頭を怪我すると思春期に非行に走りやすくなる?

2017/07/06 6:52 に Sayo Kaneuchi が投稿

Schwartz, J. A., Connolly, E. J., & Brauer, J. R. (2017). Head Injuries and Changes in Delinquency from Adolescence to Emerging Adulthood: The Importance of Self-control as a Mediating Influence. Journal of Research in Crime and Delinquency.

この研究は人生の初期に負った頭部外傷がその後の自己制御の変化や非行に関連があるのかを検討している。


【現在の研究における疑問点】

 第一に、これまでの研究は頭部外傷と自己制御、そして大人の反社会的行動の間の連合を検討しているが、重要な発達段階である思春期における連合を検討したものは少なかった。
 第二に、これまで注目されてこなかった、自己制御に生じる変化が最終的に非行行為の変化を引き起こすのかについて検討した。

 第三に、頭部外傷と自己制御の変化、およびそれに伴う非行行動の変化に回路的つながり(pathway linking)があるのかを検討した。

 

【手続き】

データ;Pathways to Desistanceのデータを分析した。7年間にわたる調査データだった。アリゾナ州マリコパ郡とペンシルベニア州フィラデルフィアの1354人の少年犯罪者のデータで構成されていた。犯行当時の年齢は14から17歳で、全員が裁判にかけられていた。Baseline interviews20002003年に行われた。その後、参加者は10回にわたって面接を受けた(最初の6回は半年ごと、残り4回は年1回)。この研究では、Baseline interviewから数えて1年ごとのデータを引用した(12か月目~84か月目)。

 

【測度】

頭部外傷…意識を失うような、または病院での治療が必要になるような頭のケガを負ったことがあるか尋ねた。面接のたびに聞いた。(0 = no, 1 = yes

自己制御Weinberger Adjustment Inventory (WAI)によって測定。WAIは、総合的な社会的感情発達の査定を行うもので、3つの下位尺度(衝動コントロール、攻撃の制御、他人への思いやり)を含む。例えば、「頭に思い浮かんだことをよく考えないまま口に出す」「私を怒らせるような人は気をつけた方がいい」といった項目に対して、自分の過去6か月間の行動がどれほど当てはまるかを5段階(1 = false, 5 = true)で評価する。

非行3種類の尺度で測定。1つ目はself-reported offending(自己報告式非行;SRO)で、それぞれの非行を一定期間中(6か月または1年以内)に何回行ったかを答える。2つ目は攻撃的犯罪行為尺度(aggressive offending subscale)で、「喧嘩をした」「誰かを病院送りにした」「誰かに性行為を強要した」といった、(SROに比べて)より攻撃的な項目が含まれる。3つ目は所得犯罪行為尺度(income offending subscale)で、「万引き」「何かを盗むために建物に押し入った」「クレジットカードや小切手を不正に使用した」といった、より金融的な項目が含まれる。

その他の共変量…面接2回目から8回目までの頭部外傷、面接1回目の時の自己制御、サイコパシー尺度、暴力への曝露経験、知能、socioeconomic status (SES;社会経済的状態。両親の学歴や職業的地位)、逮捕経験、人口統計学的変数(年齢、性別、人種)

 

【分析計画】

Latent growth curve modeling (LGCM) とは構造方程式モデリングにおいて用いられる統計的分析手法で、成長曲線を予測するために使われる。一定期間にわたる成長を予測する、縦断的な分析手法である。時間やその他の尺度の機能としての従属変数の反復測定を表す。そうした長期的データは同じ被験者が同じ検査方法で長期にわたって繰り返し観察されるという特徴を共有している。

 

【結果】

 まず、スピアマンの順位相関係数を求めた。これは、2変数間に単調増加関係ないし単調減少関係がどの程度明確に存在するかを表す速度である。データの大きさの順位に基づいて算出される。今回これをまず求めたのは、2から8回目までの自己制御と各非行尺度における安定性の度合いを査定するためであった。自己制御には中程度の安定性があった。それに比べると非行に関しては、安定性は低かった。

ロジスティック回帰モデルが面接1時点での頭部外傷と面接2~8での非行との基本的な連合を表現すると推定された。面接1時点で頭部外傷の経験ありと答えた若者は、その後のいつの時点においても攻撃と非行の度合いが高いことが分かる。ただし、経済的非行については、有意だった時期が限られていた。

無条件LGCMによれば、非行が始まる可能性と変化の割合に有意な個人差があることが分かった。

パス分析によって、次のことが明らかになった。初期の頭部外傷は短期間の自己制御の低下に関連している。頭部外傷は攻撃的非行および一般的非行の高いことにも関連している。さらに、初期の頭部外傷は長期の攻撃的非行の変化と負の連合があった。つまり 頭部外傷経験のある若者はその他の若者よりも攻撃的非行を思いとどまるのが早かった。頭部外傷は長期の自己制御の変化、長期の経済的非行の変化とは連合していなかった。

 短期間の自己制御の変化は頭部外傷と長期の攻撃的非行との連合を有意に調整していた。これは初期の頭部外傷と長期の攻撃的非行との連合が思春期における短期間の自己制御の変化によって部分的に調整されているが、頭部外傷で苦しんだ人はそうでない人よりも速く非行を思い止まっていることを意味している。


【考察】

・頭部外傷によって前頭葉が害されている?

・暴力や攻撃的行動を起こしやすい性質のある人は、頭を怪我しやすい状況にいやすいのでは。

 

まとめると、今回の研究で、非行は環境、生物、発達それぞれの影響が複雑に絡み合って形成されるということの一つの証拠が示された。環境的影響である頭部外傷が測定されていない生物学的過程を通して作用し、自己制御を変化させ、最終的に長期的な行動パターンを形作る。
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