リスク状況下における意思決定に年齢差があるのはなぜか?

2017/05/15 2:14 に Sayo Kaneuchi が投稿

Thorsten Pachur, Rui Mata, & Ralph Hertwig. (2017) Who Dares, Who Errs? Disentangling Cognitive and Motivational Roots of Age Differences in Decisions Under Risk, Psychological Science


【要旨】
リスクのある状況下での意思決定における年齢差を形成する要因について、認知的要因と動機づけ的要因を別々に検討した。

その結果、年配の人は若者に比べて楽観的で、ポジティブな面(利益)に焦点を置いた意思決定をすることが分かった。年配の人の意思決定は、若者に比べて質が低く、また認知的能力も低いと分かった。


【研究の流れ】 
1830歳の若者60人と、 6388歳の高齢者62人を対象に、2種類の富くじを次々に提示して、どちらを引くか選択させた。富くじは、リスクの高いものほど魅力的に(=報酬が高く)なっていた。
また、くじの選択課題の後に、認知能力、結晶性知能、単純計算能力を測定する課題も行った。
その結果、意思決定の質と、リスク嫌悪の2点において、若者と高齢者の間に差異があった。まず、意思決定の質は高齢者の方が若者よりも低かった。すなわち、高齢者は若者に比べてきた一の高いくじを選ぶことが少なかった。さらに、リスク嫌悪も、高齢者の方が若者よりも低かった。

これらの年齢差は、高齢者の方が認知的能力が低いこと、およびネガティブな感情が低いことに起因している。認知的能力は意思決定の質と、ネガティブ感情はリスク嫌悪と、それぞれ対応している。これまでの研究では、「安全な選択肢」と「リスクを孕んだ選択肢」を提示してどちらか選ばせるものがほとんどだった。この場合、高齢者は安全な方を選択する傾向があった。しかし、本研究で提示されたのはどちらもそれなりにリスクを孕む選択肢であり、より安全な方を選ぶには高い認知的処理能力が必要とされた。相対的にその能力が若者より低い高齢者は、安易に低リスクな方を選ぶことができなくなり、意思決定の質やリスク嫌悪が低くなったと考えられる。また、高齢者が損失家回避の傾向を示さなかったことも、多くの先行研究と異なる点である。

リスクが関わる行動や知覚は、例えば違法なドラッグを購入したり、バンジージャンプをしたりといった様々な場面に生じ得る。今後はそれらの行動における年齢差が、高齢者の自覚なきリスクテイキングにどのように影響するかを研究してきたい。
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