになっているときに比べれば、自分が最もわがままになっているときの方がより多くの金額を相手にわたす。平均的他者と極端な他者との間に、利己的行動の差はなかった。対照的に、参加者は自分が最も寛大な瞬間でも、自分の知る最も寛大な人や、平均的な人以上の額を分配するとは思っていなかった。

 

【実験4】

皮肉な性格尺度について、他人と自分自身の両方について答える。

次に、道徳的行動と非道徳的行動を表した7つずつ文章を読む。それぞれの行動について、自分がどの程度その行動をすると思うかを評価する。

 

結果

他者は、非道徳的な行動よりも道徳的な行動を選択するが、彼ら自身はよりいっそう道徳的な行動を選択すると、参加者は予測した。
自分自身の動機についての「皮肉的な性格」(例:「セールスマンは、消費者へのサービスよりも自分たちの利益を優先して販売を行っていると思う」といった考え方を持っていること)は他者の動機についての皮肉よりも強く道徳的・非道徳的行動の独善性に結びついていた。
理想的な自己観を持っている参加者は皮肉的な自己観を持っている参加者に比べてより強い「独りよがり」の非対称性を示した。

危険を意識していなくても,ヘルメットをかぶると危険な行動をとりがち

2017/06/29 2:08 に Megumi Tabuchi が投稿

Gamble, T. & Walker, I. (2016) Wearing a Bicycle Helmet Can Increase RiskTaking and Sensation Seeking in Adults. Psychological Science. 27(2), 289–294.


人は自分が置かれた状況の安全性知覚のバイアスに応じて,危険な行動をとる。自分を守るもの(安全のための装備)を使っているときに人が危険な行動をとりやすくなるという特徴は,リスクの補償現象と呼ばれる。先行研究では,自分が安全のための装備を使っていることを知っている人を対象に,安全のための装備を使うことが危険行動を低下させるという行動の変化に焦点を当てたものが多い。ここでは,自分が安全装置を装備していることに気づいていない人でも,ただそれを装備していれば,危険行動が増える,それどころか,この現象はその安全装備によって特に安全になるわけではない行動でも起こりえるかを調べた。
実験では対象者に「アイカメラの実験」として,野球の帽子と自転車用ヘルメットの2種類にアイカメラをとりつけたものをそれぞれかぶらせ,「ふうせん割りゲーム(ボタンを押すと画面の風船が膨らんでいく。膨らむごとにお金がたまるが,割れてしまうとゼロになる。いつ割れるかはランダムに起こるので,対象者には分からず,はらはらどきどきする。ボタンを押した合計回数を危険行動得点とする)」をさせた。その結果,ヘルメット群の方が帽子群よりも危険行動得点が高かった。ヘルメットが純粋に「アイカメラ」として導入されており,別に危険を避けるためのものではなかったにも関わらず起こったことが面白い。この結果から,安全性に関わる無意識的な行動は,危険傾向を強めることが明らかとなった。

 Figure1が実際にヘルメットと帽子を「アイカメラ」として装着している図。これを見ると,単純に頭をカバーしている範囲がちょっと違うので,その影響があるかもしれない。また,この危険行動研究と同じように,恐怖研究として「毛布を頭からかぶっているほうが不安や恐怖が少なくてすのか」という実験ができる,かもしれない。また,ゲーム内容が「身の危険とは関係ないもの」ではなくてある程度関係しているものだったので,これが完全に関係ないもの(例えばお金のやりとりとか)にしてもこの現象が起こるのか否か,はみてみたいところ。などなどの議論になりました。

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