挑戦的萌芽研究「社会心理学研究の再現可能性検証のための日本拠点構築」

本研究計画は,心理学,特に社会心理学領域における,実験結果の再現可能性の検証を組織的に実施する世界規模の再現可能性検証プロジェクトに参画するために,日本における拠点を構築するものである.具体的には,(1)追試研究の実施の拠点となる研究者ネットワークを形成し,(2)標準化された刺激・手続きの日本語版を作成し,(3)手続きの共有と結果の蓄積・公開をインターネット上で実現する.実験結果の再現性は,心理学が科学たりえるための必須条件でありながら,現在,十分に保証されているとは言い難い.こうした現状に鑑み,本計画の実施により,心理学の科学性を保証する試みに日本人研究者が積極的に関与し,もって科学一般における心理学のプレゼンス向上に寄与することを目指す.[KAKEN]

キーワード:社会心理学,心理学実験,再現可能性,追試

以下で,最新の活動状況や成果について随時お知らせします.


  • 第442回KSP(関西社会心理学研究会)
    2017年3月11日に開催された第442回KSP(関西社会心理学研究会)で,科研費研究の成果報告を中心とする研究発表を行いました.

    【日時】 2017年3月11日(土)14:00~17:30
    【場所】 関西学院大学 大阪梅田キャンパス 14階 1408教室

    【発表題目】直接的追試を複数繰り返すことの有用さと困難
    【発表者】 藤島喜嗣(昭和女子大学)・樋口匡貴(上智大学)
    【発表概要】
     社会心理学研究の再現性が問題になっており、追試の重要性が指摘されている。たとえば、「社会心理学研究」誌で早期公開された石井・竹澤(2017)が、Ames(2004)の追試を複数回行い、知見の再現性を議論している。同様に、藤島や三浦はFujita et al. (2006)の直接的追試を行い、少なくとも3つの実験データを得ている。それぞれの結果は、仮説支持の方向1件と仮説と正反対の結果2件であり、実験単独の結果からは再現性に対する結論は下せない。これらの事例が示唆することは、メタ分析的視点に基づいて再現性を議論することの重要性であり、(1) 強い検定力を保証した (2) 直接的追試を(3)相当数繰り返し実施することの必要性である。
     上記を実現するためには、マテリアルとデータの共有といった研究のオープン・サイエンス化と、あらゆる追試データの保存と公開を促進する事前登録(Preregistration)が欠かせない。この方法論は、文化差研究を考える上でも示唆的である。同一手続きで日米比較をする時に、各文化で実験を1つずつするだけでは不十分であることを示唆しており、文化心理学の進展にも寄与するはずである。
     その一方で、強い検定力を保証した直接的追試を複数繰り返すことは、多くの労力を要する。学部生を含めた研究室プロジェクトは教育的効果も期待できるが、相応の困難が存在する。樋口らの研究室での取り組みは、学生の積極的関与が認められるときにこそ直接的追試が困難になるという問題に直面した。さらには、有限な労力をどのようなトピックに割くべきかという問題にも直面している。社会心理学において追試すべき「巨人の肩」はどれなのか、再現性を確認しておく必要のある研究とない研究をどう考えるのか、「社会心理学」という研究領域としてどんなトピックが重要なのかに関して明確な指針は存在しない。
     今回の報告を通じて、社会心理学の科学性を再現性を担保するための苦闘ぶりと、今後どのように研究を進めるべきかについて議論ができるとうれしい。そもそも再現性を担保する必要等ないという議論もあるかもしれない。そのような「そもそも論」も歓迎する。

    ※関連するソーシャルメディアのツイート(参考情報あり)はこちらをご覧下さい.
    ※当日資料はこちらからダウンロードできます.
    投稿: 2017/03/12 15:37、Asako Miura
  • 講演会/ワークショップ「より有益で、より効率的な研究をデザインしよう」
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    当時のスライド資料をDr. Lakensより提供いただきました。こちらよりご利用下さい。

    当日参加者のTweetのまとめは、こちら。Dr. Lakensが触れていない日本語文献なども紹介されています。
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    近年、心理学における実験結果の再現性が疑われる事態が生じています(Open Science Collaboration, 2015, Science)。この心理学の危機に対して、従来の心理学研究における慣習の問題点と、その解決法が指摘されてきました(参考:池田・平石, 2016 in 心理学評論特集号)。今回、科研費・挑戦的萌芽研究「社会心理学の再現可能性検証のための日本拠点構築(代表:三浦麻子・関西学院大学教授)」と慶應義塾大学・三田哲学会の共催により、こうした動きの最前線で活躍されているDaniel Lakens博士(Eindhoven University of Technology)を招いて、講演会とワークショップを企画しました。

    従来のやり方をただ批判するのでは、研究活動がただ息苦しくなるだけです。しかし、実は昨今の議論を活かすことで、よりinformativeかつ、よりefficientな研究デザインが可能になる可能性があるのです。今回はその内容について実践的な講義と、発展的な議論を予定しています。奮ってご参加下さい。

    講演・ディスカッションは英語で行われます。ディスカッションでは、企画チームや、利他的な参加者によるサポートがあることでしょう。

    Designing more informative and more efficient studies
    Dr. Daniel Lakens (D.Lakens@tue.nl)
      Assistant Professor at Eindhoven University of Technology, Holland

    Recent discussions in psychology have led researchers to acknowledge that the inherent uncertainty encapsulated in an inductive science is amplified by questionable research practices. In the morning of this workshop, I will explain how to draw better inferences from a biased literature. I will show how you can interpret the evidence in sets of studies, and prevent yourself from wasting time by building on unreliable findings. Furthermore, I'll help you to meet increasingly widespread requirements to justify the sample size in your studies. Finally, I will explain unexpected benefits of pre-registration, which enable non-conventional designs (e.g., one-sided tests, sequential analyses) that will allow you to become a more efficient researcher. In the afternoon, we will discuss more advanced topics, such as the philosophical differences between the Neyman-Pearson approach to statistics and Bayesian statistics, Open Science, Publication bias, Meta-analytic thinking, and we will interactively discuss issues that are raised by the audience.

    日時
     2016年9月22日(木・秋分の日)
     午前の部:9:30-12:00(9時開室)
     午後の部:13:30-17:30(18時閉室)

    場所
     慶應義塾大学三田キャンパス東館G-SEC LAB(東館6F)
     東門は休日で閉じているので、正門からキャンパス内を経て、東館3F入口よりお越しください。

    ※おおよその参加予定者数を把握したいので、事前登録をお願いしております。

    連絡先
     平石界(慶應義塾大学) kaihiraishi@keio.jp
     池田功毅(学振/中京大学) kokiikd@gmail.com

    共催

    投稿: 2016/10/07 7:16、Kai Hiraishi
  • 日本社会心理学会第57回大会・招待講演(Dr. Daniël Lakens)
    2016年9月17~18日に開催される日本社会心理学会第57回大会に,オランダ・アイントホーフェン工科大学のDaniël  Lakens先生をお招きして以下の講演をしていただきます.

    Dr. Daniël Lakens (Eindhoven University of Technology)
    Towards a reliable and cumulative psychological science
    Recent events have led psychologists to acknowledge that the inherent uncertainty encapsulated in an inductive science is amplified by problematic research practices. In this presentation, I will discuss the challenges our scientific discipline faces to improve the way we work, and provide practical recommendations to facilitate cumulative science based on recent developments in statistics, methods, and open science.

    大会には,学会の会員でない方もご参加いただけます.詳しくは,
    日本社会心理学会第57回大会Webサイト:http://www.socialpsychology.jp/conf2016/
    の「スケジュール・諸費用」をご覧下さい.
    投稿: 2016/07/31 15:53、Asako Miura
  • Haselton(2003)直接的追試論文公刊
    本科研費研究プロジェクトの一環として,研究分担者・平石界が中心となって慶應義塾大学で実施したHaselton(2003)「男はいつだって勘違い(少し違う)」の追試研究が公刊されました.

    Hiraishi, K., Murasaki, K., Okuda, H., & Yamate, M. (2016).
    Letters on Evolutionary Behavioral Science, 7(1), 29-32.
    doi: 10.5178/lebs.2016.47

    Abstract
    Based on Error Management Theory, Haselton (2003) argued that men would have a cognitive bias to overperceive sexual interests in women. She demonstrated that US female undergraduates had more experiences of being misperceived of their sexual interests by men whilst such biases were not existent with male undergraduates. Bendixen (2014) replicated the findings with an undergraduate sample from a more gender equal society, Norway. We conducted a direct replication of Haselton (2003) with a sample from a less gender equal society, Japan, and found the same trend. In addition, we found that Japanese women were more likely to be overperceived of their romantic interests although the effects were weaker. 

    問い合わせは平石界まで.
    投稿: 2016/06/26 5:16、Asako Miura
  • 『心理学評論』特集号編集・論文公刊
    『心理学評論』第59巻1号・特集「心理学の再現可能性:我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」に,本プロジェクトの研究成果の一部として,以下の論文が掲載されました.

    なお,当該特集号はすべての論文がオープン・アクセス,すなわちどなたでも無料で閲覧+PDFダウンロードが可能です.こちらのサイトをご覧下さい.
    投稿: 2016/08/15 20:42、Asako Miura
  • Web連載/ブックレット刊行
    株式会社ちとせプレス「サイナビ!」で「心理学研究は信頼できるか?――再現可能性をめぐって」という連載記事が4回にわたって掲載されました.

    第1回 何が問題となっているのか、またそれに対してどのような対応が進められているのか
    第2回 「未来予知」に関するBem論文について
    第3回 心理学の研究方法に関する問題点や「問題のある研究実践」(QRPs)の詳細、それに対する対応や検討
    第4回 メディア等でも話題となったScience誌に掲載された再現性に関する論文、さらに科研費プロジェクトの詳細

    同社サイトにてPDF版ブックレットをご購入いただくこともできます.

    投稿: 2015/12/24 15:16、Asako Miura
  • 12/13 第3回全体MTG
    科研費研究としての第3回全体ミーティングを以下のとおり行いました.

    日時:2015年12月13日(日) 10時~18時
    場所:上智大学四ッ谷キャンパス3号館6階 心理学科ゼミ室
    議題:追試対象研究の選定,国際誌刊行企画,等
    投稿: 2015/12/24 15:12、Asako Miura
  • ワークショップ開催
    日本社会心理学会第56回大会(2015/10/31-11/1@東京女子大学)で,本科研費に関するワークショップを開催しました.

    実験結果の再現可能性検証に関する諸問題

    日時:2015年11月1日(日) 15:45-17:00
    場所:東京女子大学(東京都杉並区善福寺) 23101会場

    企画者:三浦麻子(関西学院大学)・池田功毅(日本学術振興会特別研究員・中京大学)・樋口匡貴(上智大学)・平石界(慶應義塾大学)・藤島喜嗣(昭和女子大学)
    司会者:三浦麻子 (@asarin)

    話題提供:
     池田功毅 (@kokiikedajp再現可能性の問題と対策の提案
     平石界 (@kaihiraishi) Questionable Research Practiceの「実践」例① Wiiliams & Bargh (2008) Study 3の追試
     藤島喜嗣 (@gsd9720) Questionable Research Practiceの「実践」例② Schnall, Benton, & Harvey (2008) Study 1の追試
     樋口匡貴 (@HIGUCHI_MA) 直接的追試を推進する具体的方策

    主旨:
     実験結果の再現性は,心理学が科学たりえるための必要条件である一方で,十分に保証されているとは言い難い状況が続いていた.しかし近年になっていくつかの大きな問題が露見したことがきっかけで,検証の試みが活発に行われ,またその枠組みや手続きが整備されつつあるというのが国際的な趨勢である.われわれは現在,日本の社会心理学者たちがこうした研究知見の再現可能性検証に積極的に関与できる体制の整備を目指して,(1)追試研究の実施の拠点となる研究者ネットワークを形成し,(2)標準化された刺激・手続きの日本語版を作成し,(3)手続きの共有と結果の蓄積・公開をインターネット上で実現することを試みている.本ワークショップでは,その趣旨と意義を述べた上で現在までの途中経過を報告し,再現可能性検証に際する様々な問題点について議論するとともに,実際の検証事例を紹介する.
     まず,再現可能性の(非)検証がはらむ問題と対策の重要性を改めて整理し,事前登録制度やジャーナルの掲載基準などで進む制度的改革の現状について報告する(池田).次に,これまでに企画者らが収集してきた追試データを集約・分析した2つの事例を報告して,再現可能性の検証結果やそれにまつわる問題を,特にQRP(問題のある研究実践)に焦点を当てて提起する(平石・藤島).そして,直接的追試に実際に着手したことで判明した様々な問題(対象とする研究の選定方法,実施に際する倫理的障壁,教育面の配慮,検証研究の事前登録や結果の報告手続きなど)について事例を紹介しながら,それを推進する具体的方策を提案する考える(樋口).ご参加下さる方々とは,再現可能性問題に関する本質的な議論はもちろんのこと,実験の具体的手続きや検証データの集約方法などプロジェクトの実際に関わる疑問や要望についても,忌憚なく意見交換したい.

    ※多くの方々にご参加いただき,ありがとうございました.発表資料をOSFで公開しました.また,Web記事は「サイナビ!」(ちとせプレス)からご覧いただけます.
    投稿: 2015/11/01 17:02、Asako Miura
  • 8/27 第2回全体MTG
    科研費研究としての第2回全体ミーティングを以下のとおり行いました.

    日時:2015年8月27日(木) 10時~17時
    場所:上智大学四ッ谷キャンパス3号館5階 心理学科図書資料室
    議題:日本社会心理学会大会自主企画WS打ち合わせ,今年度上半期の追試実験実施成果の報告と議論,等
    投稿: 2015/08/27 22:43、Asako Miura
  • 4/25 Kick-off MTG
    科研費研究としてのキックオフミーティングを以下のとおり行いました.

    日時:2015年4月25日(土) 10時~13時半
    場所:上智大学四ツ谷キャンパス
    参加者:池田・樋口・平石・藤島・三浦

    追試実施計画
    学会年次大会でのシンポジウム・ワークショップ企画
    国際的状況に関する情報共有
    その他
    投稿: 2015/05/01 15:55、Asako Miura
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