高学歴ほど学歴で差別する

2018/03/21 20:57 に Saki Nakamura が投稿   [ 2018/03/28 1:15 に更新しました ]
Kuppens, T., Spears, R., Manstead, A. S., Spruyt, B., & Easterbrook, M. J. (2017 in press). Educationism and the irony of meritocracy: Negative attitudes of higher educated people towards the less educated. Journal of Experimental Social Psychology.

これまでに社会心理学では、民族・ジェンダー・国家などさまざまな社会的集団の研究が行われてきました。意外なことに、教育は人々の生活や社会的態度を予測することが言われているにも関わらず、学歴をベースにした社会的集団についてはあまり研究がなされていません。そこで本研究では、なぜ、そしてどのようにして、学歴をベースにした集団バイアスが生じるのかについて検討しました。その結果、教育水準が高い人ほど、寛容で、道徳的な教養があるという一般的な見方と裏腹に、教育水準が高い人ほど、学歴ベースの集団間バイアスを見せることが示されました。

具体的には、以下のような実験をしました。
  • 研究1では大学生を参加対象として、高学歴や低学歴に対する感情温度を測定しました。その結果、高学歴に対する感情温度と比較して、低学歴に対する感情温度が低いことが示されました。つまり、学歴ベースの集団間バイアスの存在が確認されました。研究2では、さまざまな教育水準の人を対象に、研究1と同様に、高学歴・低学歴に対する感情温度を測定しました。その結果、教育水準が高い人ほど、学歴ベースの集団バイアスが大きくなることが示されました。

  • 研究3や4では、学歴の情報を含む人物プロフィールを用いて評価をしました。その結果、教育水準が高く、なおかつ、プロフィールの人物との同一視の程度が強い人において、学歴ベースの集団バイアスが確認されました。しかし、教育水準が低い人では、同一視の程度に関係なく、学歴ベースの集団間バイアスが示されませんでした。これは、教育水準が高い人ほど寛容であるという、moral enlightenment 仮説とは一致せず、自分と同じカテゴリの人への同一視が高まるほど葛藤が大きくなり、その結果、内外集団によるバイアスが強くなるという、conflict-based approachと一致する結果でした。

  • 研究5-7では、高学歴・低学歴に対する好ましさのみならず、そうした集団に対する属性評価や感情も測定しました。その結果、教育水準が高い人は、学歴は努力によって得たものだと考える人が多く(研究5)、低学歴に対して好ましくない評価をする背景に、(貧困者や労働者階級の人に対するネガティブな評価と比較して)、努力を怠ったその人自身の責任だという考えが媒介することがわかりました。

学歴ベースの集団バイアスに注目するという本研究の本筋からは離れますが、程度興味深いことに、民族ベースのバイアスに関しては、教育水準が高い人では見られず、低い人において見られました(研究3、4)。著者らはこれに対して、教育水準が高い人ほど偏見に対して寛容ではある(あるいは、教育水準が低い人ほど偏見が大きい)という古典的な考えは、部分的なものである可能性が高いと、述べていました。
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