「ヤフートップ」トピックスがもたらす偶発的/副産物的学習効果

2017/09/28 16:54 に Asako Miura が投稿
Tetsuro Kobayashi, Takahiro Hoshino, Takahisa Suzuki (2017). Inadvertent Learning on a Portal Site: A Longitudinal Field Experiment. Communication ResearchFirst published date: September-18-2017.
doi: 10.1177/0093650217732208

あっという間に民進党が「溶/解けて」しまった昨今,さすがに多くの市民が厭気と共に政治に関心を向けているかもしれませんが,普段は政治と言えば「自分たちの生活に密接に関わっているけれど,かといってじぶんから密接に関わりたいとは思わない」対象です.しかし,民主主義国家の主権は国民にあり,その統治下において暮らす国民にとって望ましいのは,少なくとも一定以上の関心を政治に持ち続けていることだとされています.政治を理解するためには,政治知識が必要です.政治知識を身につけるためにはどんな方法が効果的なのでしょうか.もちろんきちんと学ぶこと,が第一でしょうが,ここで採り上げるのはPrior(2007)の言う「偶発的/副産物的学習」です.つまり,特に「政治について学ぼう!」と意図しているわけではない状況で,しかし政治に関する事柄にたまたま接する機会をもつことが,政治知識を高める効果をもつ,というアイディアです.これを実証するために,3ヶ月にわたる縦断的なフィールド実験を行ったのがこの研究です.

研究はヤフーの協力を得て行われました.参加者はオンライン調査会社のモニタで,所定のアプリケーションをインストールした環境で,Webブラウザを利用するよう求められました.このアプリによって,参加者がヤフートップにいつどの程度ヤフートップにアクセスしたか,どのリンクをクリックして記事を見たか,その時どんなトピックスが提示されていたかなどのデータを収集しました.参加者は4つの条件に無作為に割り当てられましたが,その条件はトピックスに表示される8つのトピックのうち,ニュース(政治・国際)がどの程度を占めるかによって操作されました.0/2/4/6です.通常,トピックスに表示されるトピックは,ニュースが2~3件,その他はエンタメ(芸能,スポーツ,有名人情報など)というように,大体数が決められています.そこを操作したというわけです.

参加者には,実験開始前に政治知識を問いました.そして,実験終了後には同じ問題,および別の問題でやはり政治知識を問いました.前者は単純な変化量で,後者はそうした変化が汎化したかどうかを確認するために測定されました.また,参加者がどのようなジャンルに関心を持っているかを尋ねて,ニュース志向かエンタメ志向かを区別しました.いくつかの共変量も測定しています.

まず,トピックスに占めるニュースの数と回答者の志向性によって,ヤフートップにアクセスする数に差異があるかどうかを検討したところ,両者の主効果および交互作用は有意ではありませんでした.つまり,トピックスにニュースが多く表示されるとエンタメ志向の強い人が厭がってアクセスしなくなる,といったことはありませんでした.そして,政治知識にはそもそもニュース志向>エンタメ志向という差はありますが,事前事後の知識の変化および汎化をみたところ,ニュースが多く表示されるとエンタメ志向の強い人も政治知識は増えることが示されました,これは偶発的/副産物的学習効果だといえるでしょう.

※輪読ゼミの議論では,エンタメ志向とニュース志向は,そもそもその軽重が違うことが影響しているのかも,という意見がでました.つまりエンタメ志向は「なんとなく」であるからこそ,ニュースの表示数が増えたことへの拒否反応が弱く,そのため単純接触効果的な現象につながったのではないか,ということです.確かに,逆だったら,つまりニュース志向が強い人にエンタメ満載のトピックスを見せたら,厭がりそうな気がしますね.

ref: Prior M. (2007). Post-broadcast democracy: How media choice increases inequality in political involvement and polarized election. New York, NY: Cambridge University Press. 
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