「歳をとるにつれて危険な行動をとらなくなる」は,環境の影響を受ける

2017/06/22 3:07 に Megumi Tabuchi が投稿

Mata, R., Josef, A. K., & Hertwig, R. (2016). Propensity for Risk Taking Across the Life Spanand Around the Globe. Psychological Science, 27(2), 231-243.

DOI: 10.1177/0956797615617811


「危険行動のとりやすさ」は若者,特に青年期に最も高くなり,その後徐々に加齢に伴い低下していことが多くの研究で報告されている。しかし,それは世界共通なのだろうか? ここでは,ライフヒストリー理論に基づき,加齢とリスクテイクの関係には生活環境が大きく影響してくるのではないかと仮定した。
【ライフヒストリー理論】
生き物は,長い淘汰と進化の中で獲得してきた,置かれた環境の中で最適化された資源配分(成長,自己保全,繁殖)の戦略(=生活史戦略)を持っているという理論。非常にリスキーな環境で生き抜くことを強いられた生き物は,自己の成長や保全よりも,より多くの子孫を残す戦略(リスキーな戦略)をとり,安定した環境で生きる生物は,成長や自己保全に資源を配分して少数の子孫に対して養育コストを裂く。 ⇒生活環境の厳しさによって,リスクテイク行動と年齢が関連しているか否かが異なってくるのでは?
【方法】
世界価値観調査(1981年から約5年間隔で実施。第5(2008)と第6波(2014年)を使用)。77カ国のべ147,118名のデータを入手(76,617 females, 52%; age range = 15–99 years)。

(質問項目)

個人のリスクテイク傾向:「Adventure and taking risks are important to this person; to have an exciting life.」
生活の困難さ:殺人の起こる割合,GDP,収入の不平等さ,乳幼児死亡率,出生時平均余命,男女平等性(男女の教育を受けている割合の平等さ)など。世界保健機関などからこれらの情報をゲット。

【結果】

加齢に伴いリスクテイク傾向が低くなっていく,という傾向が大まかには認められたが,各国の環境的な生活困難さに影響され,リスクが高い環境であると加齢とリスクテイク傾向の関連は認められなくなる(図b参照)。「歳をとるにつれて危険な行動をとらなくなる」という,リスクテイクの加齢変化の欧米研究があるが,それには環境的な要因が強く関連しているといえる。

さて,ここでJapan(JP)のデータを見てみると,図bではかなり外れたところにある。Japanのデータは,「生活の困難さ」は低く,環境的には安全だが,「リスクテイク傾向と加齢の関連」がそもそも非常に弱く,それは「若者のリスクテイク傾向が非常に低いので,結果的に歳をとってもそんなに下がっていかない」というもの。Japanが「加齢とリスクテイク傾向の関連」研究でいかに外れ値かが分かって面白い。

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