鯖缶輪読ゼミまとめページ

2011年度以降に大学院ゼミで報告された論文まとめ一覧

2015年度の「ベスト3」論文

Murayama

何も手を下さずに不正できてしまうと、不正率も高いし心理的な負担も小さい

2015年度に読んだ論文:ベスト1
実際に身体を動かすかどうかで不正率が変わるという視点が面白かった。デフォルト状態が不正になってしまわないように工夫できることが結構あるんじゃないかと思った。

Mazar, N., & Hawkins, S. a. (2015). Choice architecture in conflicts of interest: Defaults as physical and psychological barriers to (dis)honesty.  Journal of Experimental Social Psychology, 59, 113–117. doi:10.1016/j.jesp.2015.04.004 

Abstract: デフォルトの選択肢は、臓器提供のような公共政策の目標に個人が応じる傾向に多大なる影響力を持っている。われわれはこのデフォルトに関する傾向が道徳的(不道徳的)な行いを促進させる役割を担っているかについて、2つの研究から検討した。不作為と作為(omission and commission)に関する先行研究の結果から、デフォルト、すなわち不正解を能動的に受け入れる必要がある場合にもっとも不正が多くなることを示した(Omission)。さらに重要な点としては、身体的な努力の程度が同じであるにもかかわらず、単純に間違った答えを与える(Super-commission)よりもデフォルト、すなわち正解を覆す(Commission)必要がある場合に不正が少なかった。なぜなら、後者の方が心理的に困難だからである。また、人は不正に身体的、心理的コストが影響することを予想するが、両方のコストを克服するためには基本的に異なる道徳的キャラクターが必要になることは信じようとしない。われわれが示した結果は、デフォルトの選択肢に関連する異なる種類のコストに対するより繊細な視点を支持するとともに、正直さを促進させるような政策、たとえば税制など、に関する実践的な知恵を提供するものである。

武器になるようなものを持っていると、怒り感情を過剰に見積もられる

2015年度に読んだ論文:ベスト2
エラー管理理論を提唱したHaseltonの研究室のもののようだ。卒論を論文化したような気がする。こうしてしっかりラボの研究をまとめられるのはすごい。研究内容も自分の研究テーマと関連が深く、参考になった。視線の有無によっても結果が変わりそうだ。

Holbrook, C., Galperin, A., Fessler, D. M. T., Johnson, K. L., Bryant, G. A., & Haselton, M. G.  (2014). If Looks Could Kill : Anger Attributions Are Intensified by Affordances for Doing Harm,  Emotion, 14(3), 455–461. 

Abstract: 感情知覚は、時に不正確なことがあり、ターゲット人物が表出している感情を大きく見積もったり、小さく見積もったりする。この2種類のエラーのコストが対称関係にない時、カテゴリー機構は、エラーによるコストが小さい方にバイアスがかかった判断をすることがある。文脈的な要因がこの非対称性に影響を及ぼすことがあり、表出された感情に対するバイアスをさらに強める役割を担う。怒り感情は攻撃性を生み出すが、それゆえ、怒りの知覚に重要な文脈的要因は、知覚者に害が及ぶかどうかという点が関わってくる。傷付けられる可能性が高くなるほど、ターゲット人物が怒っている可能性を小さく見積もることがコストになる。結果として、怒っている可能性を過剰に見積もる方向にバイアスがかかった知覚がなされるであろう。予測と一貫して、2つの研究から、アメリカ人の成人では、モデルが武器を思い起こさせるような家事道具(枝きりばさみ)を手にしている方が、そうではない家事道具(じょうろ)を持っている場合よりも怒り感情を強く知覚することが明らかになった。怒りと攻撃性の間にある特有の関係性と一貫して、このようなポジティブバイアスはその他のネガティブ感情では見られなかった。

宗教とかかわりの深い人たちは遅延価値割引をしにくい

2015年度に読んだ論文:ベスト3
2016年度からの自分の研究テーマと非常に関連が深く、参考になった。ただ、私が考えていた仮説と考え方が異なる部分もあるので、参考にした上で今後の展開を考えなければ。

Carter, E. C., Mccullough, M. E., Kim-spoon, J., Corrales, C., & Blake, A. (2012). Religious people discount the future less ☆Evolution and Human Behavior, 33(3), 224–231. http://doi.org/10.1016/j.evolhumbehav.2011.09.006

Abstract: ヒト社会において、宗教的な信念や行動の性質は普遍的であるように思うが、宗教的な実践には、その実践者に実質的なコストを負わせることがしばしばある。これは、ヒトの文化的進化にともない、宗教に関連するコストは、そのコストを取り戻して平均化するような心理的、もしくは社会的な利益とトレードオフ的な関係にある可能性を示唆している。宗教的信仰や活動にともなうひとつの利益として、事実上ほぼすべての宗教が賞賛する満足の遅延、すなわち、すぐに手に入れることができる目先の小さな報酬を、しばらく後で手に入られるより大きな報酬のために我慢する能力、を考えることができる。本研究で、宗教的な関わりは、将来の大きな報酬のために目先の小さな報酬を見送る傾向と関連することが示された。さらに、この関係は、未来への指向性(未来はすぐにやってくるという主観的な感覚)によって部分的に媒介されることも示された。これらの関係の効果量は相対的に小さいものの、性別とビッグファイブを統制した場合でも同様の結果が得られた。

Tabuchi

☆集団にちょっと年上が入るだけで若者の危険行動は抑制される

Silva, K., Chein, J., & Steinberg, L. (2016). Adolescents in Peer Groups Make More Prudent Decisions When a Slightly Older Adult Is Present. Psychological Science, in press DOI: 10.1177/0956797615620379


(Abstract)

若者は一人でいるよりも仲間と一緒の方が無茶な決定をしがちであり,このことは目先のことしか考えていない危険な意思決定をすることが問題になる若者がいるような組織でしばしば課題となる。ここでは,若者の意思決定における仲間の影響が,ちょっと年上の人がいることで緩和されるのかについて調べた。対象者の危険行動が,3人の10代後半~20代前半の若者(18-22)1人の少しだけ年上の人(25-30)のグループとして混じるよりも,4人の10代後半~20代前半の若者のグループとして混じるほうが,よりひどくなるか否かを調べた。その結果,若者たちは,3人の同じ歳の仲間と一緒にいるほうが,1人でいるときよりも,より危険な行動をとり,すぐに報酬をもらえることに強くひかれていた。しかしながら,1人だけちょっと年上の人が入ることで,危険で即物的な行動決定が緩和されていた。労働チームに1人でもちょっと年上の人を入れることで,グループの意思決定が改善される可能性が示された。

☆人生満足度が低くてぐらぐらしている人は死亡リスクが高い

Boehm, J. K., Winning, A., Segerstrom, S., & Kubzansky, L. D. (2015). Variability Modifies Life Satisfaction’s Association with Mortality Risk in Older Adults. Psychological Science (ahead-of-print), 1-8. DOI: 10.1177/0956797615581491


(Abstract)

人生満足度の高さは長寿に関係しているといわれてきたが,人生を通した人生満足度の変動性が長寿に関係しているか否かは検討されてこなかった。ここでは,人生満足度とその変動性,そして両者の交互作用が,9年間のフォローアップでの生存率に関連しているかを調べた。対象者は50歳以上の4458名のオーストラリア人。フォローアップの間,546名が亡くなった。年齢を調整して分析した結果,人生満足度の平均値が高いほど,死亡リスクが低下していること,そして,人生満足度の変動性が高いほど,死亡リスクが増していることが明らかとなった。これらの結果は,フォローアップの期間中に,平均的な人生満足度が低く人生満足度の変動性が高い場合に,最も死亡率が高いという交互作用によって示された。平均的な人生満足度との関連において,人生満足度の変動性は,高齢期の生存率に関連していることが明らかとなった。心理変数の個人内の変動が健康に関連していることが新たに明らかとなった。

☆高齢者は他者からの拒絶に傷つきやすく,認知機能の低さや状況評価がそれを調整する

Cheng, Y. & Gruhn, D. (2015) Age Differences in Reactions to Social Rejection: The Role of Cognitive Resources and Appraisals. Journals of Gerontology: Psychological Sciences, 70(6), 830–839. doi:10.1093/geronb/gbu054


(Abstract)

【目的】社会的拒絶は人生において,全ての年齢の人が味わう社会的ネガティブな経験である。この社会的拒絶によって受ける影響が,高齢者と若者とで異なるか否かについては明らかにされていない。本研究では,直接的な拒絶に対する反応の年齢差と,認知機能や状況に対する評価の調整効果を調べた。【方法】83名の若者(1826)53名の高齢者(6086)が,もう一方の参加者から受容あるいは拒絶されるという状況下で,オンラインインタビューを受ける,という課題を行った。ここでは,インタビュー前後の,参加者の主観的感情と自己複雑性を調査した。【結果】高齢者は,若者よりも拒絶されたことによる傷ついた感情を報告した。この年齢差は,認知機能と状況評価によって調整されていた。高齢者の被拒絶群において,認知処理速度がより遅く拒絶をよりネガティブに評価している人の方が,より傷ついたという感情を報告していた。拒絶された高齢者は,被受容群の高齢者よりも,自己表出の複雑性が低かった。一方,若年者の被拒絶群と被受容群では,自己表出の複雑性に差はなかった。【考察】本研究の結果は生涯発達の理論に大筋合致しており,さらに,社会的拒絶の影響の年齢差を議論する際の,認知的処理の重要性について強調することが出来た。

Nakamura
1.認知的熟慮性テスト(CRT)において,正解した人でも,最初は直感的な選択肢に引きつけられる。(2/22発表)
Travers, E., Rolison, J. J., Feeney, A. (2016). The time course of conflict on the Cognitive Reflection Test. Cognition, 150, 109–118. doi:10.1016/j.cognition.2016.01.015
【コメント】 推論のプロセスが並行競合型(直感と熟慮の処理が同時に生じる)かデフォルト干渉型(まず直感の処理があって,それでは不十分な場合に熟慮の処理が直感の処理に干渉する)という2つのプロセスを切り分けるために,マウストラッキングを用いているのが斬新で面白かった。特に,アンビバレントな状態を測定するときのマウストラッキングの分析手法とは違って,マウスがどこに位置していたのかその順番と停留時間を使うなど眼球運動の計測で用いられるような分析を使っていたのが興味深かった。

2.システム2の意思決定には甘いレモネードが必要。(4/27発表)
Masicampo, E. J. & Baumeister, R. F. (2008). Toward a Physiology of Dual-Process Reasoning and Judgment. Lemonade, Willpower, and Expensive Rule-Based Analysis. Psychological Science, 19, 255–260.
【コメント】 システム2で処理されいるか否かを判断するために,魅力効果が生じるか否かを用いていたのが面白かった。神経科学的な知見から仮説を立てるという序論の流れも面白かった。

3.お腹が減っている時に買い物に行くと、たくさん買ってしまうぞ!(10/5発表)
Xu, A. J., Schwarz, N., & Wyer, R. S. (2015) Hunger promotes acquisition of nonfood objectsProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 112(9), 2688–2692. doi: 10.1073/pnas.1417712112
【コメント】 「飢え」は,本来であれば飢えを満たすための「食べ物」を取りに行こうとするシグナルであるが,このシグナルによって「食べ物」以外のものもたくさん獲ようとしてしまうとのこと。「飢え」を実験的に操作した実験のみならず,ショッピングモールでのレシートを使った研究など,多種多様な実験方法でアプローチをしているのが面白かった。

Miura

☆とても有能な仲間がいると心が折れるのは仕方のないことなんだ

Rogers, T., & Feller, A. (in press). Discouraged by peer excellence: Exposure to exemplary peer performance causes quitting.Psychological Science. DOI: 10.1177/0956797615623770

人はしばしば(そして時に介入のデザインによって)「模範となる仲間の成績」を目にさせられる.われわれは,2つの研究によって,「模範となる仲間の成績」に晒されることが,「ああ,とてもじゃないがこいつみたいにすごいことはできねぇ」と自覚する原因となることで動機づけや成功を減じうることを示した.さらにそのことは関連領域への帰属意識を削ぐことにもつながる.我々は,仲間の優秀さによってもたらされるこうした落胆―学生たちが相互評価を求められる際に(求めてそうしたわけでもないのに)仲間の能力を見せつけられてしまうというのはいかにもありがちだ―を検証した.研究1は自然実験で,巨大なオンライン公開講座の相互評価場面を用いた(N=5740).模範となる仲間の成績に晒されるとコース離脱率が高かった.研究2ではオンラインで追試実験(N=361)を実施してその心理的メカニズムを探求した.仲間の優秀者で「心が折れる」ことがもつ理論的含意は,社会的判断,社会的比較,参照バイアスといった研究に適用でき,また社会的比較を導入するような介入には実践的な意味で有用だろう.

☆「孤独な人ほど入浴したがる」研究にダウト

Donnellan, M. B., Lucas, R. E., & Cesario, J. (2015). On the association between loneliness and bathing habits: Nine replications of Bargh and Shalev (2012) Study 1Emotion, 15(1), 109.

Bargh and Sahlev(2012)は,社会的温かさの代償として温かいシャワーや風呂を使うという仮説を立てた.このアイディアを支持する結果として,彼らは孤独さ特性と入浴習慣の関連を見いだした2つの研究の結果を報告している.この関連の潜在的な実践性と理論的な重要性を確認するため,われわれは9つの追加実験を行った.われわれが開発した「入浴習慣」測定尺度と最新のUCLA孤独感尺度(オリジナル研究では初版が一部改変された10項目が用いられている)を用いた4つの研究の1153名のサンプルのデータをまとめて検討したところ,孤独さ特性と入浴習慣指標の間に関連を見いだすことはできなかった.同様に,オリジナルの研究と同じ測定尺度を用いた5つの研究の1920名のサンプルをアグリゲートした推定効果量の値は統計的に有意ではなかった.オリジナルの研究を含めたローカルなメタ分析の結果,推定効果サイズは信頼区間に0を含んでいた.したがって温かさに関して孤独さ特性と個人的な入浴習慣の強い結びつきがあるとするアイディアには「ダウト」である.

☆ネット検索することは,ただその行為をするだけで,人に自分の能力を過信させる

Fisher, M., Goddu, M. K., & Keil, F. C. (2015). Searching for explanations: How the Internet inflates estimates of internal knowledgeJournal of experimental psychology: General, 144(3), 674-687.

インターネットは世界のあらゆる知識を獲得するためのほとんどユビキタスな資源となった.そのことで,インターネットが認知にもたらす潜在的な効果について疑問が呈されるようになった.ここでは,知識探索にネット検索を利用することが,当該情報は「自分が知っている」ものだという誤った認識をもたらす幻想を生み出すことを示す.9つの実験にもとづいて,オンラインの情報探索は「私はたくさんの知識を<オツムの中に>持っていると勘違いして知識の自己評価を増し,fMRI画像で表現させると自分の脳が「めっちゃ活動してる!」とすら思ってしまうのである.
Comments