潜在的な道徳評価を測定する〜MPTモデルを用いた新しい方法〜

2017/04/27 2:40 に 西村友佳 が投稿   [ 2017/04/27 2:52 に更新しました ]

Cameron, C. D., Payne, B. K., Sinnott-Armstrong, W., Scheffer, J. A., & Inzlicht, M. (2017). Implicit moral evaluations: A multinomial modeling approach. Cognition, 158, 224-241.


潜在的な道徳評価(この研究では「悪いことに対する速くて意図的ではない評価を指す)は日々の道徳行動を支える中心的な役割を果たしている。しかし、潜在的な道徳評価の個人差を厳密に測定する方法を用いた研究は少ない。

本研究では5つの実験が行なわれた。実験では新しく「連続プライミング測定法(道徳カテゴリー分け課題)」(図1)が考案され、この課題の成績から、道徳判断にどのような認知過程が働いていたかを推定する「多項式モデル(MPTモデル)」(図2)が開発された。この方法は個人の潜在的な道徳性を測定することができると考えられる。




図1. 実験で実施したプライミング課題のイメージ。この図は本文を元に筆者が作成したものである。実験参加者は注視点の後で呈示された1つ目の単語(図中黄色の文字で書かれた単語:プライム刺激)は無視し、2つ目の単語(図中青色の文字で書かれた単語:ターゲット刺激)が道徳的に悪いことを意味する言葉かどうかを判断した。



図2. 道徳カテゴリー分け課題における多項式プロセスツリーモデル。このプロセスツリーは道徳カテゴリー分け課題でのターゲットに対する正確(+)・不正確()な道徳判断がどのような認知過程に基づいて現れたのかを示すモデルを表している。プライムとターゲットの組み合わせ(W:悪い、N:ニュートラル)は4種類ある。各パスの名前(IUB)はその過程が機能する確率を表している。


道徳判断課題のパフォーマンスを決定する要因は以下の3つだと考えられている。

  1. Intentional judgment (I):ターゲットが道徳的に悪いかを意図的に評価する。プライムが何であってもターゲットの道徳判断は正確である。
  2. Unintentional judgement (U):プライム刺激がターゲットの道徳判断に影響する。プライムが道徳違反を表すものだとターゲットの判断は「悪い」と判断する方に偏る。
  3. Response bias (B):プライムが何であっても「悪い」と判断する。


【実験1反応時間の制限が短いとIntentional(意図的) Judgementは減ったが、Unintentional(無意図的) Judgementは減らなかった。意図的な判断は十分な時間が設けられていないとできない。

【実験2-4道徳とは関係しないネガティブプライミングよりも、道徳違反プライミングに対してUnintentional Judgementが多かった。

【実験4Intentional Judgementは誤反応に関連した陰性電位の増加と関係していた。このプライミング課題は潜在的な判断を測定するのに妥当な方法であると考えられる。

【実験5反同性婚法案に投票した人は同性婚プライミングに対してより強くUnintentional Judgementをした。このプライミング課題で測定された潜在的な道徳判断は実際の道徳行動を予測することができると考えられる。

実験1-4ではプライミング課題をするのと同時に、個人のパーソナリティーも測定されていた。その結果、ネガティブプライミングではなく、道徳違反プライム刺激に対するUnintentional Judgementは精神病傾向と負の関連、道徳的アイデンティティ・罪悪感傾向と正の関連があった。

今後、さらなる理論的・実践的な応用が議論される。    
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