「独りよがり」の非対称性 ―聖人ではないが、ヨコシマでもない?―

2017/06/29 3:32 に Sayo Kaneuchi が投稿   [ 2017/06/29 3:36 に更新しました ]

Klein, N., & Epley, N. (2017). Less Evil Than You:Bounded Self-Righteousness in Character Inferences, Emotional Reactions, and Behavioral Extremes. Personality and Social Psychology Bulletin, 0146167217711918.


最近の研究から、「独りよがり」は道徳的な行動の評価よりも非道徳的な行動の評価においてより確実に現れることが示された。この「独りよがり」における非対称性が持つ4つの影響と、それを説明するメカニズムを検討した。人は、自分自身の非倫理的な行動からは、他人の非倫理的な行動からよりもネガティブな性格推論を行いにくいこと(実験①)、 非倫理的な行動の後は他人よりも気分が悪くなると思っていること(実験②)、そして他人に比べて極端な非倫理的行動をとることはできないと思っていること(実験③)を発見した。人は自分自身の評価の基盤を自分の道徳的意図に置く。皮肉的な動機の原因を彼ら自身の行動に帰する傾向がある人達は、「独りよがり」の非対称性がより小さかった(実験④)。「独りよがり」は「汝よりも清らかな(聖人ぶった)」という感情よりも「汝よりも邪悪ではない」という感情として特徴づけられると言える。
 「独りよがり(自分を聖人と見なすこと)」の非対称性…自分は他の人よりも非倫理的な行動をすることは少ないと思っている一方で、必ずしも他の人よりも倫理的な行動を取るわけではない。

 

【実験1】

 自分のことを他人よりも「邪悪」でないと考えているならば、他人の非倫理的な行動に比べて自分の非倫理的な行動からは、性格推論を行いにくいだろう。反対に、倫理的行動に基づく性格推論においては、自己と他者の差異は現れない。

 

方法

Actorは、他の参加者とペアにされ、抽選で10ドル手に入れるチャンスがあると言われた。 Actorは、10ドルは全てのtargetにランダムに割り当てられること、このお金のうちいくらかを自分のものにできるチャンスがあることを教示された。Actorは次に、彼らの役割はtargetからいくらか取り上げることだと教示された。そうすれば、実験者は残りをtargetに「運ぶ」ことができる。つまり、targetは金額を選ぶことはできないが、特定の額がランダムに割り当てられる。actorにはさらに、「彼ら(actorが誰か」を表現する5つの言葉をあげさせて、それらの言葉を使って彼ら自身を説明する様を録画した。 そしてActortarget10ドルから1ドル(気前のいい、道徳的行動)取るか、または9ドル(利己的、反道徳的行動)取るかを選ばされた。Actorは自分の行動がどれくらい利己的または寛大かを評価した。さらにActorは次の方法で自分自身の性格を評価した。1. 彼らの行動が、彼ら自身がどういう人物かということに影響を与えるかどうか、2. 自由に金額を決められたとしたら、実験者の指示と同じ割合の配分をしたか。
targetも、抽選で10ドル手に入ることを知らされたが、同時にactorがいくらか持っていくことも知らされた。actorはそれを指示されて行ったという点を強調するために、actorは選択権なく、特定の額を取り上げるよう教示されていると伝えられた。Targetactorの取り分を伝えれ、彼らの自己表現のビデオを見た。 最後に、targetactorと同じ尺度を評価した。targetには、実験者がもし教示していなかったら、actorはどのように行動したかを推測するように言った。

 

結果

targetは利己的な行動がactorの実際の性格を反映していると、actorよりも判断した。 しかし、寛容な行動からの推測では、targetactorに差はなかった。

この結果は「独りよがり」の非対称性を含む。人は、自分の明らかな利己的行動は他人の同じ利己的行動に比べて割り引く傾向があるが、自分の寛容な行動についてはあまり主張しない。

 

【実験2】

 参加者は、非道徳的な行動をイメージした後、他人よりも気分が悪く感じると予測するだろう。しかし道徳的行動のあと、気分が良くなるとは必ずしも思わない。

 

方法

6ドル渡されて、それを他の人に分ける。

self条件…彼ら自身の意志で、1ドル(利己的)、3ドル(公平)、5ドル(寛大)のうちどれかの額を与える。この行動がどのくらい良いものか(100点満点)、この行動のあとどのように感じるか、金の受け取り手はどのように感じるかを評価した。other条件では、上述の分配ができる他人を思い浮かべて、その行動がどれくらい良いものか、この行動のあと、その人や受け取り手はどのように感じるかを評価した。


結果

 利己的行動の後は他人よりも気分が悪くなると思っているが、公平な行動の後に気分が良くなるわけではない。寛大な行動の後では、他人に比べて気分が悪くなるだろうと予測しているのが面白い。道徳的行動と非道徳的行動との間にここでも差があった。

 

【実験3】

もし人が他人より「邪悪」ではないが必ずしも道徳的なわけではないと考えているとしたら、自分の最も利己的な瞬間においては他人より非倫理的な行動はしないが、もっとも寛容な瞬間において他人より倫理的だとは限らないと予測するだろう。

 

方法

6ドル受け取って他者に配分する。self条件では、まず、参加者は自分が最も利己的、公平。寛容な瞬間を考える。次に、自分がそれぞれの場合において6ドルをどのように分配するかを予想してもらう。average other条件では、参加者は同じ判断を平均的な他者に関してやってもらう。extreme other条件では、自分の知っている中で最も利己的・公平・寛容な人物のイニシャルを挙げてもらい、その人達がよくやる行動を簡単に書いてもらう。そして、6ドルをその人達が見知らぬ他人に対してどのように配分するかを予測させる。

 

結果

自分が知っている最も利己的な人や、平均的な人が最もわがままになっているときに比べれば、自分が最もわがままになっているときの方がより多くの金額を相手にわたす。平均的他者と極端な他者との間に、利己的行動の差はなかった。対照的に、参加者は自分が最も寛大な瞬間でも、自分の知る最も寛大な人や、平均的な人以上の額を分配するとは思っていなかった。

 

【実験4】

皮肉な性格尺度について、他人と自分自身の両方について答える。

次に、道徳的行動と非道徳的行動を表した7つずつ文章を読む。それぞれの行動について、自分がどの程度その行動をすると思うかを評価する。

 

結果

他者は、非道徳的な行動よりも道徳的な行動を選択するが、彼ら自身はよりいっそう道徳的な行動を選択すると、参加者は予測した。
自分自身の動機についての「皮肉的な性格」(例:「セールスマンは、消費者へのサービスよりも自分たちの利益を優先して販売を行っていると思う」といった考え方を持っていること)は他者の動機についての皮肉よりも強く道徳的・非道徳的行動の独善性に結びついていた。
理想的な自己観を持っている参加者は皮肉的な自己観を持っている参加者に比べてより強い「独りよがり」の非対称性を示した。
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