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制御焦点理論と自己決定理論をつなげよう。

に Megumi Tabuchi が投稿

Vaughn, L. A. (2017) Foundational Tests of the Need-Support Model. A Framework forBridging Regulatory Focus Theory and Self-Determination Theory. Personality and Social Psychology Bulletin, 43(3), 313-328.

本研究では,制御焦点が,自己決定理論(有能さ・自立性・関連性)で提唱されているNeed-Support (心理的欲求の充足,に近い意味)に影響を与える,というneed-support modelを提案し,Need-Supportが促進焦点と予防焦点の経験の主観的なラベリングに影響することを示した。仮説を提唱するために,3つの研究を行った。

【研究1:促進の方がNeed-Supportが高い】

促進焦点的な経験と,予防焦点的な経験を想起させ,それぞれの経験についてNeed-Supportの評価をさせたところ,予防焦点の経験よりも促進焦点の経験のほうがNeed-Supportの得点が高かった。

【研究2Need-Supportが高い経験は促進的】

「やりたいことを自分で決めることができて(自立性),自分は能力があって(有能さ),ひとりぼっちでもなかった(関係性)」ときの経験を思い出して書くNeed-Support高群の方が,Need-Support低群よりも,経験の評価がより促進的だった。

【研究3:制御焦点傾向をプライミングで】

制御焦点傾向をプライミングで操作したところ,促進的になっている人の方が,よりNeed-Supportが高かった。

 

Regulatory Focus Theory Self-Determination Theoryをつなげたい,という発想自体は分かるが,「つなげた上でより包括的なモデルを作る」というのはなかなかに難しい,という感想。

オキシトシンが嘘を正当化する ―「愛情ホルモン」が競争的状況での同調行為に与える影響―

に Sayo Kaneuchi が投稿   [ に更新しました ]

Aydogan, G., Jobst, A., D’Ardenne, K., Muller, N., & Kocher, M. G. (2017). TheDetrimental Effects of Oxytocin-Induced Conformity on Dishonesty in Competition. Psychological Science.



【研究の背景】
例えば、オキシトシンを投与された群はグループ内の他者により同調的になったという研究がある。トロッコ問題で、外集団メンバーよりも内集団メンバーを優先することを示した研究もある。オキシトシンの影響下にあると、外集団よりも内集団と協力しようとする傾向が強くなる。内集団の利益のために嘘をつくことさえある。これらの研究は、オキシトシンが周囲に同調するか否かの調節に関わっていることを示している。
非倫理的な行動は、内在的な動機づけだけでなく、競争によってもたらされることもある(例;贈収賄)。さらには競争が、非倫理的な行為を正当化する理由として使われる。
 これまでの研究で、非倫理的行為が競争下で使われるようになると、内集団同調が生じることが分かっている。つまり、全ての構成員が状況を受け入れ、内集団メンバー全員が非倫理的方法を取ることを期待するようになる。非倫理的行動が、新たな社会規範となるということである。この規範は内集団同調を持続させ、促進する神経生物学的な回路を発達させると考えられる。同調嗜好を外的に操作すれば、競争下で非倫理的行動を選ぶか否かにも変化が生じるはず。


そこで、競争的な状況下における非倫理的行為への同調行動と、グループ内の協力に関わるオキシトシンを結びつける発想を得た。

【仮説と予測】
 仲間が同じ非倫理的行動をしているという信念があれば、オキシトシンは競合的な環境下で非倫理的な行為を増加させる。この信念が非競合的な環境下で存在していなければ、オキシトシンは非倫理的行動に何ら影響を与えない。脳内のオキシトシン分泌量が外因的に変化した場合、広く受け入れられている規範(例;誠実性)を競争的な状況下で破ったり、歪めたりする傾向を調節するのかどうかについて検討した。


【方法】

 120人の参加者を2群にわけ、一方にはスプレーでオキシトシンを吸入させた。もう一方はプラセボ群だった。
 60分後、コイントス課題を行った。これは参加者がコインを投げ、その結果に応じて報酬がもらえるものだった。具体的には、裏が1回出れば1.66€の報酬になった。参加者は一人でコインを投げた。さらに、コイントスの結果は参加者の自己申告だったので、嘘を吐いてもその場では分からなかった。そこで、分析においては、報告された結果と数学的確率を比較することで、誠実性の評定をした。
 参加者は、さらに次のような群に分けられた。

・競争群…参加者の報酬は、自分のコイントスの結果およびランダムに組み合わされたペアの結果で決まった。つまり、相手よりも多くの回数裏を出さなければ、報酬はもらえなかった。
  ・非競争群…他の参加者のコイントスの結果は知らされなかった。

  ・戦略性…自分の結果(何回裏が出るか)を予想させ、予想が当たればボーナス報酬を渡すと教示した。参加者は嘘の報告をすることで結果を『予想通り』のものにコントロールすることができた。
  ・非戦略性…ボーナス報酬は設定しなかった。


 なお、オキシトシン投与直後と、、コイントス課題直後に情動状態を測定した。さらに、他の参加者がコイントスの結果についてどのくらい嘘の報告をしていると思うかを尋ねた。


 

【結果】

 結果、参加者が報告した「裏の数」は統計的数値を大きく外れていた。オキシトシン投与の有無に関らず、参加者は裏が出た回数を多めに報告していた。ただし、プラセボ群は競争的な状況にほとんど影響されなかったが、投与群は影響された。
 すなわち、オキシトシンを摂取すると、競争下で社会規範を破る傾向が強くなった。
 また、オキシトシンを投与されると、ポジティブな自己イメージを保とうとする傾向もなくなることが分かった。このことは、プラセボ群には「中途半端な嘘つき」がいたのに対しオキシトシン投与群にはいなかった、という実験結果によって示されている。
 加えて、他の参加者の行動の予測についてもオキシトシンの効果が見られた。競争的な条件下ではオキシトシンを投与された参加者の方が嘘つきが多いと予想した。
 この結果から、非同調指数を求めた。これは、参加者が実際についた「嘘」の割合から参加者が予測した他の参加者の「嘘」の割合を引いたもので、差が小さいほど他者の行動(正確には、参加者が予想した他者の行動)に同調していたことを示す。これについては、
 戦略的状況下で、オキシトシン投与群の方が非同調指数が低かった。非戦略的状況下では差がなかった。
 さらに、恥という情動は、コイントス課題の前後で特に非競争群において変化が見られた。

【結論】
 オキシトシンを投与されると、内集団メンバーに同調的になり、非倫理的行動への心理コストが低減し、不誠実な行動をとるようになる。




サディズムと反社会的罰

に Sayo Kaneuchi が投稿

Pfattheicher, S., Keller, J., & Knezevic, G. (2017). Sadism, the Intuitive System, and Antisocial Punishment in the Public GoodsGame. Personality and Social Psychology Bulletin, 43(3), 337-346.


サディズムとは、他者を威圧し、支配することに悦びを感じる傾向のことで、反社会的な志向の1つである。また、ある集団内で、集団の構成員が互いに罰を与えることのできる状況にあるとき、集団に非協力的だった人に対してだけでなく、協力的だった人にも罰が与えられることがある。これをが反社会的罰と呼ぶ。反社会的罰が直観的な行動なのか、それとも熟慮的行動なのかという問題は、長らく考察されてきた。この論文ではその問いに対して(部分的ではあるが)1つの答えが示されている。

 

【研究の目的】

 直観的システム、サディスティックな志向、反社会的罰の間の関連を検証する。

 

【実験1】

 まず、参加者の普段の性質を査定するため、サディズム、サイコパシー、ナルシシズム、マキャヴェリアニズムの、4種類の反社会的傾向を測定。次に公共財ゲームの説明をして、3条件のいずれかに振り分けた。


 ※公共財ゲームとは…まず、4人1組のグループを作り、1人につき決まった額の財産を渡される。次にプレイヤーは、それぞれでその財産を自分の取り分にする分と、公共財に入れる分を決める。その公共財は特定の倍率で増やされたのち、報酬として還ってくる。増えた財産をグループの人数(4人)で割り、一人一人の取り分とする。

今回、このゲームを1回行うごとに、参加者は自分のグループのメンバーがそれぞれいくらずつ公共財に投資したかを知ることができた。さらに、グループのメンバー(特に、公共財への投資額が少なかった『非協力的な』メンバー)に対して、報酬を減額する罰を与えることができると教示された。

その上で、次のような群分けを行った。


 ・intuition群

  「罰に関しては直感で判断してください。強い感情に従ってください。」と教示する。

 ・reflection条件

  「罰に関してはよく考えて判断してください。利益と損失を熟考してください。」と教示する。

 ・統制条件

  思考スタイルの教示なし。


その結果、参加者のサディズム傾向が強い時だけ群の効果が見られた。すなわち、直観システムが活性化されたとき、サディズム傾向の強い人はより頻繁に罰を与えていた。

 

【実験2】

 直観システムが反社会的罰の土台となっているのなら、それを阻害すれば、サディスティックな傾向のある参加者の反社会的罰は減るはずだ、という予測を検証するために行われた。 

 基本的な手続きは【実験1】と同様で、4種類の反社会的傾向を測定した後、公共財ゲームを行わせた。ただし、群の設定が異なっていた。


・直観システム阻害群

  罰に関する説明を受けた後、2分間ディストラクション課題をしてから、罰を決める。

 ・統制群

  他の3人の配分を知った後、すぐに罰を決める。


その結果、サディスティックな傾向の強い参加者は、直観システムを阻害されると罰の回数が少なくなった。この効果は反社会的罰についてのみ生じ、非協力的だった人に対する罰については生じなかった。また、サディズム以外の反社会的傾向は関連していなかった。

 

【考察】

 社会的ジレンマにおける協力的行動や、非協力的行動が、直観的なのか熟慮的なのかはずっと議論されてきた。今回の実験では、一つの答えを呈示した。つまり、サディスティックな傾向のある人の反社会的罰は、直観システムに基づいている。

 一方で、直観システムを促進すると、向社会的行動が増える(阻害すると減る)ことを示した研究もある。この相反する結果を説明するのは社会的ヒューリスティクス仮説(SHH)であるSHHは、人が新しい状況や異常な状況において、その人の中に深く根付いている知識や経験を直観的に用いていることを前提としている。つまり、反社会的傾向を深いところで持っている人は、直観的にその傾向を、新しい状況で適用する。特に、SHHは、直観システムそれ自体が向社会的行動を促進するわけではないと予測している。個人のデフォルトのモードを促進するにすぎない。



態度の確実性の先行要因としての感情の復号化とその処理の流暢性

に Saki Nakamura が投稿   [ に更新しました ]

Petrocelli, J. V., & Whitmire, M. B. (2017). Emotion Decoding and Incidental Processing Fluency as Antecedents of Attitude Certainty. Personality and Social Psychology Bulletin, 0146167217700606.

先行研究によると,態度の確実性(attitude certainty)は,説得に対する態度変容量に影響すると説明される。本研究では,態度の確実性と態度変容の先行要因として,態度形成中における表情からの情動の読み取りとその処理の流暢性について検討した。

【実験1】
”怒り””悲しみ””幸福”の3種類表情の読み取りの影響に注目した。手続きとしては,表情刺激とともに,「卒業試験の義務化」について説明され,それに対する態度とその確実性を尋ねた。そのあと,卒業試験の義務化への同意を促すような説得的メッセージを提示し,その後の態度も測定した。
その結果,態度形成時に”怒り”もしくは”幸福”と復号化した参加者は,”悲しみ”と復号化した参加者よりも,態度の確実性が高く,説得に対して抵抗を示した。

【実験2】
”怒り”と”悲しみ”の2種類の表情刺激を用いて,表情刺激に対する視線の方向を操作して実験を行った。これは”怒り”は直視するときのほうが復号化しやすく,”悲しみ”は視線がそれている方が復号化しやすいので,この組み合わせの時に態度の確実性が高まると予測した。
予測通り,診断性(処理の流暢性が高いかどうかの診断性)が高い時には,直視の”怒り”と逸らし目の”悲しみ”の時に確実性が高まっていた。確実性の高さが態度変容に影響していた。

【実験3】
実験3では,無関連な刺激の処理における流暢性が態度の確実性に影響することが示され,説得への抵抗にも影響していた。

助けるなら近い人

に Asako Miura が投稿

一定の重力下において,10フィートの距離から投げつけられた雪玉は,50フィートの距離から投げつけられた雪玉よりも痛い.つまりより大きなインパクトを持つ.われわれは,寄付行動をこの雪玉と同じようなものだと考え,近い対象へのそれが(遠い対象よりも)強いインパクトを持つと期待されることを示す.つまり,与えうるインパクト(が大きい)ことが向社会的行動を強く動機づける要因であるがゆえに,社会的距離とは独立に,物理的に「近い」(vs遠い)ものを援助しようとするということである.実験室実験とフィールド実験,募金キャンペーンに関する二次データの分析を含む6つの研究によって,この予測は支持された.特に,研究1では,この予測が人々の比喩的思考(metaphorical thinking)に根ざしていることを示した.同窓生が母校に寄付をするという文脈において,実際の(研究2),あるいは知覚された(研究3)距離が短いと寄付が増えることが示された.研究4ではこれらの知見が,距離の知覚のより保守的な操作をしても見られることを確認し,研究5ではインパクトのへの期待の調整mediating効果を示し,研究6ではインパクトを与えることに動機的な注目を向けさせることがこの効果を仲介moderateすることを示した.

Study 1では,以下のような図を示して「遠いところからのものはインパクトが弱い」という考え方を導入した上で,アメリカから近い/遠いとした国(実際はほぼ等距離のグアテマラとホンジュラス)への寄付のインパクトの強さを見積もらせると,遠い方への見積もりが弱くなることを示した.垂直方向の図を示した場合は同様の効果が見られなかった.
Study 2では,アメリカの大学の同窓生からの寄付状況を調べ,近距離の人の方がよく寄付していることを確認した.Study 3では実際に大学の同窓会名簿データベースを使って寄付を募り,その際の依頼文で遠/近距離ぽさを操作.よくあることではあるけれど,寄付した人がほとんどいなかったので正直涙目だったが,一応仮説を支持する結果を得た.

他者の感情制御を助けることは自身の感情を制御し、抑うつ傾向を減少させる。

2017/05/23 22:45 に 浦勇希 が投稿

Bruce, P., Dore, Robert, R., Morris, Daisy, A., Burr, Rosalind, W., Picard, and Kevin, N., Ochsner (2017) Helping Others Regulate Emotion Predicts Increased Regulation of One’s Own Emotions and Decreased Symptoms of Depression. Personality and Social Psychology Bulletin, Vol. 43(5) 729–739

 多くの調査では人が自分の感情をどのようにして管理しているのかについて考慮しているが、他人の感情を制御することの感情面での利点についてはほとんど知られていない。我々はこのトピックについて、感情の社会的規制のトレーニングと練習をオンラインプラットフォームで行ってもらう3週間の研究で調査した。
 他人を助けるような実験協力者(対になるのは自分の問題を他人に共有し、助けるように求めるような人)は日々の生活の中で再評価*を用いることが増加することによって、抑うつ傾向の大きな減少が見られた。
 *)状況や刺激、自身の心的状態に対する解釈を変化させることによって感情の強度や種類を変化させること。例えば、辛くしんどいと思えるような状況に置かれているとき、「これを乗り越えることは自分の成長につながることだ」と考え直すことなどが再評価にあたる。
 さらに、他者に焦点を当てた言葉(二人称代名詞)を用いた社会的規制のメッセージは、メッセージの受け取り手からの感謝の気持ちを引き出す可能性が高いこと、メッセージの発信者にとって時間の経過とともに再評価の使用が増加すること、またこういった他者視点取得は社会的規制の練習における利点を強化すると提案している。
 これらの発見は感情制御における社会志向性のトレーニングの潜在的なメカニズムを明らかにし、そして他人の制御を助けることで私たちは自身の制御能力と感情的なウェルビーイングが強化されるだろうと提案している。

イデオロギー的偏見はそれぞれの次元に対応するように生じる

2017/05/18 19:20 に Saki Nakamura が投稿   [ 2017/05/18 19:52 に更新しました ]

Crawford, J. T., Brandt, M. J., Inbar, Y., Chambers, J. R., & Motyl, M. (2017). Social and economic ideologies differentially predict prejudice across the political spectrum, but social issues are most divisive. Journal of personality and social psychology, 112, 383-412.

革新と保守は,ともにイデオロギー的に似ていない他者や集団に対して偏見を表す (Brandt et al., 2014)。イデオロギー的偏見の先行研究は,社会的イデオロギーや経済的イデオロギーといったように,イデオロギーが多次元であることが加味されていなかった。5つの研究 ( total N=4912 ) では,イデオロギー的偏見について多次元的に説明を試みた3つの競合する仮説(Figure 1参照)について検討した。



A: 次元特有対称仮説(dimension-specific symmetry hypothesis)・・・社会的イデオロギーは(経済的イデオロギーとの対立とは関係なしに)社会的イデオロギーが対立するターゲットに対して,経済的イデオロギーは(社会的イデオロギーとの対立とは関係なしに)経済的イデオロギーが対立するターゲットに対して偏見を持つ。
B: 社会的主要仮説(social primacy hypothesis)・・・次元特有対称仮説と同じく,社会と経済の次元のぞれぞれが対応するように,対立するターゲットに対して偏見を示すが,社会的イデオロギーのほうが偏見が大きい。
C: 社会的次元非対称性仮説(social-specific asymmetry hypothesis)・・・経済的次元には特有の仮説はなく,社会的保守は社会的革新よりも偏見を強く示す。

多様なターゲット集団,多様な偏見の測定(例,感情温度,世界感葛藤,IAT,独裁者ゲーム),そして多様な社会的イデオロギーと経済的イデオロギーの測定を用いて,本研究では比較的一貫して次元特有対称仮説と社会優先仮説を支持する結果が見られた(Table 6)。しかし,社会的特有非対称性仮説は支持されなかった。これらの結果から,偏見は次元特有であるが,社会的次元のほうが経済的次元よりも政治的な葛藤をより引き起こすことが示唆された。



ねむみは判決を厳しくさせる

2017/05/18 5:41 に Asako Miura が投稿   [ 2017/05/24 1:14 に更新しました ]

Cho, K., Barnes, C. M., & Guanara, C. L. (2017). Sleepy Punishers Are Harsh Punishers: Daylight Saving Time and Legal Sentences. Psychological science, 28(2), 242-247.

犯罪者に対する罰の程度をどうするかは,社会的秩序と協力を維持するためにきわめて重要性が高い事案である.それにも関わらず,犯罪者への罰の量はその犯罪の内容以外の諸要因に影響される.本研究では,裁判官の睡眠剥奪が刑の過酷さを増すことを主張する.そのために,サマータイム移行(時計の針を1時間進める)時に自然に擬似的な睡眠剥奪の操作ができることを利用して,米国連邦裁判所の判決のアーカイブデータを分析した.結果は我々の仮説「睡眠剥奪状態の裁判官はより長期間の懲役刑を科す」を支持していた.ちなみに秋に「時計の針を1時間戻す」わけだが,その際は前後の曜日と刑の長さに違いはなかった.

kmymさん経由の著者からの情報によれば,「調べてるのは判決言い渡しの日じゃなくて、判決の決定の日だよ(とはいえ多くは同じ日だけど)」とのこと.サマータイムという制度を見事に利用し,なおかつ司法等公的機関の記録についてオープンデータ化きわまるアメリカという強みも活かした三浦の好きなタイプの論文.しかしこの知見が社会的に応用されるとなれば「裁判官はサマータイム移行前日は早寝すること」という通達がなされることになるから,もう(当時と比べてまともになった,という後続研究を除くと)この研究はできなくなるのかも… 日本ではサマータイムはないので「自然に擬似的な睡眠剥奪」操作ができるとしたらオリンピックやW杯などが日本とは昼夜逆転の国で開催されて,日本が重要な試合に勝つ…!イベントくらいだろうか.

「ブーバ・キキ効果(音と形のマッピング)」は知覚の早い段階から起こっている。

2017/05/18 1:22 に Megumi Tabuchi が投稿   [ 2017/05/18 1:23 に更新しました ]

Hung, S. M., Styles, S. J., & Hsieh, P. J. (2017). Can a Word SoundLike a Shape Before You Have Seen It? Sound-Shape Mapping Prior to ConsciousAwareness. Psychological Science, 28(3) 263275.

 ブーバ・キキ効果については,異なる文化圏や発達の初期段階で認められる,という研究は多くあるが,それが知覚プロセスのどの段階で起こっているのかについては明らかにされていなかった。ここでは,視覚刺激に気づく前の段階で,すでに音と形のマッピングが起こっていることを示した。

 実験1,2では,連続フラッシュ抑制を用いた実験を行った。その結果,マッピングとして一致している刺激(例:とげとげした形の中に「キキ」という文字が入っている)の方が,不一致刺激よりも気づきが早いという結果になった(実験1)。また,馴染みのない文字(例えば,西アフリカのヴァイ族が使っている文字)と聴覚的な言葉の形をペアにする課題をさせた場合でも同様の結果となり,ブーバ・キキ効果は視覚的な特徴ではなく,文字の音韻によって引き起こされるものである,ということが分かった(実験2)(Figure3)。さらに,実験3では視覚マスキングパラダイムを用いた。ターゲット刺激が出てくる150ミリ秒前,同時,150ミリ秒後に「音」刺激を提示し,一致刺激と不一致刺激について課題を行ったところ,聴覚的な「音」刺激が150ミリ秒前に提示された後に,それと一致した形の刺激が提示された場合が,最も視覚閾値が低いことが明らかとなった。

 音と形のマッピングは,視覚刺激を意識する前から自動的に起こっており,感覚的に一致した音を先に与えていると,後から提示される視覚刺激が現れる前から,それに気づきやすい状態になっていることが分かった。


 ちなみに,サンリオの「キキララ」は,とげとげした星(アクセル)を背負っているのが弟のキキ(性格:やんちゃ),星ステッキ(ハンドル)を持っているのが姉のララ(性格;泣き虫)で,地球に修行に来ているという。


リスク状況下における意思決定に年齢差があるのはなぜか?

2017/05/15 2:14 に Sayo Kaneuchi が投稿

Thorsten Pachur, Rui Mata, & Ralph Hertwig. (2017) Who Dares, Who Errs? Disentangling Cognitive and Motivational Roots of Age Differences in Decisions Under Risk, Psychological Science


【要旨】
リスクのある状況下での意思決定における年齢差を形成する要因について、認知的要因と動機づけ的要因を別々に検討した。

その結果、年配の人は若者に比べて楽観的で、ポジティブな面(利益)に焦点を置いた意思決定をすることが分かった。年配の人の意思決定は、若者に比べて質が低く、また認知的能力も低いと分かった。


【研究の流れ】 
1830歳の若者60人と、 6388歳の高齢者62人を対象に、2種類の富くじを次々に提示して、どちらを引くか選択させた。富くじは、リスクの高いものほど魅力的に(=報酬が高く)なっていた。
また、くじの選択課題の後に、認知能力、結晶性知能、単純計算能力を測定する課題も行った。
その結果、意思決定の質と、リスク嫌悪の2点において、若者と高齢者の間に差異があった。まず、意思決定の質は高齢者の方が若者よりも低かった。すなわち、高齢者は若者に比べてきた一の高いくじを選ぶことが少なかった。さらに、リスク嫌悪も、高齢者の方が若者よりも低かった。

これらの年齢差は、高齢者の方が認知的能力が低いこと、およびネガティブな感情が低いことに起因している。認知的能力は意思決定の質と、ネガティブ感情はリスク嫌悪と、それぞれ対応している。これまでの研究では、「安全な選択肢」と「リスクを孕んだ選択肢」を提示してどちらか選ばせるものがほとんどだった。この場合、高齢者は安全な方を選択する傾向があった。しかし、本研究で提示されたのはどちらもそれなりにリスクを孕む選択肢であり、より安全な方を選ぶには高い認知的処理能力が必要とされた。相対的にその能力が若者より低い高齢者は、安易に低リスクな方を選ぶことができなくなり、意思決定の質やリスク嫌悪が低くなったと考えられる。また、高齢者が損失家回避の傾向を示さなかったことも、多くの先行研究と異なる点である。

リスクが関わる行動や知覚は、例えば違法なドラッグを購入したり、バンジージャンプをしたりといった様々な場面に生じ得る。今後はそれらの行動における年齢差が、高齢者の自覚なきリスクテイキングにどのように影響するかを研究してきたい。

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