金が欲しいんじゃない、ただ君の時間が欲しい―道徳的アイデンティティはいかに向社会的行動を促進するか―

2017/06/01 17:01 に Sayo Kaneuchi が投稿

Reed II, A., Kay, A., Finnel, S., Aquino, K., & Levy, E. (2016). I don’t want the money, I just want your time: How moral identityovercomes the aversion to giving time to prosocial causes. Journal of personality and social psychology, 110(3), 435.



4つの実験を行い、道徳的アイデンティティが他人のために自分の時間を使うことに対する嫌悪を低減させることを示した。実験の大まかな流れは、4つの研究で共通しており、具体的には次のようなものだった。


①道徳的アイデンティティの活性化(統制条件;非活性化)

②参加者が行う奉仕活動の説明(大学生への啓発活動、病院での活動など)

③参加者が実際に行う(ことを想定した)行動の選択(何もしない / 募金 / 時間を使う=活動を行う)


以上の実験から、道徳的アイデンティティが活性化されると、特に時間を使うことが参加者にとって心理的にコストであればあるほど、時間を使うことへの嫌悪は和らげられる。この発見を、時間対金銭の文脈と、アイデンティティの文脈から論じた。


これまでの研究では、道徳的アイデンティティについて以下のようなことが明らかにされてきた。まず、道徳的アイデンティティは人が自分の向社会的な行為を考えたときに、その人を向社会的な行動に駆り立てる。また、募金するというボランティア活動を促進する重要な因子であり、さらにはお金よりも時間をささげる意志を強めることも分かっている。これらのことは、犠牲を払わなければならないような奉仕行為が促進される上で、道徳的アイデンティティが重要な役割を担っていることを示唆している。今回の研究では、これらの先行研究の枠組みを拡張し、心理的コストが存在する状況においても道徳的アイデンティティが時間(を使うことへの)嫌悪を低減するかどうかを検討した。

アイデンティティ研究は、アイデンティティを土台にした動機に焦点を当てている。アイデンティティを活性化すれば、人間の思考、感情、そしてアイデンティティに沿った行動が動機づけられる。道徳的アイデンティティは、その名の通り、道徳的行動を促進するアイデンティティである。したがって、今回の研究でもそれが活性化された人は、活性化されていない人に比べて不快さの高い課題をより不快ではないと判断した。不快さの知覚が弱かったために、他者に時間をささげることに対してより積極的になったと考えられる。



Comments