2012.5.7

2012/05/07 3:56 に Megumi Tabuchi が投稿   [ 2012/05/07 17:29 に更新しました ]

報告論文

三浦先生:Laham, S. M., Koval, P., & Alter, A. L. (2012). The name-pronunciation effect: Why people like Mr. Smith more than Mr. Colquhoun. Journal of Experimental Social Psychology, 48(3), 752-756. doi:10.1016/j.jesp.2011.12.002

名前発音効果―発音しやすい名前は処理の流暢性が高いのでポジティブな印象評価を受ける―を4つの実験と1つのフィールド調査による多面的データで実証した研究.

村山さん:Williams, E. F., &Gilovich, T. (2012).  The better-than-my-average effect: The relative impact of peak and average performances in assessments of the self and others. Journal of Experimental Social Psychology, 48(2), 556-561. Elsevier Inc. doi:10.1016/j.jesp.2011.11.010

自分に関する予測はこれまでの経験から考えられる最高水準のものを参考にしてなされるが,他人に関する予測はその人の平均的水準を参考にしてなされる.

田渕:Turiano, N.A., Pitzer, L., Armour, C., Karlamangla, A., Ryff, C.D., & Mroczek, D.K. (2012). Personality trait level and change as predictors of health outcomes: findings from a national study of americans (midus). The Journals of Gerontology, Series B: Psychological Sciences and Social Sciences, 67(1), 4–12, doi:10.1093/geronb/gbr072.

性格特性の変化と健康の関連を,10年スパンの2時点縦断データを用いて検討したところ,誠実性の変化が身体的健康感を予測する等,両者の関係性が認められた.

 

末吉さん:Vavreck, L. (2007). The exaggerated effects of advertising on turnout: The dangers of self-reports. Quarterly Journal of Political Science, 2, 325-343. Doi:10.1561/100.0000.6005.

 

自己報告はすごくいい加減で,実際の行動レベルとは大きく隔たりがある.しかし,義務感・有効感・党派性をコントロールするとその隔たりはなくなる.つまり義務感・有用感・党派性が自分にあると思っている人ほど「過大報告」をしてしまうことによって,この隔たりはできているのだ.

 

寺島くん:Lin, K., Lu, H. (2012). Why people use social networking sites: An empirical study integrating network externalities and motivation theory. Computers in Human Behavior, 27, 1152-1161.

 

なぜ人はSNSを使い続けるのか,動機づけ理論とネットワーク外部性によって説明することを試みる.結果として,SNS利用による楽しさ,その有用性への認知,友人数や相補性(complementarit)がプラスに働いていた.これらの結果は男女によって異なっていて,SNS利用の動機づけに関しての性差というものの存在も明らかになった.

 

担当者のコメント

 末吉さんの報告論文では,政治的な刺激の効果というテーマにおいて,主観的な自己報告の偏りについての分析を行っていた.自己意識によって主観的な指標が左右されることはよく検討されるテーマで,政治科学に限らず重要なテーマだと思う.ただ,心理学以外の分野の方が書くとこういう表現になるのか,ということが分かり,処々に驚く論文だった.

 寺島くんの報告論文では,SNSの継続動機を,ネットワークと利用の利点から説明するモデルの検討を行っていた.結果は分かりやすく,男女間で異なる結果が出ていることも解釈としては納得できた.意味的にオーバーラップした項目を変数に用いることで説明率を上げているモデルは何度か見かけたことがあるが,今回もその傾向があるのでは,と思ってしまう説明率の高さだった.

 田渕の報告論文では,MIDUSのデータを用いて,性格特性の変化と健康指標との関連を調べていた.ライフスパンにおいて性格特性が変化するという主張のもと,10年スパンの2時点データを用いていたが,あまりにシンプルな分析なのでもう少し工夫すると説得力のあるものが示せるのでは,と思った.また,健康指標をすべて主観でとるのは避けた方がいいのでは,と思う. 

 村山さんの報告論文では,自己と他者についてそれぞれ異なる水準を用いて予測することを,3つの実験により示していた.一つのテーマについて実験手法を変えてアプローチしており,特に実験1の手法のアイデアや結果の示し方は興味深かった.テーマはシンプルで分かりやすいので,多くの場面に応用できそうな理論ではないかと思う.(本日の中芝写真も,誰がどの写真を選ぶかによってこの理論が証明される,かも,しれない.)  

 三浦先生の報告論文では,名前発音効果というベース理論について,4つの手法を用いてアプローチを行い,最後にフィールドでの証明を行っていた.村山さんの報告論文と同じく,一つのテーマについて方法論上の課題を一つ一つ克服しながら積み重ねられた論文で,お見事な印象だった.テーマも興味深く,ぜひ日本での苗字・名前研究に応用したいところだが,日本の多種多様で地域差もある苗字を研究対象とするのは,欧米研究で発生しなかった問題点が多々ありそうだ.

 

 

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