2013.3.4

2013/03/04 1:31 に kei terashima が投稿
【末吉さん】
Zhou, X., & Wu, Y. (2011). Sharing losses and sharing gains: Increased demand for fairness under adversity. Journal of Experimental Social Psychology, 47(3), 582-588.
ヘッドライン:利得と損失の不公平分配について、最後通牒ゲームからリジェクト率の高さと公平性評価の違いを検討、損失分配はよりリジェクトされていた。さらにIATから、「利得」は「公平」と、「損失」は「不公平」と強く結びついているという、両領域の根本的なメカニズムの違いについても言及した。

【寺島】
Gervais, W. M., & Norenzayan, A. (2012). Analytic Thinking Promotes Religious Disbelief. Science, 336(6080), 493-496.
ヘッドライン:分析的な思考は宗教的な信念を低下させる。

【田渕さん】
Ota, H., McCann, R. M., & Honeycutt, J. M. (2012). Inter-Asian Variability in Intergenerational Communication. Human Communication Research, 38, 172-198.
ヘッドライン:中年期の人と礼儀正しいコミュニケーションができれば、日本人の若者では会話の満足につながり、タイ人の若者では会話の楽しさにつながる。

【村山さん】
Bennett, A. K. (2008). Just World Jurors. The Jury Expert, 20(4), 35-44.
ヘッドライン:公正世界信念の研究の流れをざっと説明してみた。場合によっては訴訟戦略や陪審員選定過程で有用。

【三浦先生】
Kleisner, K., Priplatova, L., Frost, P., & Flegr, J. (2013). Trustworthy-Looking Face Meets Brown Eyes. PLoS ONE, 8(1): e53285.
ヘッドライン:茶色い目は信頼性を高く評定されている…ように見えるが、それは目の色ではなく、「茶色い目を持つ人の顔の造作的特徴」によるものであった。


【担当者コメント】

末吉さん論文は、損失は利得よりも拒否されやすく、また損失は「不公平」と利得は「公平」と関連付けられている、ということを最後通牒ゲームとIATを用いて実験的に示した。実験2では、最後通牒ゲームで受諾or拒否の結果、利得・損失がどうなるかを示されると拒否率が低い水準で抑えられることが示され、示唆的であった。説明があれば、ある程度の不公平さは許容されるのかもしれない。ただ「この条件でゲームをやったらこうなったよ」で終わるのではなく、現実場面への示唆を引き出すようなゲームの使い方は面白いね、という話に。

寺島論文は、認知プロセスの2重過程モデルを援用して、分析的なシステム2の思考が宗教的な信念を低下させる、ということを示した。…が、統制群と分析的思考群で宗教的信念を比較しただけで因果関係を主張するのはかなり厳しいし、だいいち「考える人」を30秒見ただけで宗教心が下がるなら半跏思惟像涙目である。宗教的信念の尺度も「信仰」と「存在そのものを信じること」がごちゃごちゃだし…。被験者にEast Asianが多く含まれていた上でのこの結果、という点はちょっと気になる。

田渕さん論文は、日本人とタイ人の世代内/間コミュニケーションを比較し、いずれも相手が高齢であるほど会話での敬意・回避・礼儀正しさが高かったが、若者にはタイ人の方が礼儀正しく、中年者には日本人の方が回避的であることを示した。場面想定法であることの限界はあろうが、中年期に目を向けた研究は新しい、という話に。確かに、家族以外では高齢者よりも中年者と会話をすることが多いかもしれない。ちなみにタイ語には敬語があるらしいので、礼儀正しさを考えたときには日本字と比較がしやすいのかもしれない、と思った。

村山さん論文は、公正世界信念に関する研究を概観し、陪審員制度との関連を論じたもの。Lernerから始まった公正世界信念は、自己-他者の2次元やImmanent-Ultimateを用いた多次元というように概念的な拡張がなされ、陪審員もその中でタイプ分けができるという。たしかに、自分の裁判の陪審員が内在的公正信念の高いタイプだったらちょっとやだなあ、とは思う。

三浦先生の論文は、茶色い目の人は青い目の人よりも信頼性を高く評定されるが、その効果は目の色と関連した顔の造作的特徴による、というもの。でもこういう話は、目の色のバリエーションが大きい国だからこそ可能で、日本では同じ議論をすることは難しいだろう、という話に。論文中に顔画像が示されていたが、確かに信頼性評定の低い顔は映画などの悪役顔のイメージに近いように思う。北に行くほど目の色素が薄い、という話があったけれど、雪国は雪の照り返しがかなり眩しいのでその辺りどうなのだろう。
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