栄養バランスと意思決定の関連:糖分が少ない(orタンパク質多め)だと,都合のいい人になってしまう!?

2017/09/07 2:01 に Saki Nakamura が投稿   [ 2017/09/07 2:10 に更新しました ]
Strang, S., Hoeber, C., Uhl, O., Koletzko, B., Münte, T. F., Lehnert, H., … Park, S. Q. (2017). Impact of nutrition on social decision making. Proceedings of the National Academy of Sciences, 114(25), 6510–6514. https://doi.org/10.1073/pnas.1620245114

食物摂取は生命を維持するために必要で,そこで摂取された栄養は,身体を作ったり,動かしたりするために使われる。それだけではなく,食べ物から摂取した栄養は,脳が活動(社会的な意思決定といった高度な認知プロエスを含む)するためにも使われる。主要栄養素には脂質,タンパク質,炭水化物などがあるが,特に,大きな中性アミノ酸(LNAAs)は,脳の神経伝達物質の機構を調節するよう作用する。具体的には,LNAAsは血中チロシンレベルと関連してドーパミン前駆物質を調整し,炭水化物から得られる血中トリプトファンレベルはセロトニンの前駆物質に関連するようにして,脳内の神経伝達物質を調整する。しかし,社会的な意思決定との関連を見た研究は,おもに炭水化物から得られるグルコースとの関連に注目したものばかりで,それ以外の栄養素については十分に議論されていない。そこで本研究では,主要栄養素組成物(食事に含まれる「炭水化物/タンパク質の比」に注目)と社会的な意思決定との因果関連について検討する。
※最後通牒ゲームはペアでお金を分配するゲームで,1人は分配金額を決定することができ,もう1人は分配金額を決めることはできず,ただ相手の決めた金額のみを受け取ることができる。ただし,分配される側は「拒否権」を持っており,自分に分配された金額が0になるが,相手の分配金額も0にできるという権利がある。この研究では,不当な金銭の分配に対して,どれだけ拒否権を使うかを指標としてみている。

研究1
被験者にその日の朝食をリストアップさせて,1回きりの最後通牒ゲームを行った。その結果,高・炭水化物/タンパク質の食事をとった人は,低・炭水化物/タンパク質の食事の人よりも,拒否権を使う人が多かった(Fig. 1A)。

研究2
朝食を自己申告ではなく,実際に炭水化物とタンパク質の摂取量をコントロールしたものを食べさして,11:00~13:00の間に最後通牒ゲームを実施。その結果,不公平な分配を提示された時に,高・炭水化物/タンパク質の食事をとった人は,低・炭水化物/タンパク質の食事の人よりも拒否権を使う人が多く,実験1を再現する結果が得られた(Fig. 1B)。さらに,研究2では,被験者は15分おきに血液が採取され,そこで得られた,LNAAsに対する血漿のトリプトファンレベル(炭水化物由来)と血漿チロシンレベル(タンパク質由来),そしてグルコース(炭水化物由来)の量が,最後通牒ゲームにおける意思決定との関連を検討した。その結果,血漿チロシンレベルが高いほど拒否権を使う人が少なくなるという,負の相関関係がみられた。


2つの研究で一貫して,低・炭水化物/タンパク質の朝食を食べた場合には,高・炭水化物/タンパク質の朝食の場合と比較して,不公平な分配をする人に対して,自分の報酬を0にしてでも相手の報酬も0にするという拒否権を使う人が少ないことが明らかになった(悪く言えば,不公平な分配をそのまま受け入れるという,分配者にとって都合のいい人となってしまうような判断をする人が多い)。
バランスの取れた食事には,単に身体にとって必要な栄養素を得るという以上に,社会的な意思決定を調整する役割もあることを示唆する。

コメント:糖質制限しすぎるのも,不公平をそのままにしてしまうという点で,あまりよくないかもしれませんね。
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