逸脱者のいるグループの社会的規範はどのように知覚される?

2017/09/30 20:13 に Risako Shirai が投稿   [ 2017/09/30 20:15 に更新しました ]
Dannals, J. E., & Miller, D. T. (2017). Social norm perception in groups with outliers. Journal of Experimental Psychology: General, 146(9), 1342–1359. https://doi.org/10.1037/xge0000336

規範を守らない社会的な逸脱者は,同じグループに属すメンバーからも,グループ外の人たちからも注意を向けられる存在である。しかし,これまでの研究では,このような逸脱者がいるグループ全体が外からどのように知覚されるのかは明らかにされてこなかった。そこで本研究は,どのようにして逸脱者がグループの行動の平均的な知覚に影響するのかを検討した。

研究1: 出勤時間に関するグループの規範は逸脱者によって影響を受ける?

はじめに,参加者は8人の人物がドアから出て行く様子の映ったビデオを観察した。参加者には,このビデオがある作業グループの朝方の出勤の様子であること,メンバーが到着する度に画面下部に到着時刻が提示されることが教示された。到着時刻の分布には変動があるが (Table 1),グループ内の平均の到着時間は次に設定する条件ごとに同じになるように設定した。ビデオの種類は大きく分けて2条件あり,予測される時刻よりも早く到着する逸脱者がいる場合,予測より遅く到着する逸脱者がいる場合があった。参加者の課題は,この作業チームに新しいメンバーが来るとすると,その人物が到着すべき時間はいつかを答えることであった。特に到着時間に関する質問は,記述的な規範「このメンバーの平均の到着時間は?」と慣例的な規範「このメンバーの大半 (50 %) が適切で快適に感じる到着時間は?」に分けられており,参加者はそれぞれに回答した。

その結果,記述的な規範である平均時間の回答は逸脱者の到着時間に引っ張られることを示した(e.g., 遅く到着する逸脱者がいる場合はグループ全体の平均到着時間が遅い方向にシフトした)。また,逸脱が中程度であるときは逸脱が極端であるときと比較して,より逸脱者の到着時間の重みづけが大きくなることが分かった。


研究2: 逸脱者がいる方がグループの規範は厳しい?

参加者は逸脱者のいるビデオを視聴し,「新しいメンバーが825分に到着する傾向があるとすると,新しいメンバーは他のメンバーによって後でどれほど処罰的な態度をとられると思うか」を推測した。また研究1で統制されていなかったグループの到着時間の変動の大きさを,逸脱者のいる条件といない条件で同質化し,逸脱者が存在することの効果と変動が大きいことの効果を切り分けた。

その結果,グループの到着時間の変動の大きさを統制しても,新しいメンバーが処罰される傾向は,逸脱者がいるグループにきた場合の方が逸脱者のいないグループよりも高いと予測された。

研究3: 服装のタイプに関するグループの規範も逸脱者によって影響を受ける?

研究3では,研究1,研究2で観察されたグループの規範の知覚における逸脱者による効果が時間厳守に限られた効果であるかどうかを検討した。そのために,服装について焦点を当てた。参加者はビデオを通してオフィスの外にいる作業チームの服装を観察し,その後,この作業チームの服装のタイプ(記述的規範; 1. カジュアル~7. フォーマル)と新しいメンバーがするべき適切な服装のタイプ(慣例的規範)を選択した (Figure 3)。その結果,研究1と同様に,知覚された記述的規範および慣例的規範は逸脱者の服装の方向に引っ張られることが明らかとなった。 


研究4: メンバーの一度の逸脱行動はグループの規範の知覚にどのような影響を与える?

研究1~3では,大きく逸脱したメンバーは,グループ全体の規範を推測する上で信頼性の低い観測値とみなされ,中程度の逸脱者よりも重みづけが小さいことを示してきた。研究4では,グループの規範の知覚は大抵1回の観察ではなく,複数回の観察により形成されていくものであるという考えから,観察の頻度を操作した。逸脱者が2回目の観察時には正常な行動をとるとすると,1回目の逸脱した行動の重みづけはより小さくなると考えられる。

実験の結果,1回目に知覚された逸脱者は2回目で正常な行動をとったとしても2回目のグループの知覚に持続して影響を与えることが示された。これは第一印象の重要性を示した先行研究と一致した結果である。

まとめ

研究1~4を通して,集団の規範の知覚は,所属するメンバーの逸脱者の影響を受けることを示した。特に中程度の逸脱者は,集団の規範の推測を逸脱者の行動傾向に過度にシフトさせることが分かった。一方で,極端な逸脱者の行動の重みづけは中程度の逸脱者と比較して小さくなった。これらの結果は,私たちが逸脱者の行動にアンカーをつけ,非逸脱者に関する行動を調整して記憶することでグループ全体の行動の推論が影響を受ける可能性を示唆している。

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