幾何学図形の知覚にも文化差がある

2017/05/11 1:32 に 西村友佳 が投稿   [ 2017/05/11 1:33 に更新しました ]
Ueda, Y., Chen, L., Kopeck, J., Cramer, E. S., Rinsing, R. A., Meyer, D. E., Kitayama, S., Saiki, J. (2017). Cultural Differences in Visual Search for Geometric Figures. Cognitive Science, 1-25.

これまで基礎的な視知覚はどのような文化的背景を持っていても同じであると考えられてきました。しかし、近年
「視覚情報処理には文化差がない」という話も「視覚情報処理においても文化差がある」という話も報告されており、これまで過ごしてきた環境が視知覚に影響を与えているのかどうかは明らかになっていませんでした。著者たちはこれまでの研究で一致した結果が得られていなかったのは課題に思考や推論、動機づけが関係してしまっていたからではないかと考え、これらの要因をできる限り排除した課題を実施しました。

実験では幾何学的図形の探索課題を行なっています。幾何学的図形を使用した理由は幾何学的図形はどの文化の人にとっても同じもの(特別な意味を持たないもの)だからです。この研究では長い線分と短い線分、何もついていない円と線分つきの円、そして垂直線分と斜めの線分を使用しています。
探索課題では探索非対称性という現象が見られます。例えば、「長い線分(妨害刺激)の中から短い線分(ターゲット)を探す」ときと「短い線分の(妨害刺激)の中から長い線分(ターゲット)を探す」ときではターゲットの見つけやすさが違います。これを探索非対称性と呼びます。この研究では探索非対称性に文化差が見られるか検討しています。

北アメリカ生まれ北アメリカ育ちの人と日本生まれ日本育ちの人が実験に参加しました。その結果、北アメリカ人では「長い線分の(妨害刺激)の中から短い線分(ターゲット)を探す」「線分つきの円(妨害刺激)の中から何もついていない円(ターゲット)を探す」ときと比べて、「短い線分の(妨害刺激)の中から長い線分(ターゲット)を探す」「何もついていない円(妨害刺激)の中から線分つきの円(ターゲット)を探す」ときの方がターゲットを見つけるのが速いという結果が得られました。この傾向は日本人では見られませんでした。一方、日本人では「斜めの線分の(妨害刺激)の中から垂直の線分(ターゲット)を探す」ときと比べて、「垂直の(妨害刺激)の中から斜め線分(ターゲット)を探す」ときの方がターゲットを見つけるのが速いという結果が得られました。この傾向は北アメリカ人では見られませんでした。

今回の課題では注意の方略や思考・推論のプロセスを結果の説明とすることができません。したがって、以上の結果は文化とは関係なさそうな単純な刺激の知覚にも文化差が見られることを示唆しています。
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