海外経験のダークサイド:いろんな国での経験が非道徳な行動を増やす!?

2017/04/20 2:29 に Saki Nakamura が投稿
Lu, J. G., Quoidbach, J., Gino, F., Chakroff, A., Maddux, W. W., & Galinsky, A. D. (2017). The dark side of going abroad: How broad foreign experiences increase immoral behavior. Journal of Personality and Social Psychology, 112(1), 1-16.

グローバル化が進むにつれて,海外経験はより身近で,価値のあるものとされている。これまでの研究では,海外に行くことは,創造性を高めたり,集団間バイアスを減らすなど,良い点ばかりが注目されていた。本研究では,これまでの研究とは反対に,海外経験のダークサイドに注目する。特に,海外経験によって非道徳な行動が増えることに焦点を絞る。本研究では,海外経験が豊富であること(特に,いろんな国に行ったことがあること)は,道徳的相対主義(道徳は絶対的なものというより,相対的なものであるというだという信念)を増加させ,非道徳的行動を引き起こすと予測し(Figure 1),以下の8つの実験でこの仮説について検討した。

研究1:縦断研究。留学中(半年後,1年後)のほうが,留学前よりもアナグラム課題での不正の数が増加。
研究2:実験。「いろんな国に行ったこと」を想像させた時のほうが,さいころの目の数を不正に報告し,たくさん謝金をもらおうとした。
研究3:実験。「いろんな国に行ったこと」を想像させる条件と「1つの国に長期滞在すること」を想像させる条件を設定。前者のほうが,正解をチラ見する数が多かった。
研究4:調査。住んだことのある国の数,海外に住んでいた年数,非道徳的意図の尺度(SINS)との関連を検討。住んだことのある国の数がSINSの得点に正の効果を持っていた。
研究5:実験。研究3と同様の方法で条件操作を行った。「いろんな国に行ったこと」を想像させた時のほうが,アナグラム課題での不正の数が多く,非道徳的行動の意図(Lammers, et al., 2010)の得点も高かった。
研究6:調査。住んだことのある国の数,海外に住んでいた年数,道徳的相対主義の関連を検討。住んだことのある国の数が道徳的相対主義の得点に正の効果を持っていた。
研究7:調査。住んだことのある国の数,海外に住んでいた年数,非道徳的行動意図,道徳的相対主義の関連を検討。住んだことのある国の数が非道徳的行動の意図に正の効果を持っていたが,道徳的相対主義を投入した時にはこの効果が消えた。
研究8:実験。研究3と同様の方法で条件操作を行った。媒介分析をおこなったところ,「いろんな国に行ったこと」を想像させる条件が非道徳的行動に及ぼす効果に,道徳的相対主義が媒介していた。

8つの研究を通して,海外経験が豊富であることは道徳的相対主義の増加によって非道徳的行動を増加させることが示され,この効果は海外経験の豊富さと非道徳的行動の関連は,第一言語の違いや,ライフステージの違い,非道徳行動の測定方法を変えても一貫して見られた。個人が多様な文化を経験することで,道徳の羅針盤がくるってしまうのかもしれない。
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