ヒーローは右上を見つめている

2017/08/05 5:25 に Sayo Kaneuchi が投稿   [ 2017/08/07 1:05 に更新しました ]
Frimer, J.A., & Sinclair, L. (2016). Moral Heroes Look Up and to the Right. Personality and Social Psychology Bulletin, 42, 400-410.

要約
道徳的英雄(moral hero)の肖像画は、観察者から見てある程度右上方向を見つめているように描かれることが多い。なぜならイデオロギー的考えを持った支持者はそうしたイメージを自分たちのリーダーとして選び、宣伝するからだ。実験①では、道徳的英雄(例;マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)の肖像画の視線の方向は、統計的予測よりも、そして著名人(例;エルヴィス・プレスリー)の肖像画よりも右上を向いている傾向があることが明らかになった。実験②と③では、参加者にイデオロギー的に動機づけられた支持者のロールプレイをしてもらい、主張を推進するようなリーダーのイメージを選ぶよう教示した。参加者は右上を向いているバージョンを優先して選んだ。実験④では、右上を向いたポーズが何故最も英雄的に見えるのかという問いに対して、「方向」を思いやり、誇り、未来志向といった個人的美徳に結び付ける概念的メタファーが一つの解答を与えることを見出した。支持者は彼らのリーダーを道徳的英雄として描くことによって社会的目標の前進に積極的役割を果たす。

概念メタファー理論
方向にはメタファー的意味があり、肖像画の人物の性格を推測させる。西洋文化圏では、垂直および地平線の広がりがメタファーとして深く浸透している。地平線方向は非対称的で、右側が優れており、左側は劣っている。この隠喩的バイアスは「righteous(正義)」やラテン語で左を意味する「sinister(不吉な)」といった単語、さらにはrightという語そのものが含んでいる「正しい」「適切な」といった意味によって証明されている。右は未来の隠喩でもある。人は過去から未来への時間の流れを表す時に、左から右へ矢印を描く。一方、垂直方向は、uplifting(高揚させる)やtop-notch(一流の)といった単語から、高い価値を与えられていることがわかる。ただし、ただ上を向いているだけだと、傲慢、冷酷、軽蔑といった概念も喚起する。

実験①
最も一般的と思われる道徳的英雄と有名人を選定(158人のアメリカ人に聞いた。結果、最も一般的な道徳的英雄はマーティン・ルーサー・キング・ジュニア (全候補の12.9%)、マザー・テレサ (6.7%)、 ネルソン・マンデラ (6.5%)、 マハトマ・ガンジー (5.2%)、 ジョン・F・ケネディ (4.1%)だった。最も一般的な有名人はブラッド・ピット (3.8%)、マリリン・モンロー(3.6%)、 エルビス・プレスリー(3.6%)、マイケル・ジャクソン(3.0%)、チャーリー・チャップリン(1.7%)だった。
Google画像検索で出てくる最初の120枚の画像について、3人の研究者が視線と頭の向きを判定。その結果、モラルヒーローは有名人よりも明らかに右上を向いていた。

実験②
モラルヒーローは支持者がそれを選び、宣伝するために右上を向く、という仮説を検証するため、次のような実験を行った。
方法…社会運動または仕事の応募にふさわしい写真を選ばせる。
結果…社会運動にふさわしい写真として多く選ばれたのは右上を向いているものだった

実験③
実験②と同様に写真を選ばせた。ただし、今回は被写体に野球帽をかぶらせ、画像の反転処理によって非対称性をなくした。また、以下の3種類の個人特性も測定した。
・過去未来矢印選択(過去から未来への時間経過を表す場合、矢印の向きとしてふさわしいのは↑↓←→のどれだと思うか)
・利き手
・政治的イデオロギー(右左)
結果…参加者の64%が右上向きの写真を選んだ。ただし、選択した矢印の向きによって、選ぶ写真の傾向も異なっていた。利き手とイデオロギーは効果がなかった。

実験④
見ている方向が本当に人を英雄的にするのかを検証するために、実験②で用いた画像で、英雄感と印象を評定させた。
結果…右を見つめていることと上を見つめていることは独立して被写体をより道徳的英雄らしく、温かく、有能で、未来志向かつ誇り高く見せていた。また、上を向いていることは被写体をより魅力的に見せた。


※大遅刻の投稿になってしまいました、すみません(´・ω・`)スョボン

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