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新聞掲載

2015/03/10 15:03 に Asako Miura が投稿   [ 2015/03/15 20:16 に更新しました ]
朝日新聞デジタル《メディアタイムズ》に掲載された記事「少年事件、ネット上で無責任な「犯人捜し」」にコメントを寄せています.
3月11日付東京/大阪本社版朝刊にも,同趣旨(文言が多少縮約されています)の記事が掲載されています.

以下に,全文を引用します.画像は大阪本社版の新聞記事です.

《メディアタイムズ》

「【拡散希望】こいつらが犯人」――。川崎市の多摩川河川敷で中学1年の上村遼太さん(13)が殺害された事件では、発生直後からネット上で「犯人捜し」が始まった。容疑者とみられる少年の写真や名前、さらには無関係とみられる人の情報までが瞬く間に拡散した。法律の専門家は「名誉毀損(きそん)にあたる可能性がある」と指摘する。

「5人が犯人だ」。先月23日ごろ、「犯人」を特定した、という情報がツイッターなどで広がった。上村さんの遺体が見つかり、3日後のことだ。

容疑者とみられる少年の名前と写真が投稿され、次々と転載された。事件と関わりのない少年の顔写真も拡散し、写真は今もネット上に残る。

「生中継」まであった。先月27日、逮捕された少年の自宅とされる場所からの中継動画がネットに流れた。家の表札や出入りする人、取材に訪れた記者らの姿が映り込んだ。配信に使われた「ニコニコ生放送」を運営するドワンゴは2日、「プライバシー侵害」にあたるとして、動画の閲覧ができないようにした。

ネット上の情報削除に詳しい神田知宏弁護士は「注目事件は、被疑者が誰かネット上で暴く動きが必ず出るが、事実でなければ名誉毀損罪となる可能性が高い。たとえ事実であっても、少年犯罪の場合、名誉毀損罪、プライバシー侵害にあたる可能性がある」。画像などのリツイートや転載も賠償責任を問われるかもしれないという。

5日発売の「週刊新潮」は逮捕されたリーダー格の少年の実名、写真を掲載。だが少年法61条は、「氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又(また)は写真を新聞紙、その他の出版物に掲載してはならない」と定める。

2012年の大津市の中学生いじめ自殺問題では、女性タレントが自身のブログにネットから引用した女性の写真を載せ、加害者の少年の母親を非難。女性が「無関係なのに加害少年の母親と誤信された」として訴え、一審は女性タレントに165万円の支払いを命じ、二審で和解した。

「誰もがメディアになれる時代だが、自分の行為が、訴えられるリスクがあることを自覚すべきだ」と神田弁護士。

それでも、情報を拡散する心理とは何なのか。

神田弁護士は「少年法による匿名性ゆえに、ネットでの私的制裁(私刑)が助長されている側面はある。『自分は事実を知っている』という思いが、公開への動機付けになっているのではないか」。

ネット上の人間行動を研究する三浦麻子・関西学院大教授(社会心理学)は「人は自分の身の回りのリスクに関わる情報を、より知りたがる」と言う。「興味本位もあるだろうが、この事件を恐れや脅威の対象と見て、他人も知る価値があると思って拡散する人もいる」

命や暮らしに関わる情報だからと、真偽不明の情報が転載され、デマも流れた例は、東日本大震災直後にもあった。「危険の感知レベルが上がると、危険や恐怖に関する情報の拡散に歯止めがかからなくなる」

何かのきっかけで過去の情報が掘り起こされ、拡散される時代。情報を発信する側にも責任が伴う、と三浦教授は指摘する。

「人は忘れても、ネットは忘れてくれない。ツイッターでもフェイスブックでも、自分だけでなく、家族や知人のプライベートまで勝手にさらしていないか、考えた方がいい」

(斉藤佑介)
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