顔を見れば社会的階級を予測できる?

2017/10/08 22:46 に Risako Shirai が投稿   [ 2017/10/08 22:57 に更新しました ]

Bjornsdottir, R. T., & Rule, N. O. (2017). The visibility of social class from facial cues. Journal Of Personality And Social Psychology, 113(4), 530–546. https://doi.org/10.1037/pspa0000091

これまで,私たちが非言語的手がかりを介して意図的に自分の社会的階級を表現する可能性が示されてきたが,知覚者側がそれをどれほど早く検出できるかは明らかにされてこなかった。私たちは他者の顔を見ただけで社会的階層を予測できるのか,予測できるとすると,どのようにして推測しているのかを明らかにする実験を実施した。

実験1他者の顔から社会的階級を予測できるか?

方法:呈示する顔刺激は,年収が$150,000以上と報告している場合は富裕層(rich),$35,000以下と報告している場合は貧困層 (poor)とした。参加者はランダムな順序で呈示される顔をrichなのかpoorなのか,第一印象で分類をおこなった。その後,質問紙調査をおこなった。階級差別について(階級に基づく偏見; Economic Belief Scaleを使用)や社会階級に根ざした本質主義についての質問項目に回答し,社会的階層の好ましさ・特定の社会階級の人たちへのあたたかさについても回答した。参加者は最後に参加者の家計情報・主観的な社会的階層についてもこたえた。

--> 参加者は顔の刺激の社会的階層をチャンスレベル以上にうまくカテゴリ化できることがわかった。

参加者の回答の正確性(e.g., poorpoorと報告)と反応バイアス(e.g., richpoorと報告)をどのような変数が予測するのかを調べるため,6つの調整変数を用意した (classism, class preference, class warmth, social class essentialism, the perceivers’ incomes, subjective social class) 。分析の結果,他者の社会的階級を予測する能力は知覚者側の社会的階級やそれに関連した態度で変動しないことが示された。

 

実験 2A, 2B, 2C 知覚者側はどのような顔の特徴を利用して社会的階級を予測しているのか? (Fig.1)

2Aの結果:参加者は正立状態の顔でも倒立状態の顔でも社会的階級をチャンスレベル以上で予測できることがわかった。これらの結果は顔の全体の形状のみが社会的階級のてがかりを提供するわけでないことを示唆。

2Bの結果:参加者は上半分の顔でも下半分の顔でも社会的階級をチャンスレベル以上で予測できることがわかった。上半分の顔と下半分の顔の正解率に違いはなかった。これらの結果は顔の上半分と下半分の両方の情報で知覚者が社会的階級を予測している可能性を示唆。

2Cの結果:実験の結果,参加者は目でも口でも社会的階級をチャンスレベル以上で予測できることがわかった。けれども,口の方が目よりも正解率が高いことがわかった。これらの結果は目と口の両方の情報で知覚者が社会的階級を予測でき,口だとよりはっきりと予測できる可能性を示している。

実験 顔の物理的特徴以外のてがかりが社会的階級をどこまで予測する?

顔の特徴以外のてがかりが社会的階級をどこまで予測するかを検討した。特に,社会的階級と関連していると考えられる5つの変数との関係性について検討した (affect, attractiveness, dominance, empathy, health, intelligence, warmth) 。因子分析を行い,魅力度(attractiveness, health, intelligence)と積極性(affect, empathy, warmth, reverse-coded dominance)に関する2つの因子にまとめ,レンズモデルに当てはめて検討した。その結果,魅力度と積極性の両方が「富裕層とカテゴリ化する確率」と相関関係にあり,魅力度のみが実際のモデルとなった顔の社会的階層と相関していた。

--> 知覚者は魅力度をターゲットの社会的階層を知覚するのに使用していたと考えられる。

実験 4A, 4B  十分に統制された顔写真からでも社会的階級を予測できる?

これまで使用してきた顔写真はweb ベースで収集した写真であったため,顔写真にうつる人の情動表情や角度の細かな変数は操作できていなかった。このような変数を統制するため,実験4では実験室で撮影した写真を用いて実験を行った。

実験4Aの結果:新しく使用した顔写真でも知覚者はチャンスレベル以上で顔から社会的階級を予測できることが示された。

実験4B:因子分析を行った結果,Attractiveness, Diligence, Positivity が抽出された。レンズモデルにあてはめると,わずかであるが,積極性のみが有効なてがかりとして機能することが示された。

実験 5A, 5B 社会的階級の知覚に積極性(Positivity)が与える影響

実験 5A: 合成顏を作成し,「呈示した人物が今どのように感じていると思うか」を答えさせた (Fig. 4)。その結果,貧困層よりも裕福層の方がポジティブな感情であると評価された。

実験 5B:顔画像の呈示時間を短くすることで顔から得られる情動情報(affect)が人物の社会的階層の知覚に影響するかを検討した。実験4Aと同様にモデルの社会的階層の予測がチャンスレベル以上で予測できることが明らかとなった。

実験6A, 6B 顔の情動情報は社会階級の予測を妨害するか?

実験6A:顔の情動が社会的階層の手がかりになっているならば,顔の情動表情が存在することで,社会的階層の予測がおこないにくくなる可能性。笑顔だとより高い社会的階級だと予測されることが報告された。

実験6B笑顔が社会的階級のカテゴリ化を妨害するかを調べた。仮説と一致して,人物の階級をうまく弁別することができなくなることがわかった。

実験 7 人物から推測された社会階級が雇用の機会に与える影響

社会階級を知覚されることで,知覚された人物の経済状況にどのような影響を及ぼすかを検討した。例えば,貧しい人々に対する偏見は、その人にとって経済状況を改善する可能性のある機会を制限し、排除してしまう可能性がある(RidgewayFisk2012; Stephens et al., 2014)。

方法:参加者は会計士志望の人物の顔を見て,会計士として成功する確率を答えるように教示された。

--> 富裕層の人の方がより良い職につくと予測された。社会階級に関する顔の手がかりを重要な社会的判断の決定に使用していることを示している。


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