Gervais, W. M. et al. (2017). Global evidence of extreme intuitive moral prejudice against atheists. Nature Human Behaviour. プレレジストレーションはこちらをご覧下さい. 論文の内容は,Natureのサイエンスライティング記事をご覧下さい. これまでの「無神論者ダメ」研究がWEIRD(Western, educated, industrialized, rich, democratic ちなみにweirdは英語で「怪しげ」というニュアンス)データに偏っていたという反省にたち,宗教性も国家の安全さも様々な13カ国(オーストラリア,中国,チェコ,フィンランド,香港,インド,モーリシャス,オランダ,ニュージーランド,シンガポール,アラブ首長国連邦,イギリス,アメリカ)でデータを収集した研究.課題はいわゆる「リンダ問題」の誤答率(conjunction fallacy rates)を調べるもの. ※リンダ問題(Tversky & Kahneman,1983) 合接(論理積)の誤謬(英: conjunction fallacy)を調べる課題.合接の誤謬とは,一般的な状況よりも特殊な状況の方が蓋然性が高いと誤判断することで,形式的誤謬(formal fallacy)の一つ. リンダは31才、独身、率直な性格で、とても聡明である。大学では哲学を専攻した。学生時代には、差別や社会正義といった問題に深く関心を持ち、反核デモにも参加した。 どちらの可能性がより高いか? リンダは銀行窓口係である リンダは銀行窓口係で、フェミニスト運動に参加している この質問を受けた人の大多数が選択肢2を選んだ.しかし,2つの事象が同時に(in conjunction:合接して)発生する確率は,そのどちらか1つの事象が発生する確率よりも低いか等しいかのいずれかであるから,論理的には誤答である.しかし人は,目立つ特徴に引っ張られてその誤謬に気づきにくい.これを上手く利用して「インモラルな人物(ここでは「子どもの頃に動物を残虐にあつかい,長じて成人してからは暴力をさらにエスカレートさせて,5人のホームレスを殺してバラバラにするような大犯罪人になった,という男性」というヴィネット)は無神論者だ」という認識を間接的に測定した.具体的には, A この男性は教師である B この男性は教師で,1神を信じている/2神の存在を信じていない から選択を行わせた(B1とB2は被験者間要因).すると,フィンランドとNZを除くすべての国で,B1が選ばれる誤答率よりB2が選ばれる誤答率が高く,その傾向は本人の神の存在を信じている程度により上昇は見られるものの,本人が無神論者(信心0)であっても見られた. |
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