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どのような心理現象がどこまで科学で説明できると感じられるのか?- 3つのファクター

2018/02/06 1:37 に Risako Shirai が投稿   [ 2018/02/06 1:40 に更新しました ]


Gottlieb, S., & Lombrozo, T. (2018). Can Science Explain the Human Mind? Intuitive Judgments About the Limits of Science. Psychological Science29(1), 121–130. https://doi.org/10.1177/0956797617722609
科学は情熱的な愛や道徳,宗教を説明できるのだろうか?1975年,愛についての研究をしていたグループが,皮肉の込められた面白おかしいことをしている団体に送られる"Golden Fleece Award " を受賞した。ここに見られるように,私たちは,ある特定のテーマ(例えばここでは"愛")を科学には至らない存在とみなしたり,科学であると認めるべきではないと感じたりする。このような信念はどこからやってくるのだろうか?何が科学で説明できて,何が科学では説明できないと感じるのだろうか

そこで本研究は,科学の範囲を超えていると考えられる心理現象を区別するファクターは何であるかを特定する調査を実施した。
Figure 1には,様々な心理現象について科学で説明できると思う程度」と「十分に科学で説明できるという考えに不快感を覚える程度」を参加者に尋ねた結果が示されている(後者の質問はFigure 1では得点を逆転して示している)。
6つの研究を通して,「心理現象に対する科学的な説明が不可能である,不快である」とみなすのは,その心理現象が自分個人でないとアクセスできないような内観 (first-person, introspective access) ,人間にしかできないような行為 (humans exceptional),意識的な欲求(conscious will)といった,大きく分けて3つのファクターが関連しているときであることを示した(Figire 2)

本研究のようなトピックを今後も研究していくことは,教育や公衆衛生に対する科学的な説明の妥当性を得るために重要である。例えば,世界的な地球温暖化に関する科学的な説明は人間が原因であるという考えを示し,学習や推論にも科学的な説明が影響を与えてきた。このような科学的な説明による効果は,今回明らかにしたファクターによって調整されると考えられる(Figire 2)。例えば,科学的な説明は私たちの行動や判断に影響を与えるかもしれないが,その行動や判断が自分の意識的な欲求によるものだと強く感じる場合はその影響力の大きさは変わってくるかもしれない。

 

顔の形は撮り方によって変わる

2018/02/01 21:51 に 西村友佳 が投稿   [ 2018/02/01 22:02 に更新しました ]

Noyes, E., & Jenkins, R. (2017). Camera-to-subject distance affects face configuration and perceivedidentity. Cognition, 165, 97-104.


履歴書やパスポート、そして丁度今の時期だと受験票など、顔写真を見て本人確認をする場面はたくさんあるかと思います。ただ、写真は撮り方によってかなり見え方が変わってしまうことをご存知でしょうか。左の顔写真(Fig. 1., Noyes & Jenkins, 2017)は同じ人を(a) 20 cmほど離れて撮ったものと、(b) 3 mほど離れてズームして撮ったものです。(a)の方が顔幅が狭く顎がシュッとした立体的な顔に、(b)の方が顔幅が広く平面的に写っていることがわかります。人の顔を認識するには形の情報が重要だと言われていますが、撮影距離を変えるだけで形の情報が大きく変わってしまうわけです。では、このような同一人物を違う距離から撮った写真を見て、同一人物であると答えることができるのでしょうか?この研究では、異なる距離から撮影された写真を用いて、画面上に呈示された2枚の人物画像が同じ人物か違う人物かを回答させる実験を行いました。




実験の結果が左のグラフです。呈示された人物が知っている人であれば、撮影距離が近くても遠くても同じ人か違う人か正解できるのですが、知らない人を見た場合には「同じ人である」と正解するには近くから撮影されたものの方がよく、「違う人である」と正解するには遠くから撮影されたものの方が良いということがわかりました。また、実験2では、呈示する2枚の写真の内1枚をサイズを縮小して呈示しました。この操作は遠くにいる人は顔が小さく見えるという状況を再現したものです。実験2の結果から、このような遠いものは小さく見えるといった距離の手がかりを用いて、この顔は誰かといった判断をしている可能性が示唆されました。顔の識別をするには形の情報が重要ですが、顔の形は写真の写り方といった条件によって変わりうるために、周辺手がかりを使って目の前にある顔が誰の顔なのかを判断しているのかもしれません。

MTurker×コンジョイントは無敵┏(*'ω' )┛

2018/02/01 16:52 に Asako Miura が投稿   [ 2018/02/01 17:03 に更新しました ]

Bansak, K., Hainmueller, J., Hopkins, D. J., & Yamamoto, T. (2018). The Number of Choice Tasks and Survey Satisficing in Conjoint Experiments. Political Analysis, 26, 112-119.

Web調査のsatisficingに関する研究.ポリサイ勢やマーケティング系の方々がよく使うコンジョイント分析(拡張版一対比較法のようなもの.図参照)をウェブでやるとき,どのくらい延々やっても大丈夫かを,実際に延々とやらせて検討したという,satisficingの研究の中でもかなり意地悪な研究.MTurkで5回,SSI(という日本にも法人があるらしい,この論文ではよく使われる的なことが書かれていたが,少なくとも社会心理学系ではあまり見ない)という調査会社パネルで1回,いろいろ条件を変えつつ,大統領選挙でどちらに投票するか?に関する7属性2水準の課題を30回をやらせて,主要2属性(所属政党と学歴)の効果サイズや決定係数の推移を見ている.謝礼は1.25ドル.安い.
MTurkでとった5回をまとめた結果としては,1回目がさすがにもっとも良いが,自然減は驚くほど少なく,ちゃんとしてました,とのこと.調査会社パネルでもほぼ同様.馴れていない人なら話は別かもしれないが,MTurker×コンジョイントの組み合わせは相当やらせてまくっても無敵┏(*'ω' )┛らしい.ただ,付録も含めてざっと読む限り離脱率の報告はないので「鬼課題でも最後までやり通す連中はsatisficingしない」ということだろう.それがいいか悪いか,まあサーベイ実験ならダメではないか… おそらく日本では(Web調査会社は当然のことながら)クラウドでもこうはいかないと思うので,MTurkerの奴隷っぷりがどこからどう来ているのかは気になるところです.

派生して,最近某山彦クラウドの調査協力で,意味を解読するのが困難な調査に一生懸命答えたのに報酬を獲得できない事例が複数あって納得がいかない,と某参加者がおかんむりでした.

銃がそばにあるだけで運転が荒くなる

2018/02/01 7:00 に Saki Nakamura が投稿

Bushman, B. J., Kerwin, T., Whitlock, T., & Weisenberger, J. M. (2017). The weapons effect on wheels: Motorists drive more aggressively when there is a gun in the vehicle. Journal of Experimental Social Psychology, 73, 82-85.

銃に関する議論では,単に銃を見るだけで攻撃性が高まるという事実
(これを「武器効果」という)があまり考慮されていない。 この効果は,1967年のBerkowitz & LePage (1967) の研究で初めて実証されて以来,何度も再現されている。 本実験では武器効果について運転シミュレータを用いて検討した。車の運転は人が関与する最も危険な活動の1つで,調査研究によると,車内に銃があるとリスキーな運転になるという。 本実験では,参加者(N = 60)を無作為に助手席に「銃」または「テニスラケット」がある群に割り当て,不愉快な状況が存在するシナリオ下で運転させた。 その結果,助手席に銃がある時のほうが,テニスラケットの時よりも攻撃的な運転をした。 これらの結果は,単なる銃の存在が運転手をより攻撃的にすることを示した。

下の図は,参加者が運転する車と前の車との間の秒数をベースに算出した危険運転の指標の結果。2秒基準(超リスキーで危険な運転),3秒基準(通常の道路状況でも危険だと判断されるレベル),4秒基準(渋滞時・障害物が多いときに,危険だと判断されるレベル)のどの基準においても,助手席に銃がある時の方が,ラケットがある時よりも,危険運転状態の割合が高いことを示している。その他,平均速度,危険運転行動,言語的攻撃などを指標した場合においても銃が助手席にある場合の時の方がリスキーな運転をしていることが示された。


コメント:日本では銃に代わるものは何か?武器効果とは反対に,そこにあるだけで安全運転が促進されるものはないか?などの議論になりました。

現状のサンプルサイズ設計には出版バイアスと不確実性が含まれている

2018/01/21 20:12 に Saki Nakamura が投稿   [ 2018/01/21 20:23 に更新しました ]

Anderson, S. F., Kelley, K., & Maxwell, S. E. (2017). Sample-Size Planning for More Accurate Statistical Power: A Method Adjusting Sample Effect Sizes for Publication Bias and Uncertainty. Psychological Science, 28, 1547–1562. https://doi.org/10.1177/0956797617723724

近年の心理学研究では,再現性に関する問題の1つに「検定力の低さ」があり,これを受けて適切な検定力に達するようなサンプルサイズ設計が求められるようになってきている。サンプルサイズ設計にはいくつかの方法があるが,最もポピュラーなものは,先行研究に基づいて見積もった母集団の効果量を使う方法である。本研究は,この方法を用いることで生じる2つのバイアスを考慮した,新しいサンプルサイズの算出方法を紹介する。

先行研究の効果量を用いてサンプルサイズ設計をすることの問題点
1つ目は出版バイアスが考慮されていない点である。出版バイアスとは,ネガティブデータが肯定的な結果が出た研究に比べて公表されにくいというバイアスのことである。このバイアスが存在するため,先行研究をもとにサンプルサイズ設計すると,公表されていない部分が考慮されていないことになってしまう。2つ目は,サンプルの効果量そのものに不確実性が含まれている点である。そもそもサンプルの効果量は,母集団の効果量の推定値なので不確実性が含まれている。どのくらい不確実であるかを示すものが「信頼区間」になるが,サンプルサイズ設計の時には,信頼区間はお構いなしにある1点のみを用いている。

新しいサンプルサイズの設計方法
本研究では,Taylor & Muller (1996) による,サンプルの効果量の推定の際の出版バイアスと不確実性を調節した尤度ベースの手続きを用いて,上記2点の問題を考慮したサンプルサイズ設計を提案する。
これはサンプルサイズ設計をするのに,先行研究の効果量を用いるのではなく,先行研究のF値をもとにした非心パラメータ(λ)をいかに正確に推定するかによってアプローチを試みている。

Taylor & Muller (1996) のアプローチでは,出版するのに望ましい有意水準を考慮した,以下のような非心パラメータの尤度関数を用いる。

この尤度関数を用いることで,非心パラメータの値に対する尤度分布が生成される。尤度分布を得ることで,非心パラメータの推定値における任意のパーセンタイル点を選択できるようになり,これによって不確実性も考慮できる。任意のパーセンタイル点を50%tileにすると出版バイアスのみが考慮されている状態となり,それより低く設定することで,出版バイアスに加えて不確実性を考慮することができる。ちなみに,Taylor and Muller (1996) は,5%tile点を推奨している。

では,どのパーセンタイル点を選択するばよいのか?それに関しては,サンプルサイズ設計下のシミュレーションにおいて意図した検定力に届いた割合を示す指標の「保証 (assurance)」を参考にすればよい。これは,分位点を「1ー(望ましい保証度合)」によって設定するもので,50%tileだったら50%意図した検定力に達して,5%tileだったら95%が達することを意味する。

従来のサンプルサイズ設計との比較
以下に示したTable 1は,3×4のANOVAの例に従来通りの先行研究ベースのサンプルサイズ設計とTaylor & Muller (1996) のアプローチを用いたサンプルサイズ設計によるシミュレーション結果をまとめたものである。



検定力の平均(1段目)は,従来のアプローチでは母集団の効果量が何であれ,望ましい水準(.80)に達していない。新しいアプローチでは,母集団の効果量が大きい場合には,出版バイアスのみを考慮するだけでも.80に達しており,小さい場合は,最も厳しい基準(5%tile)の時には.80に達している。
各セルのnの中央値(2段目)は,母集団の効果量が大きい時には,従来の設計方法の場合とさほど変わりはないかが,小さい場合には従来の設計方法と比較して,約5倍以上のnが必要となっている。
最後の保証の程度(3段目)を見ると,従来のアプローチでは母集団の効果量が大きい時でも15.2%しか,小さい時には一度も検定力.80に達していないというシミュレーション結果になっている。新しいアプローチでも,100%とまではいかないものの,従来のアプローチと比較するとかなり改善されていることがわかる。

われわれの開発したRのパッケージで簡単に算出にできます!
Rパッケージ:BUCSS(詳細PDF
Rない人のためのWEBアプリ:https://designingexperiments.com/shiny-r-web-apps/

この方法の限界
1つ目は,保証の基準に正確な値があるわけではなく,私たちで決める必要がある点である。2つ目は,ある1つの先行研究をベースに算出していることである。これはメタ分析の結果や中央値を用いるなどで解消可能である。3つ目は,出版バイアスを単純にαp = .05でカットすれば良いというものではない。出版された論文には有意傾向のものもあるし,最近では,有意水準をもっと下げるべきだという流れもあり,一概に.05でカットすれば良いという話ではない。4つ目は各群のnが等しい場合しか使えない点である。しかし,各群のnが同じ時に検定力が一番高くなるから頑張って同じ数になるように調整すべきである。


結論
「根本的にp-hackingやQRPをなくすものではないけど,これによって動機づけは減るよね!」

組織構造が少数派集団への態度を決める -「ピラミッド型」の組織は有力に見えるか-

2017/12/27 2:20 に Sayo Kaneuchi が投稿   [ 2018/01/28 14:56 に Asako Miura さんが更新しました ]

Fath, S., Proudfoot, D., & Kay, A. C. (2017). Effective to a fault: Organizational structure predicts attitudes toward minority organizations. Journal of Experimental Social Psychology, 73, 290-297.


【Social Dominance Orientation: SDOとは】
 集団支配志向(集団の階級制度選好の尺度)。SDO-Dominance(SDO-D)とSDO-Egalitarianism(SDO-E)の、2つの次元に分かれるとされる。
 SDO-D(集団支配志向性因子)は、支配的な階層構造に対する支持の程度を表し、顕在的で伝統的に強者であり続けている集団を支持する。
 SDO-E(平等主義志向性因子)は、どちらかというと明白でない不平等選好で、社会的階層構造を維持することを支持する。

今回の研究では、少数派集団の職業組織に対する支持を検討し、そうした組織の構造が人々の彼らに対する反応をどう規定するのかを考察する。

【予備実験】
 メインの実験で使う刺激(組織図)が狙い通りに「階層的」に見えることを確認する。参加者を2つの条件に分け、それぞれにFigure 1、2を見せた。
  ・階層的組織構造条件…Figure 1を見せた。
  ・非階層的組織構造条件…Figure 2を見せた。

 そのうえで、図がどの程度階層的かを7段階で評価させた。また、その組織がどのくらい目標を達成できそうだと思うかを判定させた。

Figure 1. 階層的組織図

Figure 2. 非階層的組織図

 結果、Figure 1の方がより階層的で、有力だと判断された。

【実験①】
 様々な人種の参加者を、2×2の4つの条件に分けた。
 ・ベースライン組織条件…参加者は「全国内科医協会」に関する情報を読んだ。
 ・少数派組織条件…参加者は「全国アフリカ系アメリカ人内科医協会」に関する情報を読んだ。
  →協会の名前以外の情報は、両方の条件で一緒。どちらもUS国内の情報。

 ・階層的組織構造条件…階層的な構造の組織図を見せた。
 ・非階層的組織構造条件…非階層的な構造の組織図を見せた。

 参加者はその組織が権力を持つことにどの程度賛成かを評価した。続いて、SDO-6スケールによってグループ間の不平等性選好を測定した。

【結果】
 SDO-Dが高かった参加者は少数派組織かつ階層的構造の組織について少数派かつ非階層的構造の組織を見た参加者よりも、権力を手にするべきでないと判断した。SDO-Eでは、この傾向は見られなかった。
 SDO-Dが、少数派組織に対する態度を予測する場合に、階層的組織構造と相互作用している。
 一方、SDO-Eは階層的少数派組織条件と非階層的少数派組織条件の両方で、組織の支持に有意な負の相関を持っていた。

 つまり、SDO-Eは構造の効果を調整していないが、構造の形態に関わらず、黒人で構成された少数派組織への支持に関連していた。この発見はSDO-Dが少数派への態度をSDO-Eよりも強固に予測することを示している。

【実験②】
 基本的な方法は実験①と一緒。ただし、参加者が読む文章のタイトルを「全国ユダヤ系内科医協会」に変えたことと、SDOの尺度をSDO-7に変えた点が異なっていた。
 少数派組織条件のタイトルを「全国ユダヤ系内科医協会」に変えた理由は、ユダヤ系アメリカ人がアフリカ系アメリカ人とは異なり、多数派との関係性が葛藤や敵意を含んだものではないためであった。

【結果】
 SDO-Eによって測定された不平等選好は階層構造を持つ少数派集団への不支持に結びついていた。
 SDO-DよりもSDO-Eが少数派集団への態度を予測する。

【総合考察】
 2つの実験から、少数派組織の構造が集団間不平等性の支持と組織そのものへの支持の関係を決定するうえで重要な役割をはたしていることが分かった。
 不平等性維持の選好が高まることは少数派組織が権力を持つことを制限したいという欲求に繋がる。この傾向は、組織の構造が階層的なものだと強くなる。今後は、知覚された組織の効力が人のSDOを高め、階層的少数派集団の不支持を促進することを確認する研究が求められる。

FBは強い絆が強いのSNS,TWは弱い絆が強いSNS

2017/12/24 17:11 に Asako Miura が投稿

Valenzuela, S., Correa, T., & Gil de Zúñiga, H. (2017). Ties, Likes, and Tweets: Using Strong and Weak Ties to Explain Differences in Protest Participation Across Facebook and Twitter Use. Political Communication, 1-18.

SNSはその名の通り社会的ネットワークを作る+維持するしくみです.しかし社会的ネットワークは一様ではなく,血縁のように元々ガッチリ繋がった(逆に言うと切りたくても切りがたい)絆に基づくものもあれば,興味関心や趣味のように自らの意志で多様な人々と繋がれる(逆に言うとちょっとしたことですぐに切れてしまう)絆に基づくものもあります.前者を支えるしくみの代表格がFaceBookで,後者のそれがTwitterなのは今更いうまでもないでしょう.社会的行動の多くはこうした絆とのコミュニケーションの影響を受けて出現することが知られていますが,そこにしくみによる違いはあるのでしょうか.この研究は,チリの若者を対象とした対面による代表性の高い社会調査データに基づいて,このことを検証するものです.従属変数としたのは積極的政治参加の程度で,当時チリでは一般市民の政治関心が高まり,デモやストライキが比較的よく起こっていたようです.

H1: Facebook利用が政治的抵抗運動参加にもたらす効果は,Facebookで強い紐帯から政治的情報が得られた場合に強められる.
H2: Twitter利用が政治的抵抗運動参加にもたらす効果は,Twitterで弱い紐帯から政治的情報が得られた場合に強められる.

仮説はいずれも支持されました.

表情変化の共有がアンサンブル知覚に与える影響

2017/12/19 0:57 に Risako Shirai が投稿

Elias, E., Dyer, M., & Sweeny, T. D. (2017). Ensemble Perception of Dynamic Emotional Groups. Psychological Science, 28(2), 193–203. doi: 10.1177/0956797616678188

私たちは視覚的に入力された物体の全体の特徴をごく短い時間で正確に知覚できると言われている。これはアンサンブルコーディングとして知られている。私たちはアンサンブルコーディングにより,「笑っている聴衆者たちが平均してどれほど笑っているのか?」を抽出することができる。本研究は,動作の共有(グループメンバーの息があっているか否か)が集団の平均的な情動の抽出に影響を与える可能性を検討した。

実験 1

画面上に顔の集合が呈示され (Fig. 2),顔の表情が次第に変化するように設定された (Fig. 1)。このとき,表情が同期して変化する同期条件,同期して変化しない非同期条件が設定されていた。実験の参加者の課題は,顔の集合が呈示された後,集合全体の顔表情の平均強度を答えることであった。実験の結果,顔の集合の表情変化が同期する場合の方が,非同期条件や顔が一つしか呈示されなかった場合(シングルフェイス条件)よりも表情の平均強度の正解率が高いことがわかった。

実験 2

顔の全体的な情報からアンサンブル知覚を獲得しているかを明らかにするため,顔刺激を倒立状態にして同様の実験を実施した。その結果,実験1と同様に顔の集合の表情変化が同期する場合の方が,非同期条件よりも表情の平均強度の正解率が高いことがわかった。また,実験2は実験1と比較して表情の平均強度に対する感度が大きかった。感度が大きくなった原因としては,顔を倒立状態にしたことで顔の全体処理が遅くなったことが挙げられる。これらの結果は,倒立状態にしても最終的には顔の全体処理が行われていたことを意味している。全体処理が行われた上で実験1と同じパタンが得られたことから,顔の全体的な情報から集団の平均的な情動の抽出が行われていたと考えられる。

 実験 3

実験1, 2ともに同期条件は非同期条件よりも集団の平均的な情動を正確に回答できることを示した。しかし,同期条件では顔のそれぞれの表情の変動が同じように変化していく一方で,非同期条件では顔の表情変動の範囲が大きい傾向にあった。顔の表情変化の均質性が統制された状態でもアンサンブルコーディングが動作を共有した集団に感度が高いかどうかを確かめた。その結果,同期条件は非同期条件・シングルフェイス条件よりも正確に回答していた。アンサンブルコーディングは行動の共有に感度が高いことを示し,単に変動の不均質性に依存した結果ではないことを示している。

 

グループの表情変化が同期していると,平均的な情動の抽出がよく出来ることがわかった。本研究で動作の共有として用いた顔の動きの共有は,ゲシュタルトの法則におけるグルーピング手がかりの一つである,同調の法則 (law of synchrony) と関連している可能性がある。ゲシュタルトの法則におけるグルーピングの手がかりがアンサンブルコーディングの処理のゲートとなっているのかもしれない。

à  今後の研究では,どのようなグルーピング手がかりがアンサンブル表象の効率性に影響を与えているのかを明らかにするべきである。


子どもの時点で「自分の仲間じゃない人」の心をあまり考えない。

2017/12/11 2:30 に Megumi Tabuchi が投稿

McLoughlin, N. & Over, H. (2017). Young Children Are More Likely to SpontaneouslyAttribute Mental States to Members of Their Own Group. Psychological Science, 28(10), 1503–1509.


他人の心を理解しようとすることは,人が社会の中で生きるために必須のことである。子どもでも,相手の情動や願望などをある程度推測したり理解したりできる。一方で,大人になっても自分とは異なる集団に属する外集団,いわゆる「仲間じゃない人」たちに対しては非人間化が起こり,相手の感情や心の働きを無視して偏見的な行動をとることがよくある。本研究では,発達心理学の「心の理論」に関する背景と,社会心理学の非人間化のメカニズムをくっつけて,子どもが外集団よりも内集団のメンバーの心の状態を自然とより考慮するものなのかを調べた。

(手続き)

5歳児と6歳児それぞれ64名に,「三角形の2つが互いに相互作用しながら動くビデオ」を見せて,その三角形(対象者には「子ども」と説明)に関して質問(「こっちの子は何をしているところ?」など)をし,答えの発言から「心理的状態」に関する部分を抽出して分析する。その際,三角形を自分と同じ仲間である内集団と思わせるか,外集団と思わせるかを操作する(例:内集団条件の場合,女の子の対象者には,「この2人の女の子は何をしているところ?」と質問)

(実験デザイン)

子どもの年齢(5歳児 or 6歳児)×内・外集団を分けるタイプ(性別・居住地)×図形をどちらのメンバーと思わせるか(内・外集団)。従属変数は,ターゲットに関する「心理的な状態(感情や行動の理由など)」の発言数と種類。

(結果)

3要因混合計画(子どもの年齢(56歳)×内集団条件(性別・居住地)×ターゲットの所属(内集団・外集団))の分散分析の結果,

・発言数は,ターゲットの所属の主効果(内集団に対するほうがより多く発言)および,年齢の主効果(6歳児のほうが5歳児より発言が多い)が有意。交互作用はなし。

・発言の種類は,子どもの年齢×ターゲットの所属の交互作用が有意。6歳児では内集団に対するもののほうが発言の種類が多い。

自分の仲間が単純に「好き」というのに加えて,本研究では内集団の方がより内面(精神状態,心の状態)を推し量るようになり,その傾向は年齢が上がれば上がるほど強くなることが示された。つまり,発達によって外集団のものに対してより「非人間化」が起こって,「心の理論」が働かなくなるのではないか,それが将来的な偏見につながっていく可能性があると言える。

☺は笑顔?日本とアフリカで聞きました

2017/12/07 19:05 に Asako Miura が投稿

Takahashi, K., Oishi, T., & Shimada, M. (2017). Is☺ Smiling? Cross-Cultural Study on Recognition of Emoticon’s Emotion. Journal of Cross-Cultural Psychology, 48(10), 1578-1586.

中京大・高橋康介さんたちの研究.

問題設定はシンプルで,エモティコンの表現する感情を,インターネットに対するfamiliarityが低く従ってエモティコンへの曝露度が低い人たちは認識できるのか?というもの.研究対象は日本人大学生(インターネットバリバリ使ってる群)とカメルーンとタンザニアの人たち(インターネットなにそれ群)で,提示したのは happy と sad と neutral 表情の,エモティコン(テキスト日本風,テキスト西洋風,☺みたいな画像の3種類)と実際の顔写真(アジア人,アフリカ人,白人)で,参加者たちはタブレット端末を渡されて0-100で評定をしている.小さい子もスマホやタブレットは直感的に使えるようになるっていうし,ぽいとタブレット渡したら調査ができるっていいですよね.調査内容からも言葉による指示(の行き違い)を極力小さくするように努力されています.

もしEkmanの言う「表情の普遍性」がエモティコンにも該当するなら,顔写真とエモティコンの両方で,たとえそれが初めて見るようなものであったとしても,日本人もアフリカ人も表情を解読できるはず.では実際は?
結果は上記のとおり.左3つ real face だと日本人もカメルーン/タンザニア人も正しく表情を解読できていましたが,エモティコンだとさにあらず.日本人はどの種類でもちゃんと判別できている(西洋風はちょっと弱いけど)のに,カメルーン/タンザニア人はダメでした.どうやら,エモティコンは,それを見慣れていない人にとっては「感情…?ってどういう?」というものに見えたようです.しかもどちらかというと50より低い点なので, happy には見えていないようですね.そもそもエモティコンを見たことのない彼らにとって,エモティコンは顔に見えたのか? パレイドリア(普段からよく知ったパターンを本来そこに存在しないにもかかわらず心に思い浮かべる現象)との関連は?などなど,議論は盛り上がりました.

翌日の高橋さんとのやりとりはこちら:https://twitter.com/asarin/status/938912838147383297

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