2017rindoc

選択的注意のコスト: 子どもが大人のミスに気づくとき

2017/04/23 2:34 に Risako Shirai が投稿   [ 2017/04/23 2:48 に更新しました ]

Plebanek, D. J., & Sloutsky, V. M. (2017). Costs of Selective Attention: When Children Notice What Adults Miss. Psychological Science, 1-10. (Online First)

https://doi.org/10.1177/0956797617693005

運動器や認知、社会的な機能というのは子どもから大人にかけて発達的に推移していく。本研究はこの発達に関する法則をやぶっている結果を報告する。それは、注意における発達である。本研究は実験1、実験2の二つの実験からなる。実験1では、45歳の子どもと大人を対象に変化検出課題を行った (Figure 1)。はじめに何色のアイテムへ注意を向けるべきかの手がかりが表示され(例:赤色)、次に赤色と緑色で描かれたターゲットアイテムが重なった状態で呈示された(例:赤色の星, 緑色のハート)。その後、テストアイテムが呈示され(例:赤色の十字, 緑色のハート)、参加者は次に示すような2つの判断をおこなった。一つは、テストアイテムで呈示されたアイテムのうち、手がかりで示された色のアイテムがターゲットアイテムの中に出現したものであったかどうかであり、2つ目は、ターゲットアイテムとテストアイテムのペアが同じであったかどうかの変化検出の判断であった。ターゲットアイテムからテストアイテムの変化のパタンは3種類あり、手がかりづけられたアイテムのみが異なるアイテムに変化する場合、何も変化しない場合、手がかりづけられていないアイテムのみが変化する場合の3種類であった。その結果、大人は手がかりづけられたアイテムの変化検出で子どもの正確性を上回った一方で、子どもは手がかりづけられていないアイテムの変化検出の正確性で大人を上回った。 実験2では実験1の結果を一般化するために同じ参加者が視覚探索課題を実施した (Figure 3)。手がかりと同じ特徴をもった刺激を画面上から探索する課題を行ったのち、刺激の再認課題を実施した。画面上に呈示する刺激が視覚探索課題時に出現していた刺激であるかどうかをテストしたところ、子どもは探索時に非関連であった刺激の特徴に関しても記憶しており、再認成績が大人の成績を上回った。大人の選択的注意は成熟した状態であることと比較して子どもの注意はまだ分散した状態であるため、課題に関連のない情報に関しても注意が向いていたと考えられる。この早期段階での注意のパラドックスは注意の発達過程に関する理解を深め、子どもの早期段階での学習方法についても広い示唆を与えるものとなるであろう。


目を見るだけで心が読める:目の形から複雑な心境を知覚する

2017/04/21 6:37 に 西村友佳 が投稿

Lee, D. H., & Anderson, A. K. (2017). Reading what the mind thinks from how the eyes sees. Psychological Science, 28(4), 494-503.

人の目は様々な複雑な社会的・感情的情報を伝えてくれます。この論文では、目のどのような形をしているとどのような心的状態を知覚するのかを検討しています。

50種類の心的状態(その内6個は基本情動で、44個は複雑な心的状態)を表した目の画像を用意しました。Fig. 1. では例として嫌悪と恐怖の感情を表した目が示されています。左の画像は目の直径と眉の傾斜、中央の画像は目と眉の距離と眉の曲線が嫌悪と恐怖の感情を表した典型的な目と異なっており、右の画像では目の周りのシワが取り除かれています。そして、各目の画像に対して心的状態を表す言葉がどれくらい当てはまるかを「1. 全く当てはまらない」から「9. 非常によく当てはまる」の9件法で実験参加者に評価してもらいました。


Fig. 2.のaは感情状態地図(距離が近いほどよく似た感情であることを表しています)です。この図から4つの基本情動の内、嫌悪と恐怖は真逆の位置にあり、全く似ていません。
嫌悪感情で特に重要な特徴は鼻のシワと眉の傾斜と盾の幅の狭さであり、恐怖感情で特に重要な特徴は目の直径と目と眉の間が広いことがわかりました。Fig. 2.のbでは4つの基本情動を知覚するために重要な目の特徴が示されています(+は正の相関、−は負の相関、色の明るさは相関係数の大きさを表しています)。cではbを基に嫌悪感情と恐怖感情の例が示されています。また、基本情動だけでなく複雑な心的状態においても各目の特徴から読み取れるものははっきりと別れていました。例えば、畏怖と疑念は感情状態地図においておおよそ対局の位置にあります。
実験2では顔全体が呈示されましたが、感情状態を読み取るためにはやはり目の形が重要であることが示されました。これらの結果から、人が複雑な心的状態を目と眉の間の距離などの細かな違いを読み取ることで理解していることが考えられます。






海外経験のダークサイド:いろんな国での経験が非道徳な行動を増やす!?

2017/04/20 2:29 に Saki Nakamura が投稿

Lu, J. G., Quoidbach, J., Gino, F., Chakroff, A., Maddux, W. W., & Galinsky, A. D. (2017). The dark side of going abroad: How broad foreign experiences increase immoral behavior. Journal of Personality and Social Psychology, 112(1), 1-16.

グローバル化が進むにつれて,海外経験はより身近で,価値のあるものとされている。これまでの研究では,海外に行くことは,創造性を高めたり,集団間バイアスを減らすなど,良い点ばかりが注目されていた。本研究では,これまでの研究とは反対に,海外経験のダークサイドに注目する。特に,海外経験によって非道徳な行動が増えることに焦点を絞る。本研究では,海外経験が豊富であること(特に,いろんな国に行ったことがあること)は,道徳的相対主義(道徳は絶対的なものというより,相対的なものであるというだという信念)を増加させ,非道徳的行動を引き起こすと予測し(Figure 1),以下の8つの実験でこの仮説について検討した。

研究1:縦断研究。留学中(半年後,1年後)のほうが,留学前よりもアナグラム課題での不正の数が増加。
研究2:実験。「いろんな国に行ったこと」を想像させた時のほうが,さいころの目の数を不正に報告し,たくさん謝金をもらおうとした。
研究3:実験。「いろんな国に行ったこと」を想像させる条件と「1つの国に長期滞在すること」を想像させる条件を設定。前者のほうが,正解をチラ見する数が多かった。
研究4:調査。住んだことのある国の数,海外に住んでいた年数,非道徳的意図の尺度(SINS)との関連を検討。住んだことのある国の数がSINSの得点に正の効果を持っていた。
研究5:実験。研究3と同様の方法で条件操作を行った。「いろんな国に行ったこと」を想像させた時のほうが,アナグラム課題での不正の数が多く,非道徳的行動の意図(Lammers, et al., 2010)の得点も高かった。
研究6:調査。住んだことのある国の数,海外に住んでいた年数,道徳的相対主義の関連を検討。住んだことのある国の数が道徳的相対主義の得点に正の効果を持っていた。
研究7:調査。住んだことのある国の数,海外に住んでいた年数,非道徳的行動意図,道徳的相対主義の関連を検討。住んだことのある国の数が非道徳的行動の意図に正の効果を持っていたが,道徳的相対主義を投入した時にはこの効果が消えた。
研究8:実験。研究3と同様の方法で条件操作を行った。媒介分析をおこなったところ,「いろんな国に行ったこと」を想像させる条件が非道徳的行動に及ぼす効果に,道徳的相対主義が媒介していた。

8つの研究を通して,海外経験が豊富であることは道徳的相対主義の増加によって非道徳的行動を増加させることが示され,この効果は海外経験の豊富さと非道徳的行動の関連は,第一言語の違いや,ライフステージの違い,非道徳行動の測定方法を変えても一貫して見られた。個人が多様な文化を経験することで,道徳の羅針盤がくるってしまうのかもしれない。

「行動自体が楽しい!」ものでないと長期的な目標行動なんて続かない…

2017/04/20 2:03 に Megumi Tabuchi が投稿

Woolley, K. & Fishbach, A. (2017) Immediate RewardsPredict Adherence to Long-Term Goals. Personality and Social Psychology Bulletin, 43(2), 151-162.


人は基本的に,後から遅れて受け取る報酬のために,長期的な目標を立てる(例えば,健康を改善するために運動する,など)。しかし本研究では,後から受け取る報酬があるか否かよりも,すぐに受け取れる報酬(ここでは,その行動をすること事態が楽しい!という短期的な報酬)があるか否かのほうが,その目標達成のための行動が持続するかをより強く予測できることを明らかにした。

研究1では,「行動自体が楽しい」といった,すぐに受け取れる報酬は,新年の目標を初志貫徹できるかを予測していたが,後から受け取る報酬は予測していないことが明らかとなった。また,基本的に後から受け取る報酬のためにする行動である勉強や運動であっても,すぐに報酬を受け取れるか否かが行動を続けられるかどうかに影響していた(研究2,3)。これは,1週間であっても3ヶ月であっても,同じ結果だった(研究4)。そして,報酬の予測(報酬がもらえる!と思うこと)であろうが,実際に報酬を受け取る場合であろうが,同じ結果だった(研究5)
総じて,後から受け取る報酬は,長期的な目標を設定したり心積もりをしたりするモチベーションにはなる一方,短期的な報酬が,その目標のための行動を続けるかどうかに強く関わってくることが明らかになった。

研究1では,「今年の目標」をたずねて,その行動を2ヵ月後にどの程度頑張れているかどうかと,その行動がどのぐらい楽しいか(短期的報酬),その行動がどのぐらい意味があるか(長期的報酬)を調査
研究2では,図書館で勉強している人,研究3ではジムで運動している人を調査し,短期的・長期的報酬と,勉強・運動を実際どのぐらい長く粘って頑張っていたかを検討
研究4では,1週間,あるいは3ヶ月間での運動や食事といった行動と,短期的・長期的報酬との関連を検討
研究5では,「好きなだけにんじん(!)食べていいよ」と言って,実際に食べた量と,短期的・長期的報酬との関連を検討

今回の研究では,目標達成が全て「別に達成されなくても死なない」程度のものだったので,短期的報酬(楽しい!と思う程度)のほうが圧倒的に影響があったのではないか,という議論に。目標達成できないと致命的な結果が待っている場合であれば,長期的報酬を目指して行動維持できることもある,のかもしれない。

身体のサイズと脅威性の判断における人種差別 ー黒人は「強い」か?ー

2017/04/20 1:41 に Sayo Kaneuchi が投稿   [ 2017/04/20 1:45 に更新しました ]

Wilson, J. P., Hugenberg, K., & Rule, N. O. (2017). Racial Bias in Judgments of Physical Size and Formidability: From Size to Threat.

黒人は往々にして危険だと判断され、攻撃されることがある。7つの研究から、黒人は白人に比べて体格がよく、危害を加える能力も高いと判断される傾向があることが示された。

研究①では標的刺激(ターゲット)の人種がその人の肉体的大きさの知覚を歪める、という仮説を検討することを目的に、1-AEまでの5つの調査を行った。1Aでは、若い黒人男性と白人男性の顔写真から、その人の身長と体重を推測させた。研究①をまとめると、黒人は白人に比べて(実際より)背が高く、体重も重く、またより筋肉質で力も強いと推測されることが分かった。

危害を加えることのできるような身体的能力の評価における、これらの誤った知覚の影響を検討することを目的に、研究②を行った。ここでは、研究1Bで使用した顔写真を見せて、その人物が参加者自身を身体的に傷つけることができると思うかどうかを尋ねた。その結果、明らかに白人よりも黒人の方が、危害を加える能力があると判断された。

研究①と②から、黒人は白人に比べ危害を加える能力が高いと判断されるので、肉体的にも脅威を感じると考えられることが示された。この仮説を検証するために、黒人男性と白人男性の身体的力強さと加害能力を尋ねる研究③を行った。その結果、仮説は支持され、白人よりも黒人に対してより加害能力があると判断するその判断の程度と、身体的大きさの判断に生じる人種間の差異との間に相関関係があることが分かった。

研究④は、参加者の人種によって判断や身体的大きさの知覚に違いがあるのかを検証するために行われた。 刺激は研究③で用いたものとほぼ同じだったが、明示的偏見を測定することはしなかった。その結果、黒人も白人も、黒人の方が白人よりも肉体的に強いと知覚するが、その差は黒人の参加者の方が小さかった。さらに、黒人の参加者は白人の参加者が見せたような加害能力についての差を示さなかった。一方、白人の参加者はこれまでの研究で示されてきたとおり、黒人の方が肉体的に強く、また加害能力も高いと判断した。黒人の参加者は、身体の大きさに関しては黒人の方が大きいと判断したものの、それを加害能力と結び付けることはしなかった。すなわち、参加者の人種で判断に差があった。

研究⑤では、大きさと加害能力についての参加者の知覚が、警察官が人に対して(暴力的な)力を使うことを正当化する理由を予測するのかを調べた。その結果、黒人に対してそうした力を行使することは、白人に対してそうすることよりも適切だと判断された。

研究⑥では、ターゲットの顔がどの程度「アフリカ的に」見えるかどうかを評価させることで、参加者の脅威判断における人種的バイアスが黒人と白人のターゲットをより「アフリカ的」だと判定させるのかどうかを検討した。さらに、「アフリカっぽさ」が攻撃行動のサイン、テストステロン、力強さと言った身体的特徴と関連があるのかを調べるために、ターゲット(刺激)のfWHR(顔の横幅と縦の長さとを比較する指標。顔が横長の人の方が、テストステロンが多く、攻撃的だという)も測定した。研究の結果、顔に基づく人種的バイアスの知覚は肉体的脅威の判断を予測することが分かった。すなわち、肉体的脅威の判断は人種に関する社会的カテゴリーの情報だけを前提とするのではなく、人種に関連した外見的手がかりの知覚とも関係がある。

研究⑦では、人種があいまいなターゲットに対する人種の信念が、これまでと同様に身体的大きさの判断に影響を与えるのかを検討した。結果、「黒人」とラベリングされた場合は「白人」とラベリングされた場合に比べて身長をより高く・体重をより重く推測した。

総括すると、黒人は白人に比べて体格がよく、それゆえ恐ろしいと判断される傾向が非常に強いことが示された。その原因は、黒人の外見的特徴(ボトムアップ的手がかり)によるものと、黒人に対するイメージによるもの(トップダウン的手がかり)の両方がある。

ユーモア必ずしも功を奏さず

2017/04/20 1:03 に Asako Miura が投稿   [ 2017/04/20 1:03 に更新しました ]

Bitterly, Brooks, & Schweitzer (2017). Risky Business: When Humor Increases and Decreases Status. Journal of Personality and Social Psychology, 112(3), 431-455. doi: 10.1037/pspi0000079
8つの実験によって,ユーモアは地位向上に資するけれどもリスキーでもある,ということを示した研究.仮説モデルはFigure 1のごとし.

うまくユーモアを使えれば,既存の関係でも新しい関係でも地位向上が見込めるが,うまくいかない(ふさわしくないジョークを言ってしまう)とたちまち地位は脅かされる.両者の関係を仲介するのは信頼性と有能性の評価である.つまり,うまくユーモアが使えることは「信頼できる」「有能だ」というシグナルとなり,その人の地位を向上させる.また,興味深いことに,ジョークを言うことは,その内容のふさわしさによらず,また,その結果(地位向上)によらず,信頼性のシグナルとなっていた.しかしふわさわしくないジョークは「有能ではない」というシグナルにもなってしまうので,結果的に地位を脅かすことになるのである.

Study 1 対面場面でジョークを使うと使わない場合よりも地位評価が向上することを尺度評定(a)と行動指標(b)により確認
Study 2 妥当で面白いジョークは受け手のポジティブ感情(a)/信頼性と有能性評価(b)を引き出し,それを通じて送り手の好感度を上げるかどうかを検証.ただし有能性の評価に寄与するのは「成功」ジョークのみという仮説
Study 3 失敗ジョークは信頼にはつながるがこいつはバカだというシグナルになるため結果的に地位評価は下がる可能性をMTurkサンプル(a)と一般成人対象の実験室実験(b)で検証
Study 4 信頼性と有能性の評価がどのようにユーモア使用と地位評価の間をリンクさせるのか,そのメカニズムの検証.bではジョークにより喚起されたポジネガ感情の影響による説明可能性を排除

こうした知見から考えれば,ユーモアは,対人評価や集団内の階層構造の形成において,決して「添え物」的に軽んじられるものではなく,実は基盤的な役割を果たしているのではないだろうか.


道徳的なショック (”moral shock”) による道徳化: 道徳的な信念に先立つ情動についての検討

2017/04/14 20:34 に Risako Shirai が投稿   [ 2017/04/23 2:41 に更新しました ]

Wisneski, D. C., & Skitka, L. J. (2017). Moralization Through Moral Shock: Exploring Emotional Antecedents to Moral Conviction. Personality and Social Psychology Bulletin, 43(2), 139–150. 

https://doi.org/10.1177/0146167216676479

テレビのニュースや新聞などで伝えられる惨忍な事件は私たちの情動を強く揺さぶり、法律を改正する動きのように、時としてそのような事件が起こる状況を改善する方向に私たちの態度を変容させる。先行研究はこのような出来事のことを“moral shock”という言葉で表現してきた。本研究はこれまで個人の逸話や記述的な表現しかなされてこなかったこの“moral shock”の存在を実験的に検討し、”moral shock”がどのように個人の道徳的な態度の変容に影響を与えているのか、また生起した情動の原因が何であるのかという意識な気づきは道徳的な態度の変容に必要であるのかを明らかにする。実験12ともに参加者の課題は呈示された刺激の弁別をすることであり、呈示された刺激が画像であったのか文字であったのかをキー押しで判断した。この時、刺激の呈示時間も操作された。実験1では4種類の画像(妊娠中絶と関連した胎児の画像/動物虐待と関連した画像/嫌悪と関連しているが危害のない画像/中性的な画像)、実験2では2種類の画像(妊娠中絶と関連した胎児の画像/傷ついた身体部位/中性的な画像)を準備した。実験1の結果、意識的な気づきのある長い呈示時間の条件の時のみ、他の画像呈示時と比較して妊娠中絶と関連した胎児の画像呈示時に妊娠中絶に対する道徳的な信念が高まった。また実験2でも、妊娠中絶と関連した胎児の画像呈示時にのみ妊娠中絶に対する道徳的な信念が高まった。加えて媒介分析の結果、妊娠中絶と関連した画像の呈示時と中性的な画像呈示時の妊娠中絶に関する信念の違いは危害や怒りの感情でなく妊娠中絶と関連した画像に対して個人が感じた嫌悪の程度によって媒介されていた。これらの結果は、ある態度と関連した嫌悪の生起と嫌悪感情が生じた原因は何であるのかということの意識的な気づきが、道徳的な信念を変容させるプロセスに重要である可能性を示している。

純潔を超えて:性格の悪さにも道徳的嫌悪を感じる

2017/04/14 5:02 に 西村友佳 が投稿

Roger Giner-Sorolla & Hanah A. Chapman. (2017). Beyond purity: moral disgust toward bad character. Psychological Science, 28 (1), 80-91. 

 先行研究では、道徳的嫌悪は不潔(impurity)と、怒りは危害(harm)と関連すると考えられてきた。しかし、この研究では道徳的嫌悪は不潔によってのみ生じるのではないことを示している。相手の性格がどのようなものかを判断することが嫌悪に関係していること、そして相手の行為について判断することが怒りに関係していることから、道徳的嫌悪も行為者の性格の悪さを感じた時に引き起こされると考えられる。
 研究1において参加者は2つのシナリオを読み、シナリオに登場した人物(JohnとRobert)の性格と行為、そしてシナリオを読んで嫌悪感と怒りをどれくらい感じたかについて評価をした。Johnは8年間付き合っている彼女が浮気をしたと知り、怒って彼女を殴った。このJohnについてのシナリオは本人の性格の問題には繋がらない、行為そのものが不道徳であると判断されるものとされた。一方Robertは8年間付き合っている彼女が浮気をしたと知り、怒って彼女の猫を殴った。このRobertについてのシナリオはRobertが道徳的に悪い性格を持っていると判断されるものとされた。結果、Johnの行為は怒りと関係しており、Robertの行為は嫌悪と関係していた。
 研究2では、研究1とは異なるシナリオが使用された。シナリオの中の行為者に危害を加える意図があったかどうか、行為者のしたことが相手に害を与えたかどうかが操作され、参加者はシナリオを読んで嫌悪感と怒りをどの程度感じたかを評価した。その結果、行為者が相手を傷つけたいと思っていたことは嫌悪感と関係しており、行為者のしたことが相手に害を与えたかどうかは怒りと関係していることが示された。
 以上の結果から、道徳的嫌悪は相手を傷つけたいという願望を持っているといったような道徳的に悪い性格の現れに対する反応として起こることが明らかとなった。これまで道徳的嫌悪は不潔であることに対して生じるとされてきたが、不潔に対してのみ起こるのではないようだ。

態度の主観的な両価性における非対称性

2017/04/13 19:12 に Saki Nakamura が投稿   [ 2017/04/13 19:21 に更新しました ]

Snyder, A. I., & Tormala, Z. L. (2017). Valence asymmetries in attitude ambivalence. Journal of personality and social psychology, 112(4), 555-557.

たとえば,チョコレートはおいしいけどカロリーが高いというように,人はある対象にポジティブな反応とネガティブな反応の両方を持っている。このようにある態度対象に対して2つの反応が同時に存在する時には葛藤が生じ,この主観的な経験のことを主観的両価性という。

既存の態度の両価性のモデルでは,葛藤の数(ポジとネガがダブっている数)が増えるほど,主観的な両価性が高まるという(Figure 2のA)。しかし面白いことに,これらのモデルの圧倒的多数が,この関係はバレンスと独立していると仮定している。本研究は3つの研究で,この効果が2種類のバレンスの非対称性(positivity offsetとnegativity bias)に大きく影響されることを示す。positivity offsetはデフォルト状態ではポジティブな評価をしやすいというものである。本研究では,ある態度対象にネガティブ反応のみを持つ時には,positivity offsetによるデフォルトのポジティブな反応傾向との葛藤によって,主観的な両価性が生じると予測した(Figure 2のC)。一方で,negativity biasは,一般的にネガティブ情報のほうがポジティブ情報よりも影響が大きいというものである。葛藤状態(つまり,ある対象にポジティブとネガティブの両方の反応を持つ場合)では,negativity biasによってネガティブ反応の影響が大きくなるので,ポジティブ反応がネガティブ反応よりも多いときに,主観的な両価性が大きくなると予測した(Figure 2のB)。

本研究の結果はこれらの予測を支持した。既存の両価性の理論とは異なり,ポジティブ反応とネガティブ反応の両方が存在する時には,ポジティブとネガティブの反応の数が同じ時に主観的両価性が最大にならなかった。むしろ,主観的な両価性のピークは,ポジティブな反応の数がネガティブな反応の数に勝るときであった。

狡猾なごまかし:嘘ではない言葉を用いて他者を誤解させることのリスクと報酬

2017/04/13 3:21 に 浦勇希 が投稿

Todd Rogers, Richard Zeckhauser, Francesca Gino, and Michael I. Norton(2017). Artful Paltering: The Risks and Rewards ofUsing Truthful Statement to Mislead Others Journal of Personality and Social Psychology, 112(3), 456-473. DOI: 10.1037/pspi0000081

「ごまかし」は本当の言葉(嘘ではないこと、というニュアンスで捉えた方が分かりやすいかもしれません)を用いて印象をまぎらわせるのに有効である。

2つの先駆的な研究と、6つの実験から、「ごまかし」は騙すこととは違うことがわかった。

ごまかしは省略(適切な情報の受動的な省略)とコミッション(間違った言葉を積極的に使うこと)による嘘とは異なる。

我々はごまかしが一般的に交渉の場面で使われ、多くの交渉人は嘘をつくことよりもごまかしを好むことを発見した。

しかし、ごまかしでは、言った側の人間は本当のことを言ったという正直さに焦点が当たるが、言われた側の人間は誤解をさせられた印象の操作に焦点が当たる、というそれぞれの利己的な解釈によって諍いを引き起こす。

我々は、嫌な直接的な質問をされた時に言うごまかしを受けた人が、特に非倫理的だと感じることを発見した。

また、我々はごまかしが普通に使われるものであること、しかしリスクを伴うこと、また交渉の方策に使われることを示した。

真実(ここでの真実はそのままの意味です)をいう交渉人と比べて、ごまかしを使う交渉人は付加価値を主張する可能性が高いが、彼らの評判に行き詰まりや不都合が起きる可能性が上がる。

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