パーソナルスペース内外での知覚と行動における幾何学的錯視の効果

2017/05/29 3:32 に 西村友佳 が投稿
Shim, J., & van der Kamp, J. (2017). The effects of opticalIllusions in perception and action in peripersonal and extrapersonal space. Perception, 0 (0), 1-9.

人の視覚は2つの機能的に異なる視覚経路で構成されているという仮説(
two visual system hypothesis: TVSH)がある。What経路と呼ばれる腹側経路は「知覚」としての視覚機能で、対象が何であるかを把握するための経路である。もう一つのWhere経路と呼ばれる背側経路は運動・行動のための視覚機能である。What経路(知覚)は文脈依存的であり、錯視の影響を受けるが、Where経路(行動)は錯視の影響を受けないとされている。

これまで、パーソナルスペース内(腕が届く範囲)での知覚と行動についてはかなり検討されてきた。しかし、人間の行動範囲はパーソナルスペース内だけはないにも関わらず、パーソナルスペース外での知覚と行動の関係についての研究がなされていない。そこで本研究では、パーソナルスペースを超える範囲にある対象で錯視は生じるのか、またパーソナルスペース外にある対象への錯視は、その対象に向けた行動にも影響するのかについて検討した。

実験では、ターゲットに向けてボールを投げるという行動に幾何学的錯視が影響するのか検討された。床にミュラー・リヤー図形が施され、実験参加者はその片端に立った。ターゲットは実験参加者が立っている位置の反対側にあった。パーソナルスペース内条件ではミュラー・リヤー図形の主線の長さが1 mほど、パーソナルスペース内条件ではミュラー・リヤー図形の主線の長さが4 mほどであった。また、ターゲットが視野の中心からどれほどずれているか、片眼で見るか両眼で見るか、そしてターゲットを見ながらボールを投げるかターゲットの位置を確認してから目を閉じてボールを投げるかという3つの条件で実施された。

実験の結果、どのような実施条件であっても、錯視量は知覚において大きいことが明らかとなった。また、主線の長さがパーソナルスペースの範囲外であった場合でも(主線の長さがパーソナルスペースの範囲内の場合ほどではないが)錯視量は知覚の方が大きいことが示された。このことから、TVSHはパーソナルスペース外にある対象の知覚と行動に対しても当てはまることが示された。
Comments