2012.4.23

2012/04/23 1:55 に Asako Miura が投稿   [ 2012/04/23 15:22 に更新しました ]

報告論文

三浦:Minson, J. A. & Mueller, J. S. (2012). The Cost of Collaboration: Why Joint Decision Making Exacerbates Rejection of Outside Information. Psychological Science, 23(3), 219-224. doi:10.1177/0956797611429132
一般に集団で作業すると個人よりもよりよい判断がなされると言われるが実際はそうではないことを実験的に検証.ペアは個人よりも外部情報に従う程度が低く,結果的に初期判断の良さを活かせていなかった.話し合うことが「文殊の知恵」ではなく「自分たちの判断の正確さへの確信の高さとそれへの固執」につながった.

村山さん:Pazda, A. D., Elliot, A. J., & Greitemeyer, T. (2012). Sexy red: Perceived sexual receptivity mediates the red-attraction relation in men viewing woman. Journal of Experimental Social Psychology, 48(3), 787-790. Elsevier Inc. doi:10.1016/j.jesp.2011.12.009
男性は赤色を身に着けている女性をより魅力的で性的に望ましいと評価するが、その関係性を媒介するものは性的受容性の程度である。

田渕さん:Weiss, D., & Lang, F. R. (2012). “They” Are Old But “I” Feel Younger: Age-Group Dissociation as a Self-Protective Strategy in Old Age. Psychology and Aging, 27(1), 153–163. doi: 10.1037/a0024887
高齢者は若年者や中年期世代よりも,自分の実年齢集団との同一化が自己感覚と関係しており,同一化レベルが低い高齢者は『まだ若い!元気だ!』と思っている.しかも,ネガティブな高齢者像を持っている高齢者は同一化レベルが低い.

末吉さん:Morey, A. C., Eveland, W, P, Jr., Hutchens, M, J. (2012). The "Who" matters: Types of interpersonal relationships and avoidance of political disagreement. Political Communication, 29(1), 86-103.
紐帯の強さと政治的不一致/対立回避との関連。強い紐帯は意見のやり取り(同意であれ非同意であれ)を通して帰属政党と政治的意見の一致につながるが、弱い紐帯ではこの効果が見られず、政治的対立を回避しようとしていた。

寺島君:Manago, A. M., Taylor, T., Greenfield, P. M. (2012). Me and My 400 Friends: The Anatomy of College Students' Facebook Networks, Their Communication Patterns, and Well-Being. Developmental Psychology, 48(2), 369-380. doi: 10.1037/a0026338
Facebookの利用が青年が大人へ移行していく過程において、どのように機能するかをしらべた。その結果、Facebookの利用は社会的サポートに対しての認知にプラスの効果を持ち、アイデンティティの構築にとって有用である可能性が示された。

担当者のコメント

三浦論文は,集団(この研究ではペア)の作業パフォーマンスをdisる研究の一例.課題が「当て物」みたいな類なので,こういう結果になっても仕方がないんじゃないかと思うし,そんなところでの「賢さ」をわれわれはそもそも集団に期待しているのか?と思う.しかしこの手の研究が,そう低くない頻度でScienceやPSSに自戒めいた立ち位置で登場するところを見ると,割とそう思い込んでる人が多いのか?

村山論文は,Elliotたちの赤シャツシリーズ.以前話題になったのは「女性は赤い服を着た男性を好む」だったが,今度は逆に男性が女性の…という組み合わせ.彼らはこのネタでどんどん論文を稼いでいるようだ.しかし女性→男性については日本で追試した人が複数いて,いずれも再現できなかったとのこと(例えば専修大学の大久保街亜さん).まあ,ネタはともあれ,研究の展開させ方は非常に手堅く,参考になる.

田渕論文は高齢者サンプルが少ない+お元気な方に偏るといういつもこの手の研究にありがちな問題点はつきまとうものの,さもありなんという結果.それよりも,自分のトシを認めたがらず足掻く時代を突き抜けて「超越」した仙人的存在の超高齢者さんたちがなぜそうなったのか(そういう素質があったからサバイバルしたのか,サバイバルする過程で超越したのか)が気になるところ.

末吉論文については,いつも感じる日米の政治意識研究の違いめいたものをやはり感じる.日本でこの手の研究をするとしたら一体どういう項目を使ってやるのか.政治意識研究をこれからの主領域にするなら是非精査しておくべき部分.あと,日本の政治史をきちんとおさえておくこと.

寺島論文は,青年期の発達心理学をやる人ならこういう見方をするだろうなあ,という意味では納得のアプローチと考察.収集したデータが主観的認知のみであるとはいえ,FB利用が本人の生活満足度より社会的サポートの認知に効いているということをそれなりに表現できている研究だったが,ちょっと分析が洗練されてればよかったのになあと思った.
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