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食べるときの匂いと味の役割

2017/10/22 20:10 に 西村友佳 が投稿

Boesveldt, S., & de Graaf, K. (2017). The differential role of smell and taste for eating behavior. Perception, 46, 307-319.

最近よく見かける透明なのに紅茶やジュースの味がする飲み物は味覚と嗅覚(おそらく、特に嗅覚)が働くことで美味しさを感じることができている。このように、味覚と嗅覚は何をどれたけ摂取するかにおいて重要な役割を果たしているが、その機能はそれぞれ異なっている。

【味覚】
味覚は今食べているものにどのような栄養素が含まれているかを感じるシステムである。甘味は糖分、旨味はタンパク質、脂肪感(油っこさ)は脂質、しょっぱさは塩分量と相関している。また、食感とともに味を感じることで、食事の満足感を得ることができる。甘さは快感情に繋がり、苦味は不快な感じを受ける。

【嗅覚】
嗅覚は主に食欲を喚起する役割がある。人は非常に多くの匂いを区別、推測することができると考えられている。また、これまでの経験やラベリングによって匂いの意味(いい匂いか嫌な匂いか)が変化する。ある食べ物の匂いについて既に学習済みの場合、どのような栄養が含まれているのか(味)について推測できるため、食べたいという動機づけが高まり、実際の飲食を予測することができるとされている。しかし、匂いに対して自覚的に気がついているかどうかや匂いの強度、参加者のパーソナリティに依存するため、必ず匂いの知覚から飲食行動を予測できる訳ではない。

味覚と嗅覚についての行動研究はたくさんあるが、生理学的なメカニズムはほとんど未解明のままである。味覚と嗅覚についての研究成果は食べ物の商品開発や、肥満防止に応用していけるはずなので、今後の発展を期待したい。

選択と説得の効果を加味したカスケード現象のシミュレーション

2017/10/18 1:46 に Saki Nakamura が投稿   [ 2017/10/22 23:58 に更新しました ]

Huang, W. M., Zhang, L. J., Xu, X. J., & Fu, X. (2016). Contagion on complex networks with persuasion. Scientific reports, 6, 23766. 

たとえば,政治への不満の爆発のように,状況によっては,多数派とは反対意見を持つごく少数の個人の存在が,大きなカスケードを引き起こすことがある。ネットワークにおけるシミュレーション研究において,カスケード現象は「伝播モデル」によって検討されており,その中でも「閾値モデル」というのが良く用いられている。「閾値モデル」は,自分とつながりのある他者全体の中で,活性化した他者の割合が,ある一定の値(閾値)を超えることで,自分も活性化するというものである。
実際の社会的影響過程には,他者から影響を受けるだけでなく,それによってまた別の他者を説得しようとする動きもある。そこで本研究では,これまでの研究で他者から影響を受けることだけを想定していたモデルに,活性化した個体が他者を説得させるだけの影響力を持ちうる存在になることを加味して,ネットワークシミュレーションを行った。この新しいモデルを「(Φ,Φ’)の閾値モデル」と著者らは名付けた。

まずは「(Φ,Φ’)の閾値モデル」におけるカスケード現象を説明する。

上の図の例では,選択の閾値(φ)=0.3,説得の閾値(φ’)=0.4とする。また,閾値モデルの大前提として,一度,活性化したものは持続するというのがあることを覚えていて欲しい。
まず,(a)は初期状態を示し,この時は,iの隣だけが活性化していることがわかる。次に,(b)は選択の閾値(φ)のみが採用された状態のネットワークである。例えば,i は3つのノードとつながっており,うち1つが活性化している。つまり,iにとっての周囲の活性化状態は1/3(=0.3333…)となり,選択の閾値(φ)=0.3よりも大きいので,iは活性化する。続いて,同様にjも活性化する。しかし,k(1/5=0.20)やl(1/4=0.25)は,φ=0.3よりも小さいので,ここでは活性化しない。そこに,説得の閾値(φ’)まで加味すると,(c)のようにネットワーク全体が活性化する。これは,bの状態においてiの周辺の活性化度合いが2/3(=0.6666…)となり,jは1/2(=0.5)なるため,説得の閾値(φ’=0.4)を超える。したがって,iとjの隣にあるkやlを説得によって活性化させることができる。これによって,kやlの隣のノードが選択の閾値を上回り,すべてのノードが活性化することになる。このようにネットワーク全体が活性化した状態をグローバルカスケードとという。

さて,説得の閾値を加味することによって,何が違うのか?――それは,説得の閾値が存在することによって,グローバルカスケードが生じやすくなることである。

たとえば,Figure 2では,黒線が従来の選択の閾値のみを採用した際のシミュレーション結果であるが,説得の閾値を採用したシミュレーション結果(赤線や青線)の方が,より小さい初期値(初期状態における活性化したノードの割合)で,ネットワーク全体が活性化していることが示されている(活性化していないノードの割合が早く0になっている)。また,ネットワークの構造別に比較すると,スケールフリーネットワーク(ノードの手の数がべき分布に従うネットワークで,実社会の対人ネットワークに最も近い)では,説得の閾値が高い時には,それが存在することによる影響が小さい。しかし,その閾値が低くなると,ERネットワーク(ノードの手の数が正規分布に従うネットワーク)と同じくらい,むしろ,ノードから出ている手の数が多い場合には,グローバルカスケードがより生じやすいことを示した。さらに,ノードごとに閾値がばらつく場合には,選択の閾値がばらついている方が,説得の閾値がばらついている場合よりも,グローバルカスケードが生じやすくなっているという結果が得られた。

本研究のシミュレーション結果は,社会的ネットワークにおける伝播のプロセスの理解に重要な示唆を与えるものである。

コメント:なれない分野の論文でしたが,心理学で明らかになっている説得プロセスをネットワークシミュレーションに組み込むことで,マクロな説得の影響過程が見れたら面白そう。

スマイリー😄の使い時にご注意を

2017/10/18 0:54 に Saki Nakamura が投稿   [ 2017/10/22 23:58 に更新しました ]

Glikson, E., Cheshin, A., & van Kleef, G. A. (2017). The Dark Side of a Smiley: Effects of Smiling Emoticons on Virtual First Impressions. Social Psychological and Personality Science, 1948550617720269.

笑顔などの情動を表出するかどうかは,第一印象を大きく左右する。これまでの研究からも,笑顔を表出する人はそうでない人よりも「温かい」「有能」といった印象を与えることが分かっている。しかし,メールやSNSなどのコンピュータを介したコミュニケーション(CMC)では,表情を使って情報を伝達することができない。CMCにおいて笑顔の代わりになるものが「スマイリー(😄)」である。本研究では,ビジネス場面を想定した会話において,笑顔表出ありの動画,笑顔なしの動画,スマイリー記号の入ったメール,スマイリーなしのメールの4つの条件を設定し,そのメッセージの送り手に対する印象を評価させる実験を行った。

実験の結果は,スマイリーは実際に笑顔を表出する時と同じような印象を与えるわけではないとのこと。むしろ「アホっぽい」印象を与えてしまうというようなマイナス効果もある,ということでした(研究1,Figure 1)。

その他,メールの文章にスマイリーがあることは,その人物の能力を低く感じさせ,その結果,返事を短く適当に済ませようとする行動につながったり(研究2),研究1で見られた,「メールにスマイリーがあることで,送り主に対して温かい印象を与える一方で,有能さの印象を下げる」という影響に,そのメールの
適切さの評価が低くなることが媒介することを示した(研究3)。

コメント:どういう場面設定かによっても,スマイリー付きのメールが与える印象というのが変わりそう。

どんな国でも,どんな人でも,「インモラルな人は無神論者」扱い

2017/10/12 17:42 に Asako Miura が投稿

Gervais, W. M. et al. (2017). Global evidence of extreme intuitive moral prejudice against atheists. Nature Human Behaviour.

プレレジストレーションはこちらをご覧下さい.
論文の内容は,Natureのサイエンスライティング記事をご覧下さい.

これまでの「無神論者ダメ」研究がWEIRD(Western, educated, industrialized, rich, democratic ちなみにweirdは英語で「怪しげ」というニュアンス)データに偏っていたという反省にたち,宗教性も国家の安全さも様々な13カ国(オーストラリア,中国,チェコ,フィンランド,香港,インド,モーリシャス,オランダ,ニュージーランド,シンガポール,アラブ首長国連邦,イギリス,アメリカ)でデータを収集した研究.課題はいわゆる「リンダ問題」の誤答率(conjunction fallacy rates)を調べるもの.

※リンダ問題(Tversky & Kahneman,1983
合接(論理積)の誤謬(英: conjunction fallacy)を調べる課題.合接の誤謬とは,一般的な状況よりも特殊な状況の方が蓋然性が高いと誤判断することで,形式的誤謬(formal fallacy)の一つ.

リンダは31才、独身、率直な性格で、とても聡明である。大学では哲学を専攻した。学生時代には、差別や社会正義といった問題に深く関心を持ち、反核デモにも参加した。
どちらの可能性がより高いか?

リンダは銀行窓口係である
リンダは銀行窓口係で、フェミニスト運動に参加している

この質問を受けた人の大多数が選択肢2を選んだ.しかし,2つの事象が同時に(in conjunction:合接して)発生する確率は,そのどちらか1つの事象が発生する確率よりも低いか等しいかのいずれかであるから,論理的には誤答である.しかし人は,目立つ特徴に引っ張られてその誤謬に気づきにくい.これを上手く利用して「インモラルな人物(ここでは「子どもの頃に動物を残虐にあつかい,長じて成人してからは暴力をさらにエスカレートさせて,5人のホームレスを殺してバラバラにするような大犯罪人になった,という男性」というヴィネット)は無神論者だ」という認識を間接的に測定した.具体的には,

A この男性は教師である
B この男性は教師で,1神を信じている/2神の存在を信じていない

から選択を行わせた(B1とB2は被験者間要因).すると,フィンランドとNZを除くすべての国で,B1が選ばれる誤答率よりB2が選ばれる誤答率が高く,その傾向は本人の神の存在を信じている程度により上昇は見られるものの,本人が無神論者(信心0)であっても見られた.

クラウドソーシングサービス,どこがどうなの?

2017/10/12 15:12 に Asako Miura が投稿

Peer, E., Brandimarte, L., Samat, S., & Acquisti, A. (2017). Beyond the Turk: Alternative platforms for crowdsourcing behavioral research. Journal of Experimental Social Psychology, 70, 153-163.

Amazon Mechanical Turkの独り勝ちだったクラウドソーシングサービス利用のデータ収集界隈,しかし登録者はそろそろ頭打ちでみんな実験に慣れてきてしまった.もう刈る草がないぞ,どうしよう,というわけで代替サービスとなりえそうなものとMTurkを比較した研究.今度日本でそれをやった研究を論文化するので,参考のために読みました.比較対象とするサービスすべてで同じ調査で行って,回答行動や回答データを比較した,というわけです.調査内容は,

心理尺度:認知欲求NFC,自尊心RSES
注意チェック項目ACQs
回答者のナイーブさ:「以前別の調査でこの質問に答えたことがあるか?」
大体ロバストな結果が出る意思決定課題:Asian Disease framing effect, Sunk Cost Fallacy, Retrospective Gambler's Fallacy, Quote Attribution question
チーティング課題

で,データを収集したサービスは,MTurkの他,Prolific Academic, Crowd Flower, それにStudy 1では大学のサブジェクトプールも対象としました.比較の結果は以下のようにまとめられます.

  • ProAやCFの参加者はMTurkよりもナイーブで不正直ではない
  • CFは回答率は高いが注意力がいまいちで,MTurkやProAでは再現された意思決定課題の結果が再現されない
  • ProAのデータの質はCFより高く,MTurk並み
  • CFはMTurkより参加者のダイバーシティが高い

MTurkerがカリカリにチューンナップされた人々が多いこと,アメリカとインドのサンプルに偏っていることは,社会心理学のデータ収集にとっては割と深刻な問題だと思いますが,アメリカ人はともかく日本人や欧米人がそれを気にしないのはなぜなんでしょうね.まあ,他に選択肢を思いつかないからですね.

直感的な選択の方が創造性が高い?

2017/10/11 20:42 に Megumi Tabuchi が投稿   [ 2017/10/11 20:44 に更新しました ]

Zhu, Y., Ritter, S. M., Müller, B. C. N., Dijksterhuis, A. (2017) Creativity:Intuitive processing outperforms deliberative processing in creative ideaselection. Journal of Experimental Social Psychology, 73, 180-188.

  私たちの生活の中で,創造的なアイデアは高く評価され,科学技術の多くは創造的なアイデアを生み出せるようデザインされている。しかし,実際の場面で創造的なアイデアを利用する際には,アイデアを生成するよりも,アイデアプールから最も創造的なアイデアを選ぶ,という行為の方が多い。創造的アイデアの生成と創造的アイデアの選択は,いずれも創造性理論と関連しているにも関わらず,両者の研究は別々に行われることが多い。本研究では,特に創造的アイデアの選択における,プロセス(直感的に選ぶか,熟慮して選ぶか)の影響について調べた。

【実験1】

87名の対象者を直感条件(n=44) (「直感的に,最も創造的だと思うアイデアを選択してください」と教示される)と,熟慮条件(n=43(「注意深く分析して,最も創造的だと思うアイデアを選択してください」と教示される)に割り当てる。対象者は予備調査によって集められた創造的なアイデア(例えば,「より多くの人に電車を利用してもらうにはどうすればいい?」といったお題に対する答え。それぞれのアイデアには専門家による得点が付与されている)に対して創造性評価を行った後,「これぞ創造的!」と思うアイデアを6つ選択する。 その結果,創造性・独自性については,直感的条件の方が熟慮条件よりも,創造性の専門家評価が有意に高かった。有用性は,熟慮条件の方が有意に高い傾向。

【実験2

実験1と同じ実験材料を用い,「対象者が先に創造的なアイデアを選択してから評価する」という順番だけ変えて実験を実施。その結果,実験2と同様,創造性・独自性については,直感的条件の方が熟慮条件よりも,創造性の専門家評価が有意に高かった。有用性は有意差なし。

 

いずれにせよ,直感的に選んだものの方が,専門家評価の創造性,独自性が高いという結果に。

顔を見れば社会的階級を予測できる?

2017/10/08 22:46 に Risako Shirai が投稿   [ 2017/10/08 22:57 に更新しました ]

Bjornsdottir, R. T., & Rule, N. O. (2017). The visibility of social class from facial cues. Journal Of Personality And Social Psychology, 113(4), 530–546. https://doi.org/10.1037/pspa0000091

これまで,私たちが非言語的手がかりを介して意図的に自分の社会的階級を表現する可能性が示されてきたが,知覚者側がそれをどれほど早く検出できるかは明らかにされてこなかった。私たちは他者の顔を見ただけで社会的階層を予測できるのか,予測できるとすると,どのようにして推測しているのかを明らかにする実験を実施した。

実験1他者の顔から社会的階級を予測できるか?

方法:呈示する顔刺激は,年収が$150,000以上と報告している場合は富裕層(rich),$35,000以下と報告している場合は貧困層 (poor)とした。参加者はランダムな順序で呈示される顔をrichなのかpoorなのか,第一印象で分類をおこなった。その後,質問紙調査をおこなった。階級差別について(階級に基づく偏見; Economic Belief Scaleを使用)や社会階級に根ざした本質主義についての質問項目に回答し,社会的階層の好ましさ・特定の社会階級の人たちへのあたたかさについても回答した。参加者は最後に参加者の家計情報・主観的な社会的階層についてもこたえた。

--> 参加者は顔の刺激の社会的階層をチャンスレベル以上にうまくカテゴリ化できることがわかった。

参加者の回答の正確性(e.g., poorpoorと報告)と反応バイアス(e.g., richpoorと報告)をどのような変数が予測するのかを調べるため,6つの調整変数を用意した (classism, class preference, class warmth, social class essentialism, the perceivers’ incomes, subjective social class) 。分析の結果,他者の社会的階級を予測する能力は知覚者側の社会的階級やそれに関連した態度で変動しないことが示された。

 

実験 2A, 2B, 2C 知覚者側はどのような顔の特徴を利用して社会的階級を予測しているのか? (Fig.1)

2Aの結果:参加者は正立状態の顔でも倒立状態の顔でも社会的階級をチャンスレベル以上で予測できることがわかった。これらの結果は顔の全体の形状のみが社会的階級のてがかりを提供するわけでないことを示唆。

2Bの結果:参加者は上半分の顔でも下半分の顔でも社会的階級をチャンスレベル以上で予測できることがわかった。上半分の顔と下半分の顔の正解率に違いはなかった。これらの結果は顔の上半分と下半分の両方の情報で知覚者が社会的階級を予測している可能性を示唆。

2Cの結果:実験の結果,参加者は目でも口でも社会的階級をチャンスレベル以上で予測できることがわかった。けれども,口の方が目よりも正解率が高いことがわかった。これらの結果は目と口の両方の情報で知覚者が社会的階級を予測でき,口だとよりはっきりと予測できる可能性を示している。

実験 顔の物理的特徴以外のてがかりが社会的階級をどこまで予測する?

顔の特徴以外のてがかりが社会的階級をどこまで予測するかを検討した。特に,社会的階級と関連していると考えられる5つの変数との関係性について検討した (affect, attractiveness, dominance, empathy, health, intelligence, warmth) 。因子分析を行い,魅力度(attractiveness, health, intelligence)と積極性(affect, empathy, warmth, reverse-coded dominance)に関する2つの因子にまとめ,レンズモデルに当てはめて検討した。その結果,魅力度と積極性の両方が「富裕層とカテゴリ化する確率」と相関関係にあり,魅力度のみが実際のモデルとなった顔の社会的階層と相関していた。

--> 知覚者は魅力度をターゲットの社会的階層を知覚するのに使用していたと考えられる。

実験 4A, 4B  十分に統制された顔写真からでも社会的階級を予測できる?

これまで使用してきた顔写真はweb ベースで収集した写真であったため,顔写真にうつる人の情動表情や角度の細かな変数は操作できていなかった。このような変数を統制するため,実験4では実験室で撮影した写真を用いて実験を行った。

実験4Aの結果:新しく使用した顔写真でも知覚者はチャンスレベル以上で顔から社会的階級を予測できることが示された。

実験4B:因子分析を行った結果,Attractiveness, Diligence, Positivity が抽出された。レンズモデルにあてはめると,わずかであるが,積極性のみが有効なてがかりとして機能することが示された。

実験 5A, 5B 社会的階級の知覚に積極性(Positivity)が与える影響

実験 5A: 合成顏を作成し,「呈示した人物が今どのように感じていると思うか」を答えさせた (Fig. 4)。その結果,貧困層よりも裕福層の方がポジティブな感情であると評価された。

実験 5B:顔画像の呈示時間を短くすることで顔から得られる情動情報(affect)が人物の社会的階層の知覚に影響するかを検討した。実験4Aと同様にモデルの社会的階層の予測がチャンスレベル以上で予測できることが明らかとなった。

実験6A, 6B 顔の情動情報は社会階級の予測を妨害するか?

実験6A:顔の情動が社会的階層の手がかりになっているならば,顔の情動表情が存在することで,社会的階層の予測がおこないにくくなる可能性。笑顔だとより高い社会的階級だと予測されることが報告された。

実験6B笑顔が社会的階級のカテゴリ化を妨害するかを調べた。仮説と一致して,人物の階級をうまく弁別することができなくなることがわかった。

実験 7 人物から推測された社会階級が雇用の機会に与える影響

社会階級を知覚されることで,知覚された人物の経済状況にどのような影響を及ぼすかを検討した。例えば,貧しい人々に対する偏見は、その人にとって経済状況を改善する可能性のある機会を制限し、排除してしまう可能性がある(RidgewayFisk2012; Stephens et al., 2014)。

方法:参加者は会計士志望の人物の顔を見て,会計士として成功する確率を答えるように教示された。

--> 富裕層の人の方がより良い職につくと予測された。社会階級に関する顔の手がかりを重要な社会的判断の決定に使用していることを示している。


おっちょこちょいがいても問題ない:ときどき間違えるbotの存在がグループの全体のパフォーマンスを上げる

2017/10/08 20:38 に 西村友佳 が投稿

Shirado, H., & Christakis, N, A. (2017). Locally noisy autonomous agents improve global human coordination in network experiments. NATURE, 545, 370-374.

ある状態を最適化する際、グループの中に何かランダムなことがあると全体の最適化に到達しやすくなるかもしれないことが考えられている。この仮説を検証するために、この研究では線で繋がった丸の色を調整していくゲームを使って人とボット(自律的に動作するソフトウェア)の相互作用を調べている。

実験参加者は左図のような線で繋がった丸の1つに配置される。実験参加者の課題は、隣り合う丸が違う色になるように調整していくことであった。例えば、左図の0秒時点では赤い線のところが間違っている状態(隣り合う丸が同じ色)になっているが、245秒後には全ての隣り合う丸が異なる色になっている。実験参加者はこの245秒後の状態を目指して色を変更していく。ただし、実験参加者には左図のような全体像は見えておらず、隣り合う丸しか見えていない。また、全体像のどこかに最大3つボットが含まれていたが、実験参加者には自分の隣の丸が人なのかボットなのかはわからない。ボットがどのように丸の色を変更するかはランダムさが操作された。また、どこに配置されるか(全体像の真ん中辺りか、端の方か)も操作された。

実験の結果、ボットが真ん中の辺りにいて、かつ少しだけランダムに動く(せっかくいい感じに調整されていたのに間違った状態にしてしまう等)場合、グループ全体のパフォーマンスが良かった(最適化までにかかる時間が短かった)。特に、全体の課題難易度が高い時にこの傾向が顕著であった。ボットがランダムに色を変えることが人の課題を容易にするだけでなく、人同士の相互作用にもいい方向に影響することが示された。

ミスをする人は足手まといで迷惑だと思われがちだが、案外そうでもないらしいということが言えるかもしれない。

オートペドフィリア: 性的対象アイデンティティの倒錯が生む「ペドフィリア」との差異

2017/10/08 19:49 に Sayo Kaneuchi が投稿

Hsu, K. J., & Bailey, J. M. (2017). Autopedophilia:erotic-target identity inversions in men sexually attracted to children. Psychological science, 28(1), 115-123.


性的指向の次元は3種類ある。性別・性的成熟度・惹きつけられるのが他個体か自分自身か

 

Erotic-target identity inversionETII)は性の対象そのものになっているという空想によって興奮を得るセクシュアリティ。

通常、自分の「外側」にあるものに性的魅力を感じる。しかし時に、男性の性的標的は彼自身の身体の中にあることもある。この場合、男性は自分が性的標的になったという考えや空想によって興奮する。そのようなセクシュアリティを性的対象同一性倒錯(ETII)という。

このセクシュアリティを持つ人は、自分の理想のターゲットになれるよう努力を積むと言われている。

【ETIIの例:オートガイネフィリアとアポテムノフィリア】
・オートガイネフィリアは(男性が)自分を女性だと思って興奮するもの。本来自分の外側にある性の対象が、内側に存在することになる。
 アポテムノフィリア(切断性愛)は切断された対象にだけでなく、自分が切断されることにも興奮を覚える。
 ⇒両者ともETIIを含む

【「性的倒錯」の概念に対する批判】
 性的倒錯についての概念は単に「特定の性的興味や行動が望ましくない」という価値的な判断に留まっている。
性的倒錯が男性に多いこと、一人の人が基本的に2種類以上の異常性癖を持つことが多いことから、性的倒錯とは価値判断ではなく(に加えて)生理的な事象であると考えられる。

 

【オートペドフィリア
・オートペドフィリア(子供の服装をしたり、自分が子供になったところを空想して性的興奮を得る)は小児性愛(ペドフェベフィリア)に比べてあまり注目されてこなかった。
・仮説・予測
 小児性愛者は女性よりも子供に興奮するので、オートガイネフィリアの方がより一般的なのにも関わらず、オートペドフィリアをより多く示すだろう。
ETIIの概念はオートペドフィリアの男性が現実世界(外側)で好む子供のタイプと自分の中で高まるときに思い描く子供のタイプとの対応を予測する。例えば、思春期前の少女が好きな人は、オートペドフィリアの気があれば、思春期の少女になるところを空想する。

 

【方法】

 オンラインで参加者を募集。(B4U-ACTやVirtuous Pedophilesといったペドフィリアの支援サイトで募集)
 ☆尺度
・性的関心
「何歳くらいの子に性的興奮を覚えますか?」
・オートペドフィリアの発現
  「子供になったり、子供の身体をもったところを空想して興奮することがありますか?」
「どれくらい興奮しますか?」
「それは何歳くらいの子供ですか?」
「子供の服装をすることがありますか?」
「子供になったら、うまくいくだろうと思いますか?」
「子供らしくなれるようなホルモン治療や手術を受けたことがありますか?」
オートペドフィリアを持っていると考えられる人には、より詳しい説明を自由記述させた。


【結果】

・ヘテロセクシャルの男性と比較して、ペドフェベフィリア男性におけるオートペドフィリアの割合は、オートガイネフィリアの割合よりも多かった。

Webサイトによる割合の差なし。ただし、どの年齢・性別の子供に興奮するかはサイトによって差があった。

・少女に惹かれるオートペドフィリアの人は少年よりも少女になる空想で興奮する。少年に惹かれる人はその逆。 
・性別 / 年齢カテゴリは空想上の子供の性別 / 年齢カテゴリと正の相関があった。特に14歳以下の子供で相関が強かった。

・オートペドフィリアではない人よりも、オートペドフィリアの人の方が子供の服装をすることも、子供になったならうまくいくだろうという気持ちも、手術等の割合も多かった。

 

【考察】

・自分が男の子になった空想をするのは、そうなることで他の子供と性的関係を持つことができるからだという説明もある。しかしこれは、自分が女の子になった空想をする男性を説明できない。

ETIIの概念は、オートペドフィリアの男性は少女に惹き付けられるからこそ、少女になったところを空想して興奮を得るのだと予測する。

ETIIだけが、オートペドフィリアの説明だというわけではない。子供になった方が罪の意識が薄れる、とか。

・それでも、ETIIは性的倒錯一般に存在するようだ

「愛情・共感・競争」笑顔表出の3つの機能

2017/10/04 17:30 に Saki Nakamura が投稿

Rychlowska, M., Jack, R. E., Garrod, O. G., Schyns, P. G., Martin, J. D., & Niedenthal, P. M. (2017). Functional smiles: Tools for love, sympathy, and war. Psychological science, 28(9), 1259-1270.

笑顔はもっともよく表出される表情の1つであるが,そのすべてが「幸せ」であることを意味するわけではない。社会的機能による説明では,少なくとも①報酬行動,②社会的な絆の形成,③交渉の優位性の3つに笑顔の機能が分類できるという。本研究では,これら3つの笑顔が実際にどういう表情なのかを明らかにする。

研究1:参加者にEkmanのアクションユニットに基づいて表情を操作した顔画像を見せて,3つの機能に分類させた。
研究2:研究1をもとに特徴づけた表情が,人間が見た場合でも3つの機能に基づいて正しく識別されるかを検討。
研究1と2の結果は以下の通り。3つの機能に基づく表情パターンはFigure 2のaや以下の写真の通り。また,得られた3つの機能に基づく表情パターンは人間でもおおよそ正確に分類することができることが判明。

実際の人の顔だと以下のような感じ↓


研究3:研究1をもとに特徴づけた表情について,それぞれ「この人はどれくらい,なにか・誰かに対するポジティブな反応や感情を持っていますか?(報酬行動の文脈)」「この人はどれくらい誰かと社会的結びつきの感情を持っていますか?(社会的)」「この人はどのくらい,優位な,支配的な感情を抱いていますか?(交渉の有意の文脈)」の3つの項目に答えさせた。その結果,その表情に応じた文脈の項目の時に「あてはまる」と答える確率が高かった。

本研究の結果は,3つのタイプの笑顔が,物理的な特徴の違いによって区別でき,それは異なる社会的メッセージを伝達することを詳細に示し,表情表出の多様性を説明することを示唆する。

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