サディズムと反社会的罰

2017/05/25 2:06 に Sayo Kaneuchi が投稿

Pfattheicher, S., Keller, J., & Knezevic, G. (2017). Sadism, the Intuitive System, and Antisocial Punishment in the Public GoodsGame. Personality and Social Psychology Bulletin, 43(3), 337-346.


サディズムとは、他者を威圧し、支配することに悦びを感じる傾向のことで、反社会的な志向の1つである。また、ある集団内で、集団の構成員が互いに罰を与えることのできる状況にあるとき、集団に非協力的だった人に対してだけでなく、協力的だった人にも罰が与えられることがある。これをが反社会的罰と呼ぶ。反社会的罰が直観的な行動なのか、それとも熟慮的行動なのかという問題は、長らく考察されてきた。この論文ではその問いに対して(部分的ではあるが)1つの答えが示されている。

 

【研究の目的】

 直観的システム、サディスティックな志向、反社会的罰の間の関連を検証する。

 

【実験1】

 まず、参加者の普段の性質を査定するため、サディズム、サイコパシー、ナルシシズム、マキャヴェリアニズムの、4種類の反社会的傾向を測定。次に公共財ゲームの説明をして、3条件のいずれかに振り分けた。


 ※公共財ゲームとは…まず、4人1組のグループを作り、1人につき決まった額の財産を渡される。次にプレイヤーは、それぞれでその財産を自分の取り分にする分と、公共財に入れる分を決める。その公共財は特定の倍率で増やされたのち、報酬として還ってくる。増えた財産をグループの人数(4人)で割り、一人一人の取り分とする。

今回、このゲームを1回行うごとに、参加者は自分のグループのメンバーがそれぞれいくらずつ公共財に投資したかを知ることができた。さらに、グループのメンバー(特に、公共財への投資額が少なかった『非協力的な』メンバー)に対して、報酬を減額する罰を与えることができると教示された。

その上で、次のような群分けを行った。


 ・intuition群

  「罰に関しては直感で判断してください。強い感情に従ってください。」と教示する。

 ・reflection条件

  「罰に関してはよく考えて判断してください。利益と損失を熟考してください。」と教示する。

 ・統制条件

  思考スタイルの教示なし。


その結果、参加者のサディズム傾向が強い時だけ群の効果が見られた。すなわち、直観システムが活性化されたとき、サディズム傾向の強い人はより頻繁に罰を与えていた。

 

【実験2】

 直観システムが反社会的罰の土台となっているのなら、それを阻害すれば、サディスティックな傾向のある参加者の反社会的罰は減るはずだ、という予測を検証するために行われた。 

 基本的な手続きは【実験1】と同様で、4種類の反社会的傾向を測定した後、公共財ゲームを行わせた。ただし、群の設定が異なっていた。


・直観システム阻害群

  罰に関する説明を受けた後、2分間ディストラクション課題をしてから、罰を決める。

 ・統制群

  他の3人の配分を知った後、すぐに罰を決める。


その結果、サディスティックな傾向の強い参加者は、直観システムを阻害されると罰の回数が少なくなった。この効果は反社会的罰についてのみ生じ、非協力的だった人に対する罰については生じなかった。また、サディズム以外の反社会的傾向は関連していなかった。

 

【考察】

 社会的ジレンマにおける協力的行動や、非協力的行動が、直観的なのか熟慮的なのかはずっと議論されてきた。今回の実験では、一つの答えを呈示した。つまり、サディスティックな傾向のある人の反社会的罰は、直観システムに基づいている。

 一方で、直観システムを促進すると、向社会的行動が増える(阻害すると減る)ことを示した研究もある。この相反する結果を説明するのは社会的ヒューリスティクス仮説(SHH)であるSHHは、人が新しい状況や異常な状況において、その人の中に深く根付いている知識や経験を直観的に用いていることを前提としている。つまり、反社会的傾向を深いところで持っている人は、直観的にその傾向を、新しい状況で適用する。特に、SHHは、直観システムそれ自体が向社会的行動を促進するわけではないと予測している。個人のデフォルトのモードを促進するにすぎない。



Comments