表情変化の共有がアンサンブル知覚に与える影響

2017/12/19 0:57 に Risako Shirai が投稿
Elias, E., Dyer, M., & Sweeny, T. D. (2017). Ensemble Perception of Dynamic Emotional Groups. Psychological Science, 28(2), 193–203. doi: 10.1177/0956797616678188

私たちは視覚的に入力された物体の全体の特徴をごく短い時間で正確に知覚できると言われている。これはアンサンブルコーディングとして知られている。私たちはアンサンブルコーディングにより,「笑っている聴衆者たちが平均してどれほど笑っているのか?」を抽出することができる。本研究は,動作の共有(グループメンバーの息があっているか否か)が集団の平均的な情動の抽出に影響を与える可能性を検討した。

実験 1

画面上に顔の集合が呈示され (Fig. 2),顔の表情が次第に変化するように設定された (Fig. 1)。このとき,表情が同期して変化する同期条件,同期して変化しない非同期条件が設定されていた。実験の参加者の課題は,顔の集合が呈示された後,集合全体の顔表情の平均強度を答えることであった。実験の結果,顔の集合の表情変化が同期する場合の方が,非同期条件や顔が一つしか呈示されなかった場合(シングルフェイス条件)よりも表情の平均強度の正解率が高いことがわかった。

実験 2

顔の全体的な情報からアンサンブル知覚を獲得しているかを明らかにするため,顔刺激を倒立状態にして同様の実験を実施した。その結果,実験1と同様に顔の集合の表情変化が同期する場合の方が,非同期条件よりも表情の平均強度の正解率が高いことがわかった。また,実験2は実験1と比較して表情の平均強度に対する感度が大きかった。感度が大きくなった原因としては,顔を倒立状態にしたことで顔の全体処理が遅くなったことが挙げられる。これらの結果は,倒立状態にしても最終的には顔の全体処理が行われていたことを意味している。全体処理が行われた上で実験1と同じパタンが得られたことから,顔の全体的な情報から集団の平均的な情動の抽出が行われていたと考えられる。

 実験 3

実験1, 2ともに同期条件は非同期条件よりも集団の平均的な情動を正確に回答できることを示した。しかし,同期条件では顔のそれぞれの表情の変動が同じように変化していく一方で,非同期条件では顔の表情変動の範囲が大きい傾向にあった。顔の表情変化の均質性が統制された状態でもアンサンブルコーディングが動作を共有した集団に感度が高いかどうかを確かめた。その結果,同期条件は非同期条件・シングルフェイス条件よりも正確に回答していた。アンサンブルコーディングは行動の共有に感度が高いことを示し,単に変動の不均質性に依存した結果ではないことを示している。

 

グループの表情変化が同期していると,平均的な情動の抽出がよく出来ることがわかった。本研究で動作の共有として用いた顔の動きの共有は,ゲシュタルトの法則におけるグルーピング手がかりの一つである,同調の法則 (law of synchrony) と関連している可能性がある。ゲシュタルトの法則におけるグルーピングの手がかりがアンサンブルコーディングの処理のゲートとなっているのかもしれない。

à  今後の研究では,どのようなグルーピング手がかりがアンサンブル表象の効率性に影響を与えているのかを明らかにするべきである。


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