「祖国の悲劇」が外集団に対する態度及び行動に与える影響

2017/04/12 16:30 に Sayo Kaneuchi が投稿   [ 2017/04/20 1:49 に更新しました ]

Schori-Eyal, N., Klar, Y., Roccas, S., & McNeill, A. (2017). The shadows of the past: Effects of historical group trauma on current intergroup conflicts. Personality and Social Psychology Bulletin.


PIVOperpetual ingroup victimhood orientation)は自分の集団が、様々な敵によって断続的に迫害されている犠牲者である、という信念で、(歴史上の)トラウマが、犠牲者の子孫にも世代を超えて引き継がれることを説明する概念である。一方、FOVfear of victimizing)は(歴史上は)被害者だった自分の集団が加害者になってしまうことへの懸念を意味する。

この研究では、PIVOFOVが外集団に対する情動的または認知的態度や行動に与える影響を検討するために、2つのコミュニティが対立してきた歴史を持つ集団(ユダヤ系イスラエル人 / 北アイルランド人)を対象とした合計6つの調査が行われた。調査には、次に挙げる尺度(原則「強く反対する」~「強く同意する」の7件法)や課題が使用された。
PIVO尺度(例;『我々が歴史上対峙してきたすべての敵は皆、1つの目的を共有している―我々を全滅させることだ』)
FOV尺度(例;我々の最悪の敵がそうしたように、我々もまた同じやり方で他人を扱う危険がある)
moral entitlement (倫理的特権感;例『無実のものを傷つけることは、我々の存在が脅かされている場合においては正当なことだ』)
group-based guilt(集団に基く罪悪感;例『イスラエル人がパレスチナ人に対してやったことを罪だと感じる』)
TECC(たぶんTactical Emergency Casualty Careだと思います。『成功確率が低いが一般市民を傷つけないミサイルと、成功確率は高いが一般市民に対する殺傷能力も高いミサイルのうち、権力者はどれを撃つべきか』
religiosity(宗教性)
political orientation(政治的志向)
personal values(個人の価値観)
social desirability(社会的望ましさ;例『私は他人のやることについて陰口を言うことはない』)
SDOSocial Dominance Orientation
RWARight-wing authoritarianism
group identification(集団アイデンティティ)
attribution of responsibility(責任帰属傾向;TST課題【Temporal Sequencing Task】を用いて計測『イスラエル人とパレスチナ人がひどい事故に遭う様子を描いた4枚の絵を、時系列の順に並べ替えさせる。事故の原因はどちらにあると思うかを尋ねる』)

その結果、外集団に対する攻撃的態度や情動は、PIVOとポジティブに、FOVとネガティブに関連していることが分かった。つまり、PIVOが高いと外集団に対して攻撃的になるが、FOVが高いとそうはならない。さらに、PIVOが高ければ集団間で起こった事故の責任を外集団に帰属しやすくなるが、一方で外集団に対する寛容さや和解しようとする意志はFOVが高い時に強くなることも示された。また、PIVOが高いと内集団へ与えられた被害についてより正確に記憶できる傾向があるが、FOVが高い者は犠牲者が内集団メンバーであろうと外集団メンバーであろうと記憶の程度に差がなかった。PIVOFOVという2種類の歴史的集団トラウマに基づいた志向は、集団間紛争に大きく影響している。

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