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輪読ゼミ2012まとめサイト

2012.4~2013.3に大学院輪読ゼミ(月曜午後)で報告した論文の書誌情報をカテゴリ別にざっくり整理し,Abstract日本語訳を付しました.主に自分の情報整理作業のためのものであり,公開するのはその作業をなるべくいい加減にやらないようにする自分のための足かせです.内容に誤りはないと思いますが, 正確な情報は原文をご確認下さい. 書誌情報のうち特にdoiあたりはあったりなかったりです.輪読ゼミとは別に,神経科学・基礎系の同僚やPDと週1回開催しているジャーナルクラブKGBで報告した論文も,がっちり読んだものについては掲載しています.
2011まとめ 2013まとめ

★CMC関連

Forest, A. L., & Wood, J. V. (2012). 
Psychological Science, 23(3), 295-302.  doi:10.1177/0956797611429709 

有力メディアは「SNS(例:Facebook)は一生懸命社会的つながりを作ろうとする人々の対人関係ライフを豊かにするかもよ~」と喧伝してきた.こうしたサイトが提供する自己開示(親密性の発展には必須の要素)の機会は自尊心の低い人(ふだんは自己開示にためらいがちで,満足のいく関係を維持する事に困難を来している)にとって特に有益になりうるという.しかし,本当にそうだろうか.FBに投稿することは自己開示のリスキーさに対する知覚を減じ,自尊心の低い人がよりオープンに自己表現するようになるだろうか(多分違うぞ,と疑いの目).3つの研究で,こうした個人がFBを自己開示のために安全で魅力的なメディアだと見なしているかどうか,彼らのFBへの実際の投稿が社会的報酬をもたらしているかどうかを検討した.自尊心の低い人々は,FBを自己開示のために魅力的な手段だと認識しているが,ポジティブさが低くネガティブさが高いかれらの自己開示は他者からの不快反応を誘発していることが示された.

Christofides, E., Muise, A., & Desmarais, S. (2012). 
Social Psychological and Personality Science, 3(1), 45-54. doi: 10.1177/1948550611408619

あらゆる年代の人々がオンライン環境に接触し,他者との共有や接続がなされるようになった.しかし,とりわけこうした手がかりに特に影響を受け,オンラインを共有しているのは青年たちである.288名の青年と285名の成人を対象として,情報共有のためのFB利用とプライバシー保護のためのコントロールの利用に関する類似点と相違点を検討した.青年はFBでより多くの情報を開示しており,成人よりプライバシー設定を利用していなかった.こうした相違にもかかわらず,情報開示とコントロールを予測する要因は青年と成人で比較的類似していた.青年は成人よりもFBにより長い時間を費やしており,そのことが集団(青年vs成人)と開示の関係を部分的に仲介していた.自尊心は成人の方が青年より高く,そのことが集団と情報コントロールの関係を部分的に仲介していた.

Hughes, D. J., Rowe, M., Batey, M., & Lee, A. (2012). 
A tale of two sites: Twitter vs. Facebook and the personality predictors of social media usage. 
Computers in Human Behavior, 28(2), 561-569. doi:10.1016/j.chb.2011.11.001

SNSはあっという間に社会的相互作用と情報交換の主要ツールの1つとなりつつある.先行研究ではパーソナリティとSNS利用に関係があることが示されてきた.本研究では,300名の一般母集団サンプルを用いて,パーソナリティ(BigFive+社交性+認知欲求)と2SNSFBTwitter)の社会/情報的利用との相関を検証した.年齢と性別についても検討した.その結果,パーソナリティはオンラインでの社交性,情報探索/交換と関連していたが,先行研究が示唆するほどの影響力は持たなかった.さらに,FB/Twitterの選好性はパーソナリティの違いと関連していた.パーソナリティとFB/Twitter利用の関係には違いが見られた.

Stefanone, M. a., Kwon, K. H., & Lackaff, D. (2012). 
Journal of Computer-Mediated Communication, 17(4), 451-466.

私たちはSNSを利用することで巨大で異質な集団とつながることができる.これまでの研究では,つながっているという認知が心理的利益をもたらすとの示唆があるが,こうしたオンラインネットワークのもつ具体的な資源の本質についてはほとんど知られていない.本研究では,49名の参加者が道具的援助を求める588件のリクエストをFBフレンドに送信し,ネットワーク資源のアクセシビリティとオンライン社会関係資本を検討した.礼儀正しいリクエストのうち約80%は返答を得られず,橋渡し型/結束型資本の認知はサポート実行を説明しなかった.一方で,社会的に地位の高い人々は友人からの援助を得やすい傾向にあった.つまり,オンライン上に展開する広いネットワークのもたらす道具的な利益は大したことがないかもね.

Eysenbach, G. (2011).
Journal of Medical Internet Research, 13(4), e123.

よくつぶやかれる論文は,よく引用される.論文刊行直後数日のツイート数は,論文のインパクトを測定する「ソーシャル」な指標として使える.

Shapiro, R. B. & Ossorio, P. N. (2013).
Science, 339(6116), 144-145.

SNS研究は増えつつあるがガイドラインがまだ明確ではない.特に青少年を対象としたデータ収集に際する留意点を解説.全体的には「ユーやっちゃいなよ」的な論調のように思える.

Amit, E., Wakslak, C., & Trope, Y. (2012).
Personality and Social Psychology Bulletin, 39(1), 43-56. doi: 10.1177/0146167212460282

本研究では,対人コミュニケーションの際のメディア選好に対する距離の効果を検証した.5つの実験の結果,人が他者とのコミュニケーションの際に画像を使おうとする選好は(言葉と比較すると)時間的,社会的,地理的近接性が高い時に(遠いときと比べると)高まることが示された.対照的に,言葉への選好は距離の遠い人とのコミュニケーションで増加した.第6実験は,コミュニケーションメディアは距離の選好に影響する,すなわち距離の離れた対象者へのメッセージ伝達への選好は(近接した対象者への場合と比較すると),画像によるものよりも言語によるもので高くなる,ことが示された.これらの知見は,画像は近接他者とのコミュニケーションに,言葉は遠い他者とのコミュニケーションに適していることを反映している.これらの知見の含意を,解釈レベル理論,身体化された認知,言語発達,子どもの社会的スキルといった観点から議論した.

★Group Work/Creativity/Collabotation関連

Minson, J. A. & Mueller, J. S. (2012). 
Psychological Science, 23(3), 219-224. doi:10.1177/0956797611429132

これまでの研究者たちは,何らかの集団特性が集団成員による外界情報の軽視をもたらし,その行動がパフォーマンスを低下させると主張してきた.われわれは,個人ではなく共同判断のプロセスこそが外的視点を短絡的に軽視する要因であることを示す.仲間たちによって行われた数的判断を呈示された2名集団の成員は,個人で作業する場合より示された判断を有意に軽視していた.仲間からの入力を利用する意思に見られたこうした差異は,2名集団の成員による自分たちの評価の正確さに対する信頼性の高さによって仲介されていた.さらに,2名集団は自分たちの評価の相対的な正確さの判断が優れているわけではなく,アドバイザーによる評価を個人に関するものと比較した場合も同様であった.分析の結果,個人と比べて2名集団は正確さのコストに苦しんでいることが分かった.もし2名集団が,単独で作業している個人に対するのと同等のウェイトを仲間の入力に置けば,評価の修正は有意に正確さを増すだろう.

Leung, a. K.-Y., Kim, S., Polman, E., Ong, L. S., Qiu, L., Goncalo, J. a., & Sanchez-Burks, J. (in press). 
Psychological Science. doi:10.1177/0956797611429801

創造性は高度に求められているスキルである.創造性を閃かせるためのお定まりのアドバイスにはメタファーの形を取るものがたくさんある.人々は創造的なブレイクスルーを得るために「箱の外で考える(型にはまらない考え方をする)」こと,問題を認識する際に「片方を考え,その後にもう片方を」考えること,「まず2つを,そして2つを一緒にする(見聞きしたことを考え合わせて推測する)」ことなどを推奨される.これらのメタファーは,具体的な身体経験と創造的認知のつながりを示唆している.身体的認知研究における身体-心の結びつきの理解に関する近年の進歩に触発されて,創造性に関するメタファーを実演してみることで創造的問題解決が促進されるかどうかを検討した.5つの研究の結果,創造的メタファーを物理的/心理的両面で実体化すると,問題解決における収束的/拡散的思考(流暢性,柔軟性,独創性)が促進されることが示された.主に既有知識をプライムするような身体化に注目していた先行研究を超えて,われわれの研究は,身体化が新しいアイディア生成とそれらの組み合わせを促進するような認知的プロセスをも活性化させることを初めて示したのである.

Kohn, N. W., Paulus, P. B., & Choi, Y. (2011). 
Journal of Experimental Social Psychology, 47(3), 554-561.  doi:10.1016/j.jesp.2011.01.004

ブレーンストーミングでのアイディア創出過程を探求するために2つの実験を実施した.ブレーンストーミングの重要性はよく言われるが,実験的に検討されることはなかった.第1実験では,個人と集団の「ブレーンストーマ―」が「アイディア生成→それらを組み合わせて新たなアイディア生成」を行った.組み合わせ過程は,参加者たちが単独あるいは集団でブレーンストーミングを以前に経験したことがあるかどうかと,組み合わせ期間のフェーズ(初期か後期か)によって影響されていた.第2実験では,参加者は珍しい/平凡なアイディアリストを呈示され,個人/集団でそれらを組み合わせて新たなアイディア生成をした.集団条件では名義集団よりもアイディア生成数は少なかったが,珍しいアイディアを組み合わせる条件ではより新奇かつ実用的なアイディアを生成した.これらの知見より,集団は,互いのアイディアにもとづいて新しいアイディアを生成する際の交換過程においてメリットを得られることが分かり,こうした点が集団によるアイディア生成と評価に関する先行研究の文脈に沿って解釈された.

Baruah, J., & Paulus, P. B. (2011). 
Journal of Experimental Social Psychology, 47(6), 1070-1077.  doi:10.1016/j.jesp.2011.04.007

グループがある特定のトピックに関して創造的なアイディアを出そうと集うとき,その問題の多くの側面や要素を考慮できる.こうした選択肢の多さは確かなものであり,集団がその問題の注目すべき特定の側面やカテゴリを発見することに役立つ可能性がある.しかし,集団成員にとってその問題の同じ要素に同時に注目するのがベストなのか,それとも別々の要素に注目したほうが良いのかははっきりしない.さらに,この種の注目のインパクトは,異なる要素同士が意味的に似ている程度に依存する可能性がある.意味的に関連の深い領域のアイディアを生成する方が容易だが,意味的に関連のない領域はより創造的なアイディア生成を刺激するかもしれない.本研究では,課題の要素やカテゴリの割当てと割当てたカテゴリの関係性の程度が集団創造性にもたらす効果を包括的に検証した.セッション初頭に全員一緒に小さなカテゴリーセットを割り当てられた集団の方が,各メンバーにユニークなカテゴリが割当られた集団よりも,より多くのアイディアを生成し,より多くのカテゴリを探索し,類似したアイディアを高度にクラスタリングしていた.関連性の低いカテゴリを割当られた集団は関連性の高いカテゴリを割当られた集団よりも多くのカテゴリを精査していた.本研究は,学際的/拡散的な集団やチームは,創造セッションの初期フェーズにおいて,ある程度共通したフォーカスを持った上で,自分たちが取り組む問題のもつ相互に関連性の低い諸側面に注目すべきであるということを示唆している.

Baird, B. Smallwood, J., Mrazek, M.D., Kam, J., Franklin, M.S.& Schooler, J.W. (2012).
Psychological Science, 23(10), 1117-1122. doi: 10.1177/0956797612446024

「創造的思考はしばしば無関連な思考の流れの中でひょいと思い浮かぶ」という逸話は太古の昔からあるが,この潜在的に重要なインスピレーションの源に関する実証的研究はかつてなかった.われわれはインキュベーション(孵化)パラダイムを用いて,有効な創造性課題(UUT)のパフォーマンスが,困難な課題を遂行している時か,上の空状態mind wanderingを最大化するような非困難課題を遂行している時のどちらで促進されうるかを検討した.困難課題条件,安静条件,ブレイクなし(インキュベーション期間なし)条件と比べて,インキュベーション期間に非困難課題を遂行すると,事後のパフォーマンスが向上した.しかも,インキュベーション期間後のパフォーマンス向上の文脈は,上の空傾向の強さと関連しており,UUTについての顕在的に直接的な思考の多さとは関連がなかった.上の空状態を許すような単純な外的external(多分創造性課題と全然関係のないという意味か)課題を遂行することが創造的な問題解決を促進することが示唆された.

★Social Neuroscience関連

Tamir, D. I., & Mitchell, J. P. (2012).
Disclosing information about the self is intrinsically rewarding. 
Proceedings of the National Academy of Sciences, 2012. doi:10.1073/pnas.1202129109

人間の話すことの30-40%は他者に自身の主観的経験を伝えることに費やされている.なぜこんなに自己開示をしたがるのだろう? 本論文で,われわれは「人は自身の考えや感情を他者に伝達する機会に高い主観的価値を置き,そうした行為は報酬系の神経/認知的メカニズムと関連している」とする最近の理論を検証する.4つの研究の結果,この仮説は支持された.自己開示は中脳ドーパミン系を形成する脳領域(側坐核NAccと腹側被蓋領域VTA)の活性レベルの高まりと強く関連していた.さらに,自己開示をするためなら金銭取得を喜んで断念してもいた.2つの追加研究により,これらの効果は,個人が「自己参照的な思考」と「他者との情報共有」に置く価値に独立的に根ざしていることが示された.総じて,これらの知見は,個人的経験に関する情報を伝達しようとする人間の傾向は,自己開示と関連する内発的価値によって生じている可能性を示唆している.

Young, C. B., Wu, S. S., & Menon, V. (2012).
Psychological Science, 23(5), 492-501. doi: 10.1177/0956797611429134

数学不安とは,数学的な問題解決をする状況に対するネガティブな情動反応のことをいう.数学不安は個人の長期的な職業的成功に有害な影響をもたらすが,神経発達的な起源は明らかではない.われわれは,7~9歳の子どもを用いたfMRI研究により,数学不安は右扁桃体(ネガティブな情動処理と関連する部位とされる)における活動亢進と関連があることを示した.さらに,数学不安は数学的推論の際の後頭頂葉と前頭前野背外側部の活動減退とも関連していることが分かった.多変量解析による分類の結果,明確なマルチボクセル活動パタンがいくつか示され,それらは右扁桃体の全体的な活動レベルとは独立していた.さらに,ネガティブな情動の調整をおこなう扁桃体と前頭前野腹内側部の間のeffective connectivity(ある部位からある部位への影響)が数学不安をもつ子どもにおいて高まっていた.これらの効果は数学不安に特有のもので,一般的な不安や知能,ワーキングメモリとは関連がなかった.本研究は,初めて数学不安の神経基盤を特定したものであり,数学不安の早期発見と治療に有意義である.

★その他,雑多な関心のままに…

Boase, J. & Ikeda, K. (2012). 
Human Communication Research, 38(1), 95–119.

日本では対人的集団主義(interpersonal collectivism)が優勢だとする議論は,いつも決まって「日本人のコミュニケーションネットワークは西洋諸国のそれよりも長続きし,頻繁に接触があり,血縁+職業的な紐帯が優勢である」という仮定の下に成り立っている.しかし,この仮定は国家的代表性の高いデータによって裏付けられてこなかった.われわれの分析は2003年のJGSS2004年のAGSSで収集されたコアディスカッションネットワークのデータに基づいて行われた.分析結果は,接触頻度についても血縁+職業的な紐帯の優越性についてもこの仮定を支持しなかった.しかし一方,日本人のコアネットワークはアメリカ人のそれよりも長続きするという意味では,対人的集団主義傾向が高いことが示された.

Gray, H. M., Ishii, K., & Ambady, N. (2011).
Personality & Social Psychology Bulletin, 37(11), 1438-1448. doi:10.1177/0146167211420167

3つの実験により,悲しみが社会的つながりへの欲求に及ぼす効果を検討した.悲しみが,人を「他者と接触して自身の社会的つながりの現状レベルに関連する情報に選択的に注意を向ける」ように動機づけることによって適応的な機能を果たすという仮説を立てた.仮説どおり,社会的喪失に関する情緒的描写によって導出された悲しみは,(a)非言語的手がかりや個人の社会的つながりの現状レベルに関する重要な情報源に対する注意(実験1),(b)社会的行動に携わりたいという欲求(実験2)を高めることが観察された.実験3では,社会的喪失を想像することによってもたらされた悲しみがこの効果パタンを特に顕著に示すことが見いだされた.失敗を想像することによってもたらされた悲しみは,動機づけに対して異なる効果をもち,非言語手がかりへの感受性には効果をもたなかった.これらの結果は悲しみの普遍性に対する機能的解釈を支持・洗練するものである.

Laham, S. M., Koval, P., & Alter, A. L. (2012). 
The name-pronunciation effect: Why people like Mr. Smithmore than Mr. Colquhoun.
Journal of Experimental Social Psychology, 48(3), 752-756. doi:10.1016/j.jesp.2011.12.002

名前は豊富な情報源である.性別,民族,あるいは階級のシグナルとなりえるし,温かさ,明るさから道徳性にいたるまでパーソナリティ特性を暗示する可能性もある.しかし名前はひどく基礎的な点の違いも持っている.それは発音しやすいかどうかである.5つの研究により,名前発音効果(name-pronunciation effect)―発音しやすい名前とその持ち主は発音しにくい名前よりもよりポジティブに判断される―が示された.研究13では,発音しやすい名前は発音しにくい名前よりポジティブな印象が形成されることが示された.研究4ではこの効果が内集団ターゲットに一般化可能であることが示された.研究5では名前発音効果のもつ重要な現実社会への含意―法律事務所において発音しやすい姓の人物はより高いポジションに就いていること―が明らかとなった.こうした効果は名前の長さや珍しさ,典型性,外来性,表記の規則性などとは独立に得られた.本研究は,情報豊富な印象形成文脈における処理の流暢性(processing fluency)の有効性を示した.

Piff, P. K., Stancato, D. M., Côté, S., Mendoza-denton, R., & Keltner, D. (2012). 
Proceedings of the National Academy of Sciences, 109(11), 4086-4091.

実験とフィールド法による7つの研究により,上流階級民は下流階級民よりも非倫理的な行動をすることが示された.研究12では,上流階級民は下流階級民より運転中に違法行為をしやすかった.フォローアップのための実験室研究では,上流階級民は下流階級民よりも,非倫理的な意思決定傾向を示し(研究3),価値のある物を他者から取り(研究4),交渉の際に嘘をつき(研究5),賞品獲得のチャンスを増すためにごまかしをし(研究6),仕事における非倫理的な行動を是認した(研究7).また,こうした上流階級民の非倫理的傾向を説明する仲介・媒介要因として,強欲さ(greedy)に対する好意的態度があることが示された.

Feldon, D. F., Peugh, J., Timmerman, B. E., Maher, M. a, Hurst, M., Strickland, D., Gilmore, J. a, et al. (2011). 
Science, 333(6045), 1037-9. doi:10.1126/science.1204109

科学,技術,工学,数学(STEM)の大学院生がよく推奨されることに「研究指導を受けることに最大限注力し,教育義務は最小化せよ」というものがある.しかし,研究に従事している学生たちを相手して教えるプロセスは重要なリサーチスキルの応用実践の機会を与えてくれる.あるパフォーマンスrubric(慣習?)にもとづいて,キャリアの浅い大学院生たち2グループ(教育と研究両方の義務のあるグループと,研究義務のみのグループ)の研究計画書にあらわれる方法スキルの質をアカデミックイヤーの最初と最後で比較した.集団間の既存の差を統計的に統制して分析した結果,教育と研究実施を両方した学生たちは,検証可能な仮説の生成や妥当な実験計画を立てる能力の向上が有意に大きかった.これらの結果から,教育経験は必要不可欠な研究スキルの向上にかなり寄与しうることが分かった.

Abel, E. L., & Kruger, M. L. (2010).
Psychological Science, 21(4), 542-4. doi:10.1177/0956797610363775

情動は人間のパーソナリティや生活のあらゆる側面に影響する.ポジティブな情動の持ち主はネガティブな情動の持ち主より幸せなパーソナリティだし人生だってうまくいっちゃうんである.そしてその情動のバロメータはなんと言っても顔面表情だ.そしてポジティブ情動のバロメータとして使われる顔面表情といえば笑顔の強さだ.本研究では笑顔の強さと生物的な成果,すなわち「寿命」を関連づけて考える.もちろんいい笑顔だったら長生き,なんて単純な関係だけを考えるわけではない.他の関連する要因だって加味するよ.そのためにMLBの選手名鑑を使うのだ.これなら成績等々彼らが長生きするかどうかに関わる多くの要因に関するデータも一緒に取れちゃうからね!

Sayette, M. A, Creswell, K. G., Dimoff, J. D., Fairbairn, C. E., Cohn, J. F., Heckman, B. W., Kirchner, T. R., et al. (2012).
Psychological Science, 23(8), 869-878. doi:10.1177/0956797611435134

我々が取り組んだのは,長年アルコール問題の研究者たちが抱き続けてきた根本的な疑問に答えんがための小集団を対象とした情動に関する研究である.飲酒の強化効果の根底にある特定のメカニズムはなんだろうか.最大の,そしてまだ着手されていないアルコール管理?administration研究の一つとして,われわれは新しいグループ形成パラダイムを用いて,アルコールの社会情緒的な効果を検討した.720名(男女半々)の社会的飲酒者が見知らぬ者同士の3名集団を形成し,中程度のアルコールか,プラセボか,統制飲料を飲みながら36分間を過ごした.社会的相互作用をビデオ録画し,相互作用中の顔面と言語行動について時間とシーケンスがコード化された.アルコール消費は個人/グループレベルのポジティブ感情関連行動を増やし,個人レベルのネガティブ感情関連行動を減らし,自己報告によるbondingは強まっていた.これらの結果から,アルコールは集団形成中の絆を深める役割を果たすことが明らかになった.社会的文脈における非言語的な反応の評価が,アルコールの効果を評価する研究の新しい地平を開いたのだ.

McCabe, D. P., & Castel, A. D. (2008).
Cognition, 107, 343–352. doi:10.1016/j.cognition.2007.07.017

脳画像は認知に関する研究に対する大衆の認識に特別に説得的な効果をもつと信じられている.3つの実験により,認知神経科学研究を要約した文章に脳画像を付して呈示すると,棒グラフや脳活動のトポグラフィマップを付した場合,あるいはそうした画像なしの場合よりも,その文章で論じられている内容の科学的合理性に対する評価が高かった.これらのデータは脳イメージング研究の魅力と信頼性の一部は実際の脳画像自身がもつ説得力によるものだという意見をサポートするものである.脳画像は抽象的な認知プロセスに生理的基盤を与え,そのことが人々のもつ「認知的現象の還元主義的な解釈への親近感」にアピールするのだろう.

Lisa L. Shu, Nina Mazar, Francesca Gino, Dan Ariely, and Max H. Bazerman (2012).
Proceedings of the National Academy of Sciences109(38), 15197–15200.

ビジネス・行政場面で要求される多くの文書(例えば税金や保険の還付金申請書)は正直な報告に依拠している.正直な内容であることの証明に最後にサインをすることが求められる場合が多い.しかし,人々は少しでも得をしようとしてずるをすることがある.それが積み重なると社会にとって大きな負担となる.われわれは不正直をさせないための簡単な方法を編みだし,それを検証した.サインを文書の最後ではなく最初にする,つまり現状とは逆順にするという方法である.実験室実験とフィールド実験によって,「ずるができる機会」の前にサインをした方が,不正直さを最大限減らすことが必要な場面で倫理を顕現化させることが示された.

Sugawara SK, Tanaka S, Okazaki S, Watanabe K, Sadato N (2012).
PLoS ONE, 7(11): e48174. doi:10.1371/journal.pone.0048174

運動スキル記憶は,練習中は脆弱な形式でオンライン符号化され,その後,オフライン固定により安定した形式に変換される.このオフライン固定は学習の成功にとって重要な行動段階である.褒めるという社会的報酬は,動機づけを高めることによって練習量を増加させ,運動スキル学習を促進させると考えられる.しかし,固定に対する褒めることの効果は不明である.そこで我々は「運動訓練後に褒めることは直接的にスキルの固定を促進する」という仮説を検証した.48名の健康な参加者はシーケンシャルな指タッピング課題の訓練を受け,訓練後に「自分自身の訓練パフォーマンスを褒められる」「別の参加者のパフォーマンスを褒められる」「褒められない」の3群に分けられた.自分自身のパフォーマンスを褒められた参加者は,学習したシーケンスを突然再生するよう求められた際のパフォーマンスにおいて,他2群の参加者よりオフライン固定の割合が有意に高かった.その一方で,新奇なシーケンスやランダム順のタッピングの平均パフォーマンスについては3群間で差はなかった.これらの結果から,褒めることがもたらす運動スキル記憶の向上は,フィードバック-インセンティブメカニズムによるものではなく,オフライン固定プロセスに対する直接的な効果によるものであることが示された.

Oishi, S., Graham, J., Kesebir, S., & Galinha, I. C. (under review).
Concepts of happiness across time and cultures.
Personality and Social Psychology Bulletin.

我々は幸福という概念の文化的・歴史的差異を探究した.まず,幸福という概念における文化的類似点と相違点を理解するために,多様な言語のもっとも権威ある辞書における幸福の定義を分析した.次に,アメリカ英語における歴史的変化を理解するために,1850年から現在までのウェブスター辞書における幸福の定義を分析した.さらに,1790年から2010年までのアメリカ大統領による一般教書演説(http://www.presidency.ucsb.edu/sou.php#axzz2BiJ3M3N8)をコーディングした.最後に1800年から2008年までの「幸福な国」vs「幸福な人」というフレーズの出現状況をGoogle Ngram Viewer(http://books.google.com/ngrams; 52億冊の本の5000億語を集めたGoogleのデータベース)で検討した.文化と時を超えて,幸福は幸運や好ましい外的状況として定義されることがもっとも多かった.しかし,アメリカ英語においては,この定義は好ましい内的感情状態に注目した定義に置き換えられていた.我々の知見は,心理学諸概念を研究する際の歴史的な視点の価値を強調するものである.

Hart, W. (2012).
Psychological Science, 24(1), 19-26. doi: 10.1177/0956797612446351

本研究では,過去の感情経験の描写に用いられる動詞が現在のムードと幸福感に及ぼす影響を検証した.ポジティブな経験を未完了(imperfective)相(つまり進行形)を用いて記述した参加者は,完了(perfective)相を用いて記述した参加者よりも事後によりポジティブなムードと大きな幸福感を報告した.同様に,ネガティブな経験を未完了相を用いて記述した参加者は,完了(perfective)相を用いて記述した参加者よりも事後によりネガティブなムードを報告し,幸福感が低かった.これらの効果は「情動経験は未完了形で記述する方が完了形で記述するよりも記憶を強化する」という知見を再現している.言語の形式的な特徴が過去の感情反応の復元と幸福判断の両方を形成すること,そして,主観的幸福感の向上に実践的に応用できる可能性を示した.

Kleisner K, Priplatova L, Frost P, Flegr J (2013).
PLoS ONE, 8(1): e53285. doi:10.1371/journal.pone.0053285

茶色い目が信頼性の知覚に影響するかどうかを検討した.男女各40名顔写真の信頼性を評定させた.目の色は有意な効果を持ち,茶色い目の顔は青い目の顔より高い信頼性評定を得た.しかし幾何学的形態測定学により,目の色と顔の形に有意な相関があることが示された.顔の形も信頼性評定に影響することが分かったが,これは男性の顔についてのみ見られ,女性の顔の場合は有意ではなかった.信頼性の知覚が目の色と顔の形のどちらに先に影響を受けるかを検証するために,同じ男性の顔の目の色を変えた刺激写真を作って再度データを収集した.すると目の色は信頼性の知覚に効果を持たなかった.これらの結果から,茶色の目の顔は青い目の顔よりも信頼性を高く評定されるが,その効果は目の色自体がもつものではなく,茶色い目の顔にありがちな造作的特徴によるものであることが分かった.
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